先日、某百貨店の仕事で中野を訪れたとき、中古カメラ店であるフジヤカメラを覗いているうちに、銀塩一眼レフカメラがどうしても欲しくなり、2時間の逡巡の後、思わず衝動買いしてしまった。
モノはオリンパスのOM4TiBである。
銀塩カメラを持つのはこれが初めてと言っていい。デジカメが登場する前は、現像代が高いので写真などほとんど撮らなかった。大学時代に初めて手にしたデジカメは、AppleのQuickTake150という、超懐かしい時代のデジカメだ。このカメラではJpegという画像フォーマットで撮影できず、アップルの独自フォーマットで不便だった。しかし、コンピュータの画面で写真を見ることが出来るということに興奮し、結構はまった。大学卒業後、当時ベストセラー機となったFinPix700を所有し、それ以降もはSANYOの速射デジカメを愛用し、それ以降は都合数台のデジカメを使用した。2003年にカシオのエクシリムシリーズの初代機を購入した頃からこのブログを開始し、キヤノンのIXY Digital Lを二台使いつぶし(これは素晴らしい名機だった!)、今はデジタル一眼レフカメラであるEOS Kiss Digital Nをメインに使用し、重い荷物を持ちたくないときはリコーのGR-Dを使っている。
EOSを購入したのは、初めての食い倒れ本を出版する際に、これから取材するところは、可能な限り佳い画質で撮影したいと思ったからだ。被写界深度とか絞りとかシャッター優先とかの用語が全く理解できず、もっぱらプログラムモードで撮影していた。そのうちに、絞り優先にして数字を大きく設定していくと、画面の広い範囲にピントが合うようになるゾ!とか、暗くても三脚に固定して絞りをF11とかにして30秒くらいかけて撮影すると綺麗にピントのあった写真がとれるぞ、とかいうことがわかってきた。
レンズの焦点距離や画角についても全くわからず、一本目の交換レンズは超広角レンズを買ってしまった(ES-S10-22mm。これは素晴らしいレンズだ!)。僕がIXY時代から好きだったマクロ撮影のために、一眼レフ用にもマクロを買った。EF-S60mmマクロというレンズだが、これによって開眼するところが多々あった。野菜や果物の写真をビシッと撮影するときは今もこのレンズを使用することが多い。そして、標準ズームと言われるレンズで、今年初春に出たEF-S17-55f2.8ISという、高級レンズ並の価格の一本を買い、ひとまずEF-Sレンズのラインナップとしては過不足のないものが揃った。僕は望遠で撮影する被写体を持たないので、これでOKなのである。店の外観や内観を広く撮る広角レンズと、料理をカリッと解像してくれるマクロレンズと、人物をスナップする標準ズームという構成である。
カメラの使い方がわかりレンズが揃うのに併行して、周辺機器にも関心が出てきた。まず、週刊アスキーの連載の仕事でご一緒させていただくようになったカメラマン八木澤さんのお仕事ぶりをみるうち、ストロボが不可欠であるということに気づく。カメラに装着するクリップオンタイプのストロボでのバウンス撮影の方法を知り、それに飽きたらず、自宅で綺麗な野菜写真を撮影するために、モノブロックストロボという機材を買ってしまった。しかし今現在は一灯でのライティングなので、もう一本ストロボが欲しいなぁ、と思っている。
しかしこの間、銀塩カメラを持ったことはなかったのだ。
デジカメは現像しなくても佳いし、フィルム代も必要ない。これでいいじゃないか! と思っていた。
しかし、八木澤さんの中判カメラやニコンの35mmカメラで撮影する料理写真は、艶めいていた。しかも、週刊アスキーのカラーページに印刷されるのを観ると、明らかにデジカメの画質よりも粒子が細かいような、色乗りがいいような感覚がある。実はこの連載では、数枚僕のデジカメ写真も採用されているのだけど、画面上では申し分ない発色なのに紙面では「あら?」という仕上がりになってしまっていた。
そう言うことから、銀塩カメラへの関心が強くなっていったのであった。
しかし、銀塩であればEOSと同じキヤノンのカメラを買えばいいものだ。レンズも共用できるしね。けれども、中古カメラの本で情報収集するうちに、オリンパスOMシリーズに強く惹かれるようになった。まずこのシリーズ、他の銀塩一眼よりもコンパクトなのである。前も書いたかも知れないが僕の手は小さい。グリップが小さくて小指がはみ出してしまうともっぱら評判の悪いEOS Kissのグリップは、僕にはちょうどよい。だから銀塩もコンパクトなものがよいと思っていたのだ。
そして冒頭に立ち返って、中野のフジヤカメラでぼーっと棚を観ているうちに、評価ABクラスの個体47800円がどうしても欲しくなった。ちょうど打ち合わせで同行していた、農業関連出版社の編集者ミソノ氏が「どうせならいいの買わないとダメ!」と後ろから僕の背中を押す。
店員さんにボディと50mmF3.5マクロレンズを出して貰ってファインダーを覗く。
ぐあっ なんだこの広いファインダーは!
キヤノンのEOS Kissシリーズは入門機としては不満がない。しかし、ファインダーのみえなささ加減はいい加減に腹が立つ。その世界からすると、昔の一眼レフのファインダーの広さには本当に快感だ。
「これください!」
と思わず言ってしまった。そして、僕は銀塩カメラユーザになったのだ。
ミソノ氏に勧められるがままにポジフィルム コダックのエクタクロームと富士のベルビアを買って、家で撮影テストを行う。ここではたと困った自体に。外部のストロボとのシンクロ接点はあるのだけど、露出はストロボの明るさをカメラが測ってやってくれるのであろうか?うーむ謎。もしそうでないならば、適性な露出を設定しないとアンダーかオーバーになってしまう。
ということで、まずは適正露出を求めるために、ミカンを撮影しながら、そのフレーム枠内に絞り値とシャッタースピードを書いた紙を入れる。10パターンくらいの組み合わせで撮影し、現像すればどの値が適正化がわかるということだ。
八重洲地下のサクラヤに初めて現像に出した時は何かドキドキした。帰ってきたポジフィルムを、カメラマンさんからお借りしているライトテーブルに載せてルーペで覗くと、きちんと写っている!感激してしまった。デジカメならば、撮影後すぐに画像を確認できる。しかし、カメラは(リバーサルフィルムの場合は)2日かけてようやく観ることが出来る。このタイムラグが快感だ。
露出は、僕のセッティングではf5.6でシャッタースピードが1/16というのがストロボに合っているようだったが、これは被写体によって変わるだろう。しかし先の疑問 「外部ストロボ光を使う際、カメラに内蔵されている露出計はそのストロボ光を測って適正露出に調整してくれるのだろうか?」という問いはまだ解決していない。もしご存じの方がいらっしゃったら、メール等にてご教示いただければありがたいです。
ていうか、露出計を買わないといけませんね。秋葉ヨドバシにいっていろいろ物色。セコニック社のフラッシュメーターを買おうと思います。
銀塩カメラで撮影をする時、どうしてもやってしまうことがある。それはシャッターを切った後、カメラ背面に液晶があるものとして、ファインダーから目を離してそこを確認しようとしてしまう癖だ。銀塩には液晶はない。シャッターを切ったら、あとはカメラを信頼して任せておくしかないのである。まったくデジカメとは全く違う緊張感だ。
しかしデジカメの秋モデルは各社ともに魅惑的ですな!
キヤノンのEOS KissDigitalX はとりあえずパス。そつのない出来だとおもうけど、次に買うカメラはもう少しハイクラスのものにしたいと思っている。それより今とても関心があるのは、オリンパスが欧州限定で発売しているE-400というカメラだ。これは現行デジタル一眼レフの中で最も小さいボディらしい。食い倒れカメラ道においては、なによりもコンパクトであることが優先されるのだ。もしこのブログ読んでるオリンパスの社員さんがいらっしゃったら、ぜひE400の国内販売をお願いします。
そんな、今日この頃なのであった。