何度も書いてるけど、僕にとっては鰻は関西風に限る。蒸して脂を落とした鰻が美味しいと思えるのは、きっと40歳越えてからだろう。いまはジットリと脂の滲む、捌いた鰻を炭火で直接グワッと焼き、甘ダレに漬けて濃厚な香りを放出させる、西日本の鰻に夢中である。
さて本日は愛知県の農業者さん達に講演。場所は何と熱田神宮会館!
熱田神宮といえば、これはもうひつまぶしの元祖といわれる「蓬莱軒」があるその場所ではないか!
もう朝から居ても立っても居られない状態で、大好きなPOLYSICSを聴きながら新幹線車中を過ごしていたのである。
「いやー 今日は昼飯にひつまぶし食えるのが楽しみで、、、」
「あ、昼はこの会場のお弁当を予約しているんですよ」
ガーン!
そ、そうでしたっけ?どうやら連絡行き違いか!?
ショックを受けていたら、部長さんが
「いいじゃないか!弁当なんていいから、お連れしなさい!」
という大変わがまま勝手ないきさつで、連れて行っていただきました。反省。
熱田神宮の近くにこの蓬莱軒の本店があるのだが、どうやら本店は風情はあるけど、懐石中心の店になているらしい。
「ひつまぶしをさっと食べるなら、神宮の南門を出たところにある南門店がいいらしいです」
と、招聘元のIさんが連れて行ってくださる。このIさんが、実家は愛知だが栃木の大学に通っていて、宇都宮で青春時代を過ごされたらしい。
「いやーやまけんさんのブログを観てたら、正嗣(まさし)のことが載ってたので、嬉しかったんですよ!僕もミンミンよりも正嗣の方が好きです!」
と激しい一致!
餃子ネタでグワッと盛り上がったのである。
さて南門店はけっこう新しい造り。本店はやたらめったらに風情のある料亭のような外観なのだけど、お目当てはひつまぶしだからどうでもいいや。
入店するが、電話予約はしたものの、満杯で5分ほど待たされる。ひっきりなしに客が訪れている。多くが予約をしてきているようなので、狙っている人は要注意。
ちなみにひつまぶしと一半ひつまぶしというのがあるが、これは1.5倍の大盛りということ。当然、この一半をオーダーした!
まず薬味セットと香の物が運ばれてくる。海苔、わさび、青ネギである。
「一杯目はそのまま、二杯目は薬味をかけて、三杯目は熱い出汁でお茶漬けを楽しむ」
これが蓬莱軒のひつまぶしのうたい文句である。
ちなみにもちろん蓬莱軒はこれが初めてではない。名古屋市内では松坂屋に支店があるので数回食べた。もう一店、有名な以ば昇という店が街中にあるのだが、ぼくは蓬莱軒のほうがギットリしていて好きである。
しかし、、、
やっぱり鰻は待たされる。待ってる時間がいいんだけど、それでも待たされる。うーむ腹が減った。
腹が減ったから栃木とか名古屋の最近の旨いもんネタを聴く。そうするともっと腹が減る。
鰻というのは空腹を醸成するシステムなのではないだろうか?これならどんなのが出てきても旨いはずである。
「おまたせしました」
でたぁ!
この木の蓋をとると、、、
もわっとした熱気と、テリテリに輝く素晴らしきプレゼンテーションが眼前に!
もうたまらないセクシーさである。蒸されていないから、表面がソリッドだ!刻まれた鰻なのに、ビンと尖った感じがたまらなくソソル!
一杯目はそのまま茶碗によそって、見栄えの観点から海苔を少しかけてワンショット。美しい!
美麗とはこれをいうのだな。4ショットくらい撮影して、もうたまらなくなってかぶりついた!
口に入れた瞬間、蒸さない鰻特有の強い香りがする。この香りを匂いと称して嫌うひとも居るのだけど、鰻の香りがしないと僕はどうも物足りないのである。関西風の焼き方はとにかく皮の下の脂がネッチリと歯にからまって、それがまた野獣のごとき空腹感をそそるのダ!
旨い!
そしてこのこゆいタレが絡まったご飯がまた最高!
正直、このタレだけでどんぶり一杯食べられると思う。
さてこれにわさびを載せ、葱をふりかけ、こんもりと海苔をのせる。
そして、、、
熱々の出汁をかけ回すのダ!
意外に脂っぽくならないのが不思議だが、この茶漬けというか出汁漬け、もう何も言うことのない完成感である。一昨年くらいから名古屋食ブームのなかでひつまぶしも世に出てしまったが、やっぱり蓬莱軒のこの味は何ものにも代え難い。
一半ひつまぶしの分量、昼飯に適正である。
やっぱりもう東京では鰻を楽しめない、、、
ちなみにベテランの仲居さんに「本店と味が違ったりするんですか?」と聴いたら、意外や意外な返事が。
「うちの店が一番美味しいと思いますよ。職人さんもいいですし!本店は懐石を楽しみたい方が行かれるといいと思いますよ。ひつまぶしをさっとお食べになりたいなら、ぜひまたおいで下さい」
その真偽はともかく、むちゃくちゃに旨いひつまぶしであった。ちなみに同行のI氏は「ちょっと今日はご飯が柔らかい」と仰っていた。そうですか、そうですか!
実は明日も名古屋市内で講演なので、本日は名古屋駅上のマリオットホテルアソシアに宿泊。
以前、週間アスキーのホテルデゴハンという連載で取材をした和食を食べに行く。
そうして、ホテルでごろんと一息ついている時に、前のエントリに書いたPOLYSICSのメンバーさんからのメールが来たのである。
もう、仕事する気が起こらん。
いい日だった、、、(もう終わりモード)