いやー この週末は抜け殻のようになってました。
「専門料理」誌とエコール 辻 国立とのコラボレーションで実施した「料理人のための食材研究会 大根編」、無事終了。お集まりいただいた方々の感想はまだ目を通せてないのだが、講義~テイスティング・創作料理の提示等、盛りだくさんのスケジュールを終えた後、なんともいえない虚脱感が残ったのである。
で、すっかり忘れてたんだけど、
先々週に週アスの取材でお世話になった出雲の漬物メーカー・宮本食品の宮本さんが、別れ際に「来週お会いしましょう」と言ってたんだった!
渋谷の東急東横店にて、今週の水曜日まで島根県フェアが開催されている。
ここに、宮本食品の津田カブの漬物はもとより、先日お世話になった青山蒲鉾店さんが出店しているのである!
青山蒲鉾店の目玉は「あごの野焼き」というもので、あご(トビウオ)を主原料にした大きなちくわという感じのものだ。これが絶妙に純朴に旨い。なんといっても無添加なのである。
世の中に無添加という言葉は多々踊っているけれども、何が無添加なのかをきちんと見極めなければならない。「保存料無添加」は、化学調味料の無添加を意味しないし、その逆もまたしかりだ。この青山蒲鉾店の場合、調味料には地域に伝わっていた地伝酒という糖度の高い料理洋酒を復刻させ、それをメインに使っている。保存料やアミノ酸はまったくの無添加である。
とにかくすり身原料の魚をきちんと揃え、手早く処理をしてすり身にする。毎日、漁の出来高で魚の価格や漁が変動するから、いつも同じ原料割合とは限らない。それをいかに同じ味に保つかというのがプロのすり身テクニックなのだそうだ。
そのすり身を神業的手さばきで伸ばし、金属の棒にからみつかせ、巻いていく。この棒、昔は竹のような木だったらしい。
それを炭火で炙る!
炙りながら、剣山のようなトゲトゲの棒で叩き、熱を浸透させる。トゲの穴は、すり身が絶えず膨張するから、食べる段ではまったく気にならない。僕も自分用に一本、小さ目のものを叩かせていただいたのだけど、ブリンブリンしたすり身の抵抗がけっこうハードなのである。
できたての野焼きは激旨!
まだほやほやと暖かく、アゴの素朴な旨みと地伝酒のほのかな甘さ、風味が素晴らしい!
この他にも卵の厚焼きというのがあって、それは家庭用の卵焼き器の5倍くらいはあろうかという銅製の卵焼き器で、白身魚のすり身と卵を合わせたものを焼き上げたものだ。
こいつが実に綺麗。なんと炭火で3時間も焼き続けるのだそうだ。卵焼き器はいくつかあるので同時に焼くのだが、一つ一つの卵焼き器に個性があって、こちらは焦げやすい、こちらは中に火が通りにくいなどあるらしい。それを加味しながら焼き上げるとのこと。その職人技をぜひ味わってみて欲しい。
さてもう一つが宮本食品の津田カブの漬物だ。
もう収穫の終盤戦となっている津田カブの圃場では、赤々と色づいた津田カブが見事に肥大していた!
この写真の、僕の両脇にいるのが宮本兄弟だ。右側が社長の憲吉さんで、僕を案内してくださった。左側が弟さんで、製造のリーダーだ。
近江蕪の影響を色濃く受ける津田カブは、出雲で独自の形質的進化をしたようだ。それは、勾玉のような独特の形。方領大根にも似ているが、独特だ。
この津田カブ、現地では浅漬け、糠漬けもしくは甘酢漬けにするのが一般的だそうだ。
僕のお薦めは断然、糠漬けだ。それも、賞味期限からさらに1週間ばかり寝かせて、袋がパンパンになるくらいに乳酸醗酵させたのが旨い。酸っぱくて旨みが拡がって、これだけで白飯がいくらでも行けてしまうのだ。
本日はちょうどNHK第一ラジオの放送日なので、渋谷に行かなければならない。
2時頃に東横店に行こうと思っているので、もし暇な人は青山蒲鉾店か宮本食品店に遊びに行きましょう!