”いぶりがっこ”。 秋田県が産んだ、日本における漬け物文化の極北といってもいい位置にいる、前代未聞の「燻製にした大根のタクワン」だ。このいぶりがっこをよく「タクワンの燻製」と言う人がいるが、正しくない。なぜなら、タクワンにする前に大根を燻製にするから、順番が違うのである。あくまで「燻した大根のタクワン」なのである。
ではこのいぶりがっこ、どのように造るのか。なんと、秋田にはいぶりがっこ小屋というのがあって、それは茅葺き(かやぶき)になっていて、天井から大根を吊し、下で生木を焼いて煙をもうもうと立てて、それで燻すのだという。これをきいて僕はいつかその現場を観たいと思っていたのだ。
今日、とうとう念願がかなった。
初めて足を踏み入れたいぶりがっこ小屋の中で、その煙のあまりのすさまじさに涙が出てきた。そしてその中で淡々と大根をつるし、火加減を調整するユキばあちゃんの優しい顔に癒された。
週刊アスキーの連載の取材なので、今回は速報版。いずれきっちりこの感動の一日について書きたいと思う。
山内村は「さんないむら」と読む。中山間地で、実に美しい山の村だ。
道の駅にて、実に美味しい地元産蕎麦を食べさせる店があるという。案内してくれた役場のアノさんが実にこれまた濃い方であった。
味噌仕立てで里芋を煮込んだ芋っこ汁。秋田県でも南部になると、山形県の庄内地方の文化と融合してきていて、里芋を味噌仕立てで食べる習慣があるらしい。でも具材は結構違っていて、やはりマイタケやセリが入る。山内産の里芋は実にネットリしていて美味なり!
さて
これがいぶりがっこ小屋だ!
茅葺き(かやぶき)の隙間から、燻煙が立ち上る様。これを僕は観たかったのだ!
その後、料理上手の活動家として知られる高橋家にて、里の家の食事をお呼ばれする。秋田県は内食文化だ。外食で、その食文化の神髄を味わうことは難しい。ご家庭の食をいただくことこそがその神髄に迫る唯一の方法なのである!果たしてすばらしき食が僕らを待ち受けていた、、、
やおら、高橋さんと水先案内人のアノさんが民謡のながもちうたを歌ってくれたのだ。ころころところがるコブシに、僕も高橋さんの旦那さんも、マジで涙を流してしまった。産地芸能人がここにも居た。
夜の〆はこれしかない、横手焼きそばだ。
想像していたのと違って、横手焼きそばというのはソーススープ焼きそばなのであった。
本日もよく食べた。明日、明後日とさらに秋田に分け入ります。