宇都宮の中央卸売市場で、仲卸の調査をする。宇都宮の名物焼きそば「石田屋」に連れて行ってくれた、友人のノグチちゃんのところだ。この日、栃木のあるJAのイチゴ・とちおとめから、基準を上回る残留農薬が検出されて大騒ぎになった翌日だったので大変。
「あの一件だけで栃木のイチゴが全部ダメ、て思われるのが困るんだよ、、、」
内側から観れば一人の生産者の過失(または故意?)でも、社会的影響は産地全体が被ってしまう。生産者のモラルが本当に問われる時代になった。
で、本題の件をいろいろヒアリングをした後、ノグチ君がにっこり笑ってCDをくれた。
「CD出したんだ。これ、宣伝お願い」
なぬぅうううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううう
お前、歌手デビューか?
と思ったら違った。
「うちが販促のために一般公募して作ったCDだよ。歌ってるのは大学生の女の子。」
スーパー業界で大ヒットした「さかなの歌」以降、こうした販促用の歌曲がいろいろ乱発されているが、、、イチゴノキモチ。もし耳にきこえてきたら、ぜひとちおとめを買ってあげてください。
さて
宇都宮にきて餃子を食べずに帰れるはずがない。宇都宮の餃子やさんはだいたい16時からの開店。ちょうどそのくらいの時間に、餃子屋が集中する地域に到着した。
ここんとこ数回来るたびに色んな店を試すのだが、やはり最後にこの店しかないと残るのは、過去ログでも書いている二店、「香蘭」と「正嗣(まさし)」だ。
香蘭は若干わかりにくい場所にあるが、タクシーでいけばきっと運ちゃんがわかるはず。
■香蘭 過去ログ
https://www.yamaken.org/mt/kuidaore/archives/2004/06/post_268.html
開店と同時にカウンター8席がすぐに埋まってしまうので、早めにいくのが吉である。のれんをくぐるとすでに先客5名。椅子に座ってからすぐに5人くらいが並ぶ。
さてこの店のメニューは「揚げ」か「焼き」のみ。価格は、えーと250円だったか。宇都宮の価格にしては少し高めかもしれない。しかし、ここの味はあまりに秀麗である。なんつっても香蘭の揚げ餃子は唯一無二の旨さだ。
パリパリに上がった皮と、しっかり下味のついた餡を楽しむためには、おやじさんに「塩お願いします」と申告するべし。「海の精」のオレンジラベルの塩を小皿にふってくれる。バリッサクッとした皮の中に、甘い肉餡がほのかに薫る。「秀麗」というしかない。
そしてここの焼き餃子はこれまた素晴らしい。
何が素晴らしいかというと、絹のようにツルリと魅惑的な皮のテクスチャだ。こちらは美麗と言えばいいんだろうか、とにかく皮のツルツル感が素晴らしく美しい。官能的エロスの世界ではなく、吉永小百合的な凛とした静かな美しさなのである。しかも肉餡の旨さは焼きの方が強く引き立つ。確固とした世界観を現出せしめる餃子なのであった。同行者と揚げ餃子2人前、焼き3人前を平らげてお代を払う。
ご夫婦とお手伝いさん?一人の計三名できりもり。その場で包み、包み亜あった餃子を置いておくのは、皮が汗をかかないようにという配慮から木板である。
「どっから来られました?」
「東京です。やっぱここは旨いですよ!」
「あ~ どうもありがとうございます、、、」
ひっきりなしに客が訪れ、持ち帰り餃子の需要もスゴイのに、あくまで丁寧な店であった。
さて香蘭から250メートルほど歩くと「正嗣」の宮島店に着く。
■正嗣 過去ログ
https://www.yamaken.org/mt/kuidaore/archives/2004/02/post_169.html
ちょっと頑固そうなおやじさんが、いつもどおり鍋に向かっている。
「焼き3つに水2つ!」
そう、この店は焼き餃子と水餃子のみ。ビールもご飯もなにもない。しかもこの店、一人前6個が170円という超絶価格なのである。
この店の餃子はとにかく純正統派というべき、非常に癖のないすっきりとした野菜中心の味わいが特徴だ。
塩気がギリギリのラインに設定されているので、一口目のインパクトはそれほど強くない。しかし、食べ進む内にじんわりと旨みが蓄積され、美味しくなってくるのだ。その印象は「端麗」。
そしてそのポテンシャルが最大限に引き出されるのが、実はこれ。
水餃子である!
この水餃子には、ゆで汁が一緒に入ってきたドンブリに直接自家製ラー油と酢、醤油をかけていただく。
ただの湯なのに、これがまた最高に旨くなるのだ。しかもこの正嗣の餃子皮は、水餃子にしたときにツルンと美しい舌触りになるように調整されているようだ。なんともはや、快楽になるようなつるつる感! 焼き餃子はストイックに贅肉をそぎ落とした感じなのに、水餃子のこの悦楽的なテクスチャはあまりにギャップが大きい。ご存じの通り男はこういうギャップに弱いのダ。昼は清純、夜は○○のように、、、(→ご想像にお任せします) いやホント、ここの水餃子は最高!
そんなふうに唸りながら食べてると、おかみさんがカウンター越しに
「今の時期、一番餃子が美味しいからねぇ。野菜からも甘みが出るし。水餃子もなにもつけなくても美味しいから!」
という。
なに、それは試してみたいよね。ということでもう一人前水餃子を追加。
確かに甘い!キャベツと葱の甘さがトロトロに溶け出している感じだ。それが官能的にして端麗な皮の食感と相まって、美しいイメージを想起させる。
あまりに旨いので、いつもは買わないのだけど、家人用に持ち帰り餃子を買うことにする。
正嗣の持ち帰り用冷凍餃子は、なんと店で食べるより10円安い160円だ。箱やラー油もつけてくれるのに、なんという良心的価格か。
ただし東京などに持ち帰るときは保冷バッグを160円プラスで所望しよう。
「冷凍が溶けちゃうともう味が変わっちゃうからね! 説明書どおりに作れば、うちで食べるのと同じ味だから!」
とおやじさんが言う。持ち帰り、昨晩焼きと水をやってみたら、本当に店の味そのままだった!
冷凍餃子に打ち粉がまぶされているので、そのまま焼いて湯を注げばもきちんと旨そうに羽ができる。水餃子は、あまりの旨さに写真とるのわすれた。
世界の餃子タウン、宇都宮。でも好きな店はほぼ収斂されつつある。香蘭と正嗣、俺には甲乙つけがたいのである。