2006年6月 4日 from 食材
アスパラ二種を浴びるほどに食べまくったわけだけれども、実はこの同時期に山形から送られてきたある山菜というか山野草が、このアスパラ二種以上の衝撃を僕に与えたのである。
その山野草の名前は「アマユリ」。
実はこのアマユリで検索しても、なかなか該当すると思われるものがでてこない。
このアマユリを送ってくれたのは、先日アスキーの取材でいった山形県朝日町の阿部さんだ。昨年末に、朝日町の信じられないほどに蜜の入ったリンゴの写真を掲載したのを覚えている人もいるだろう。あれが朝日町で、その役場職員としていろんな試みを仕掛けているのが阿部さんだ。
「やまけんちゃん 昨日は来てくれてありがとう、自宅の裏山で採れたアマユリを送ります。野草だから農薬なんて絶対にかからないから安心して食べてね。うちではこれを食用として植えています。」
というのがこの写真に写っている植物だ!
本当に、そこらの山に生えていそうな山ユリのという風情だ。これを摘んだものが濡れ新聞紙に何重にも包まれ、ビニール袋をかぶせて送られてきたのだ。
写真にあるように花弁がすでに開いているものではなく、若芽が出て花蕾が形成されている段階のもののように見える。
こちらの写真を見ると先端部に近いところに花蕾が出来ているのがわかる。これがあの可憐なベージュ色の花になるのだろう。
しかし、これいったいどうやって食べるの?
「茹でてもよし、炒めてもよし、マヨネーズでもドレッシングでもなんでも試してみてよ!」
という阿部さん。うーん まあ、まずは茹でてみるか、ということで台所に立つ。
みてのとおり茎部の断面は正円である。ユリ科植物の茎はこのように外皮に守られた中にジュルッとした柔らかい肉がある。まずはポテンシャルをみるために、軽く塩ゆでして食べてみることにする。
1分半程度塩ゆでしたのを皿にあげてみると!
まるでアスパラじゃん!
塩茹ですることで緑色が鮮やかに発色したその見た目、アスパラガスの近縁を感じさせる。
そういえばアスパラガスもユリ科植物である。アマユリはその名の通りユリ科であろう。類似性は非常にある。
これは期待できるな、、、と、一本の太めの茎に葉をたててみた。
シャクッ トロッ
ぬおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお
瞬間、背筋に温かいものが走る!
こ、これはいったいなんだぁああああああ
凄まじく美味しいじゃないか!
堅いかと思った表皮はそれほど堅くなくシャクッと刃が通る。その中からトロッと粘りのある柔らかに温かい食感がとろけだしてくる。そこには、、、アスパラガスには無い甘みがあるのだ!甘さと、ほんのりとした山野草ぽい香り。なんと美しい食べ物なんだろう、、、
瞬間、嫁との争奪戦が始まった。マヨネーズとの相性抜群、シャクシャクぽりぽり、むさぼる音がしばらく食卓を制したのである、、、
このアマユリ実に旨い! 歯触りのある茎部はもちろん、上部の葉と蕾の部分の柔らかさも捨てがたい。いや、脱帽である。
本当に世の中は広い。まだまだ里に知られぬ旨いものがたくさんあるではないか!
このアマユリについて、朝日町の隣町である白鷹町のまあどんな会代表・佐藤洋子さんにきいてみたが、「はぁ、アマユリ?聴いたことないねぇ」とのことだ。これを食用にする人たちはどれくらいいるんだろうか。または、自生する場所が限られているのかもしれない。
以下、阿部さんからのアマユリ解説だ。
アマユリは、地下根で増殖します。 今の時期に限って順番に出たものから食します。(このあたりでは、6月半ばくらいまでの短い期間です。ちなみに我が家では、山で見つけた根を家の近くに移植して増殖を試みています。4年目くらいになります。巷では、畑などで栽培する場合、収穫までに8年程度必要と言われています。それだけ、増えてからでないと手を出せない品種のようです。
私は直接見たことはないのですが、宮城県では同じようなものを昔から山からの採取とあわせて栽培して食しているところもあると聞きます。また、2年ほど前に朝日町の農業研究所で試験栽培した「アマドコロ」というとても似た品種もあります。ただアマドコロは、少し苦味があります。甘みはアマユリよりも劣ると思います。見た目で違うのは花芽の持ち方で、ガクが確か6角形になるところが違ったと思います。話はもどりますが、アマユリを我が家では「花を食べる」目的で、栽培を始めたのです。もうしばらくすると添付写真にあるような、どうたんつつじにも似た花をつけます。写真の状態よりももう少しして、花開いた時のわずかなタイミングでつんできて、おひたしで食べます。「うまく咲いたら一握り程度だろうが、やまけんさんへおくってやったらどうだ」というので、お楽しみに…。(うまく咲けばですがね。自生のアマユリは毎日それだけを確認しには、なかなかいけませんので、花は自宅栽培のものになりますが…。毎年2~3本くらいづつ本数が増え始めてきました。でも、父は「もっと増やせるはずだ」と、少し山手の自分の土地に植えてみようなどと考えているようです)
ちなみに どの山菜も同じですが、すべて取り去ってしまうと次の年以降の採取につながりませんので、ある程度残しておくようにしますが、アマユリの場合、特に気を使って採取する必要があるようです。今年の採取しだいでは来年に影響があるのだと父は言います。
ううーむなるほど
自生するアマユリの株を平地で栽培しても、8年もの時間をかけてやっと食べることが出来るのか、、、なんとも貴重な食べ物というか山野草である。
近年、車の高性能化と林道の敷設で、素人でもかなり深い山奥まで行けるようになった。それにより山菜採りがブームだ。先日の山形訪問でも、山に入っている人をたくさんみた。しかし彼らが入っている山のほとんどが、たにんの所有・管理する山地だ。本来は許可を取るべきだし、勝手に山菜を採ってはいけない。とはいえ、まあ最低限のマナーを守るならば少しくらいは仕方がない、と思っている山の持ち主が多いようだ。しかし最低限のマナーを守れないひとが増えているという。
最低限のマナーとは「根こそぎ持っていかない」ということだ。
ゼンマイやギョウジャニンニクなどもそうだが、群生しているのをごそっと全て根部から掘りとっていく人が多いという。これでは翌年以降は全く収穫できない。山菜を見つけたら、種類にもよるけど最低でも3分の1は自然のままに残しておかなければならないと僕の山菜採りの先生がいっていた。山菜の翌年以降の増殖率の科学的根拠は知らないが、以来僕は自分と家人が食べる分以外は収穫しないことにしている。
※ワラビなんかはジャンジャン獲った方がいいという話も訊いたがようわからんです。
山菜は本来山のものだから、山にすむ人が感謝しながら食べるのでいいんだろう。それを少しお裾分けしてもらうというのは本当に贅沢な話だ。このアマユリが通常のスーパーに並んだら、一部で凄まじい人気が出るような気がするけど、でもそうならなくていいかもしれない。でも食いたい。でも今のままがいいかも。うーんでも食いたいけど、、、あああああああああああああああ 俺も山形に山を買うしかないかぁああああああと悩み絶叫したくなるのであった。
しかし
ハタと気が付いたのだが、知らず知らずのうちに僕はユリ科植物を非常に好んでいるのだな。
ユリ科植物は、アスパラもアマユリもそうだが、タマネギ、ネギ、ニンニク、らっきょうなどの匂いものはほぼユリ科だ。どれも僕が大好きで、タマネギは食べるのも栽培するのもナンバーワンに好きな野菜である。
そういえばこのアスパラ~アマユリの季節を遡ること3週間前、ユリ科植物、しかも野草の王者の一つが僕の家に届いていたのだった。それはギョウジャニンニクだ。
これも山の中に群生するものだ。北海道ではこれを醤油漬けにしたりおひたしにしたり、ジンギスカンと一緒に炒めて食べたりする。
このギョウジャニンニク、十勝郡の更別にいるジャガイモ・小麦農家である十勝やっちから送ってもらったものだ。ついて早速、タッパーに入れて醤油をなみなみと注ぐ。翌日、白飯の上にこのギョウジャニンニク醤油漬けをのせてかっ込んだ。
歯がプチッと植物の組織を裂断した瞬間、強烈なニンニク様の香りがブワッと口中に充満し、匂い粒子を撒き散らしながら鼻に抜けていく!醤油の塩分とアミノ酸がその匂いに旨みを足し、それ以外に何も要らないという状態になってしまう!
ぐおおおおおおおおおおおおおおお 旨い!
マジで旨い。こんなに旨いもの、強烈なインパクトを持つものが山の中にひっそりと、肥料もやらずに育つとはいったいどういうことなのだろうか。本当に瞠目してしまう。この刺激とパワーは、栽培もののギョウジャニンニクでは得ることができないものだ。というか、山野草を畑で栽培しても、それほど美味しいものにはならない。山では、肥料もやらなければ農薬もかけずに野草が育つ。その味たるや凄まじく濃い。まことに神秘である。
もっともっと語りたいことはあるのだが散漫になってしまうので、
とにかく ビバ!ユリ科植物 の意を捧げて終了としたい。
阿部さん、貴重なアマユリありがとうございました!
十勝やっち、ギョウジャニンニク旨かった!どうもありがとう!
ビバ!ユリ科植物!
このWebはいわゆるグルメではありません。味や価格だけではない「よい食事」とは何かを追求するためにひたすら食い倒れる記録です。私の嗜好に合う人しか楽しめないと思いますがあしからず。
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