本日のNHKラジオ「ビュッフェ131」での食材はレタスだった。
レタスはキャベツとかと同じ科と思われることが多いようだが、全然違うキク科の植物だ。
ちなみに夏野菜と思われがちだが、実はレタスは春野菜と言った方がいい。夏には信州や群馬などの高冷地でしか作ることができない。暖地では今頃が旬で、柔らかく味も乗り、まだ寒暖の差があるので美味しいレタスを楽しめる。
日本で食べられるレタスには4種あって、通常の結球レタスを「球レタス」、サニーレタスなどの結球しない「葉レタス」、そして最近レストランでよくシーザーサラダなどで使われるコスレタスなどの、丸く結球はしないが白菜のように立った状態のレタスである「立ちレタス」、そして珍味にでてくる山クラゲの原料となる「茎レタス」がある。茎レタスはかなり特殊な作物で、生で出回ることは少ない。乾燥モノが中国から輸入されることが多いので、一般では知られていない。
ともかくこの4種の中で圧倒的に食べられているのが球レタスなのだけど、実は日本に伝播したのは太平洋戦争後だ。それまでもレタスの仲間は食べられていたが、それはもっぱらチシャであった。つまり結球せず、葉が次々と伸びてくるのを掻き取った、かきちしゃというものだ。
ちなみにレタスの名前はとても興味深いものだ。チシャという名前は「乳草」に起因する。それは、レタスの茎を切ると、切り口から乳のような汁が出てくることに由来している。
一方、レタスのラテン語の学名は Lactuca sativa という。Lacとはなんと”乳”を意味する。つまり原産地である地中海沿岸でも、同じような発想で名前をつけていたというわけだ。そういえばトルコで愛飲されている「ラク」という酒も、瓶に入っている状態では透明だが、水を加えると白濁し、ミルクのようになる。名前には意味があるのだな、当然。
今回のレタスは、僕の大学時代の農業の師匠である、神奈川県藤沢市の飯島農園さんから送っていただいた。学生時代、春先になると必ず数球単位で分けていただいていたレタスだ。飯島さんちのレタスなら、もうその実力と味はよーくわかっている。
なにせ飯島家では、”収穫で切り取ったヘタの色が変わったらもう食べない”のだ。
「やっぱりね、鮮度が命なのよ。もちろん出荷してもちゃんと冷蔵して運べば美味しいですけどね。」
それはやはり、食べ物を作ってくれている農家さんの特権である。
ちなみに飯島農園で午後に収穫後、常温便で配送されたにもかかわらず、切り口はまだ薄ピンクを保っている。飯島農園では堆肥やボカシを多用して土壌の健全度を高めているため、作物の鮮度の保ちがいいのだ。
それにしてもレタスって、よく観ると被写体として非常に美しく先鋭であるなぁ、と思う。ふんわり巻いていると思いきや、その葉の先端、エッジの部分はザリザリと先鋭的な切っ先になっている。
そして、キャベツとは違い緩くまとまった、ほっくらした膨らみがなんとも癒し系なボディである(←言い過ぎか?)
生レタスの画像ばかりみてても、僕みたいな野菜偏愛者以外は全然面白くないだろう。ゴメンナサイ。
レタスは、自宅に着いたらすぐに冷水に放って水を吸わせよう。もちろん浄水器を通した水であることが望ましい。ヘタというか芯の部分を手でグワシッとつかみメリメリと芯をもぎ取る。そうすると一枚一枚外皮を剥いていくことができるようになるので、この状態でやさしく剥いていく。サラダスピナーがあればそれで水を切る。うちにはないので形を崩さないように振って水切り。
フレンチドレッシングで和えて食べるのが一番美味しいのは確かだ。その代わり和えてから3分以内に食べないと、浸透圧でヘニョッとなってしまう。速度重視。
ラジオ収録時はサラダにしたが、家では肉味噌巻きにした。
肉味噌は、生姜とニンニクとネギのみじん切りを香りが出るまでごま油で炒め、豚ロース肉を包丁で叩いたのを加え、豆板醤とタイのエビ味噌を入れて炒め、日本酒を加えて日本の味噌を加えて練る。最後、宮崎の後藤さんのニラのみじん切りを加えてざっくり混ぜるだけ。
この肉味噌をレタスで包んで食べるだけである。簡単簡単。
ザクリッ
と強くはかない食感の後、新鮮なレタスでなければ立ち上らない、わずかな甘みとほろ苦さ、そして清涼な香り。肉味噌の強い塩分と油分がレタスのジュースでちょうどよく緩和されて、文句なしに旨い!
レタスはつまもののイメージもあるが、主役級の作物なのである。
ちなみに
東京の八丁堀にあるカレー&ダイニングバー「ラティーノ」で夜のメニューに出てくる「肉味噌レタス」は、僕が5年前に猛烈にはまった味である。甜麺醤の効いたあの肉味噌、まねできないんだよなぁ、、、