さて今回のオフ会会場は、富士宮の朝霧高原にある「まかいの牧場」である。
■まかいの牧場
http://www.makaino.com/
ここ、非常に大規模なロードサイドの観光牧場で、敷地も広く、そして施設も充実しまくり。かなり成功している商業施設だが、園内に入ればしっかりと緑地が広がっていて、なにせ多人数イベントにはもってこいの場所である。
「やまちゃん、この屋根付きのイベントスペースで学校形式で試食をしたらどうかと思うんだよ」
と岩澤さんが仰るのだが、巨大テントの下にずらりとテーブルがならぶ施設内よりも、屋外で芝生を楽しみながら美味しいモノを食べた方がきっと気持ちがいいだろうと思った。
「外でやれませんかね?」
「外かぁ、、、うーん、やれないことはないね!」
ということで、冒頭に掲載した画像のように拡がる屋外スペースで、飲めや食えやの大食材大会を催すことにしたのである。
さてまかいの牧場にて軽食をいただいた後、いよいよ今回のメインイベント的なものを観に行ったのだ、、、
それは「放牧豚」だ。
放牧豚がどんなものであるか。過去ログをごらんいただきたい。
■ぼんぼり京橋店に放牧豚を持ち込んで食べた!https://www.yamaken.org/mt/kuidaore/archives/2006/02/post_755.html
通常、豚は豚房とよばれる施設内で飼育する。子豚が生まれてから体重によってグルーピングし、生育ステージごとに、生育度合いをみながら群を組み替え、そして肉豚として出荷可能な日齢に達したところで出荷する。商業養豚の世界ではこの間、外の世界に放たれることは滅多にない。
放牧豚とは、読んで字のごとく放牧で飼われた豚のことだ。電柵などで囲った一定面積以上の土地の中で豚を放し飼いするのである。放牧豚はその空間内に生える草や虫、小動物を食べながら育つ。むろん、通常と同じ濃厚飼料も給餌するが、その量は豚舎内で飼うのとは大きく違う。そうして放牧された豚は、あまりサシの入らない肉となる。そして、全ての放牧豚がそうなのかはわからないが、僕が味わったものに関していえば非常に肉質がきめ細かく、素直で臭みのない味だった。多くの関係者が指摘するのは、放牧豚にはストレスがあまりかからず、それが肉質に反映されているはずだということだ。僕もその影響が大きいのだろうと思う。
この放牧豚の世界を代表する一人が、富士朝霧で放牧場を立ち上げてきた松沢さんだ。
僕が以前にいただいた放牧豚の肉も、彼が育てた豚だった。放牧豚という、技術的になにも日本では蓄積のなかった分野を、一から切りひらいてきた開拓者である。残念ながらこの日、松沢さんは不在だったが、その放牧場をじっくり見学させていただいた。
豚は臆病な生き物なので、人間が近寄ると怖がるのだが、この放牧場の豚たちはヒトをあまり怖がらないようだ。近くまで寄っても恐慌をきたすことがなかった。
残念ながら僕には見た目で豚の品種を言い当てるほどの蓄積がないが、通常の肉豚品種であるLWDだけではない、毛並みの違うヤツが数匹いることくらいはわかった。
「ふふふ ヤマちゃん!今回はものすごい豚を食べることが出来るよ! 静岡県内でも有数の種豚業者さんが味方についてくれたからね!」
種豚とは、オスの、精液つまり種を提供してくれる豚ちゃんのことである。通常、豚は人工受精ではなく自然交配(つまりエッチ)をさせるが、ここ富士宮には人工受精を目的として多種多様な世界の豚品種を飼っているところがあるんだそうだ。それが(農)富士農場サービスという会社だ。
ここには、獣医師であり畜産の育種研究技師である岩澤さんでさえも「みたことないよ」という世界の豚品種が多数、飼育されている。従って、無数に飼っている世界の品種を掛け合わせて、新しい肉質の豚を産み出すことが出来るのである。
「はい、そうした中で最もうちがお奨めするのが、「LYB豚」。これ、「ルイビトン」と読みます(笑)」
なぬ? ルイビトンとは恐れ入ったが、LYBという組み合わせは僕も初めて訊く。
「これはですね、ランドレース(L)の♀と中ヨークシャー(Y)の♂を掛け合わせて生まれた♀子豚に、バークシャー(B)の♂を掛け合わせた三元交配の豚です。」
ぬおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお
LYB!
これはものすごい交配である。
ランドレースは、今日最も一般的な肉養豚品種だが、それに中ヨークシャーをかけるというのがすごい。中ヨークシャーは、いまは失われた血統といわれる神奈川県の「高座豚」がたしか中ヨークシャーだ。これを復活育成している養豚場で肉を食べさせていただいたことがあるが、絹のような女性的・美麗な肉質であった。
「そうです女性的な味なんです。しっとりとして甘味がある。この食味は本当に素晴らしいんですね。そしてそこに、食感と濃厚な味が人気の黒豚用品種「バークシャー」を掛け合わせたわけです。」
そう、中ヨークという女性的な上品な食味の品種に、野趣のある肉に濃厚で芳醇な脂身をもつバークを掛けるという、なんとも贅沢な三元豚。これは本当に贅沢である!
「こ、この豚をオフ会で出してもらえるんですか?」
「ええ、すでに松沢さんのところで飼って貰っていますから、10月22日には万全の状態で出せると思いますよ!」
おおっ さっきの放牧場で観たあの豚たちの中に、LYBちゃんが居たのである!ぐわー眼で確認したかったぁ!
どうだろうか?こんなLYBという、一つの究極といえる組み合わせの豚を食べられる機会は滅多にない。きけば、やはり大規模に流通している事例はないそうだ。そりゃそうだ、おそらくLWDのようにどんどん太って、バカバカと子供を産み、頑健に育ってくれるという品種ではないだろう。畜産農家からすればやりにくいに違いない。
しかもそれの放牧豚である。あまりにもレアな機会といえるだろう。
骨付きロースを炭火で炙って、塩を振ってかぶりつきたい!ぬあっ 食欲がっ
と、荒れ狂う胃袋を押さえ込みながら富士農場サービスを辞する。実はこの日、社長さんが不在のうえ、農場で子豚が一匹逃走した(笑)らしく、場内の人たちが探索にでかけている大変なときだったのである。お騒がせしました、、、
さてこの日、夜に講演を三島でする必要があったため、時間をみながら移動。
「ちょっとソフトクリーム食べていこうか」
と、ちょっと街道を奥にはいったところにある直売所のある牧場へ。当然ながらジェラートやソフトクリームが売られている。
「ちょっと食べてごらん。その辺の道の駅なんか吹き飛ぶ旨さだよ!」
一口舐めて、それは本当のことだと激しく実感!
ジェラートはもともと脂肪分を外から加えないヘルシーな造りだが、それだけに生乳に含まれる乳脂肪の質で味が決まるといっていいだろう。このジェラート、牛乳特有のミルキーな風味が濃厚に感じられたあとにスゥッと風味が消えて、切れのある甘さが残る。質の悪いアイスようなベタッとした油分やクドさが全く感じられない!
「ここもジェラートを出してもらえるように交渉してみようかね」
ぜひぜひぜひぜひ!
正否が決まるまで名前は控えさせていただくが、農家直売のアイスクリームでこれまで食べた中では最高峰に旨い一つだと思ったのである。
「さてさて これ以外にもたぁくさん、フードバレー推進協議会の人たちの作物があるんだけど、一日じゃ回りきれないから、あとはオフ会会場でのお楽しみとしようか」
そうですね。富士宮には本当に色んな食材があるので、こうして現場を回っていると1週間以上は欲しいくらいだ。講演もあるので在来線の駅へと向かう。
しかし!
俺は富士宮焼きそばが食べたい。
どうしても本場の富士宮焼きそばが食べたい。
「ええ!? もう昼時も過ぎちゃったからなぁ、、、うーん じゃあ俺たちが地元で旨いっていってる店によろうか」
と青木さんが、地元でも評価の高い店に車を差し向けてくれるが、、、
「ああぁ~ 定休日か!」
なぜかその日に限ってふられるのである。焼きそば屋さんはたくさんある。しかし、地元の人がこれぞと思う店はそんなにないのだ。
「まあ、地元の衆は食い飽きてるくらい食ってるからね。味がいいとかそういうことより、食べ慣れた味かどうかが問題なんだよ」
というが、、、 このまま食わずに帰るのか?それはあまりにも悲しい。
しかしぐるぐる富士宮を回って疲れても居たので、半分あきらめた。その矢先!
「おおっ ここがあった! ここの焼きそば旨いですよ。よっていきましょう!」
店の名前は大阪屋であるが、純然たる富士宮焼きそばを出してくれる店だという。
ありがたいことに店内には鉄板とオババの最良な組み合わせが!ぐあっ嬉しい!
もう速攻でミックス焼きそば大盛りである。
おばちゃん、麺を炒め、ヤカンにはいった水かスープかを回しかけると、ブワッと蒸気が上がる。
肉カスが投入され、ソースが混ぜ込まれ、だし粉と青のりをかけられ、目玉焼きをのせて完成されたのがこれだぁっっ
ぐあーーーーーーーーーーーーーー
もう書いてて腹が減ってくる! 現在時刻17:25だが、無性に焼きそばが食いたい!
富士宮焼きそばの麺は中太でストロングな麺である。これに肉カスの旨み、絶妙なソースが絡み、だし粉と青のりが風味を添えるのだ。
推定時間3分ですすりこむ。 旨い!
「富士宮焼きそばはね、絶対に出しますよ。ご安心ください。」
よっしゃあああああああああああああ
何はなくとも焼きそばである。
究極の富士宮親子丼、LYB豚のBBQ、そして富士宮焼きそば。それだけでもいいやって思うくらいなのに、それ以外にも目白押しの旨いもんがならぶオフ会なのである。
時間がないのでここでアップするが、いよいよ募集にかかります。東京からは60名です。複数人数参加OK(ただしキャンセルは勘弁してくれー)。いまからご準備を!