さてグリーン豆腐を口にせずに向かった先は、能代市にある喜久水酒蔵だ。同名の酒蔵が長野にもあるが関係はないのでご注意。事務所に入ると、当主の喜三郎さんが待って下さっていた。
「いやどうも寒い中いらっしゃい。雪がなければトンネルに連れて行って上げようと思ってたんだけどね!」
トンネルというのは、この喜久水が誇る天然冷蔵庫だ。廃線になったローカル線のトンネルを買い取ったという。
「夏でもトンネル内は12度に安定していて、湿度もあって、酒を熟成させるには最高なのよ。長い目でみれば全く電力もいらないわけだから最高でしょ?」
とウインク。実に秋田っぽくない、濃ゆいおじさんである!
早速蔵をみせていただく。
廻っていると、工藤ちゃんが「うわー うわー」を連発する。僕はよくわからないのできいてみると、「すごい設備です。投資してますよ!」ということだった。最新の機器を大胆に投入し、酒造りの実践で評価している、パイオニア的な存在。それがこの喜久水酒蔵なのであった。
「これが『亀の尾』ね。きれいに磨けてるでしょ?」
と、精米した酒米をみせていただく。
麹造り、吟醸のタンクなどもみせて頂く。もろみを少しだけ味見させていただくが、まさにシャンパンどぶろく状態、旨かった。
黒樽があったので何かと思ったら、この蔵では焼酎も作っているのだった。
そう、酒粕を使った粕とり焼酎だ。この粕とり焼酎を樽に寝かせているのだという。
しかし、一番驚いたのはこれだ。
これ、遠心分離器である。
ドロドロのもろみを、フィルターをかませて絞ることで透明な酒になる。この濾過の部分でいま最も普及しているのが「ヤブタ」といわれる機械で、蛇腹のような構造で圧力をかけてもろみを漉していく。その工程を、遠心分離器でやってしまうということだ。
「味がね、やっぱり違いますよ。」
という話だが、このレベルの話は正直僕にはついていけずわからん。こんど工藤ちゃんに違いをきいてみたいと思う。
さてここもさっと見せて頂いて辞することになる。もちろん喜三郎さんも夜の宴にはきていただけるということであった。
次に向かったのは「天洋酒店」だ。実は喜三郎さんの酒造で、ずっと一緒に待っていてくださった方がいらっしゃって、その方が天洋酒店の浅野さんだ。この方、最初どういう人だかわからなかったのだが、とんでもない人であった!一言で言えば「秋田地酒バカ一代」である。グリーンとうふの松岡さんクラスの凄まじい魂を持った人なのであった。
「はい、ここが私の店です!」
能代の目抜き通りの交差点に位置するクラシカルな酒店、これが天洋酒店である。
秋田県能代市住吉町9-22
天洋酒店 浅野貞博
0185-52-3722
http://www.shirakami.or.jp/~asano/
「私は本当に秋田の地酒が大好きで、これに命を懸けてます。ですからうちは、ビールを置いていませんすべてのスペースを地酒だけのために使っています」
なにいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいい
酒屋にとってビールはお金のなる樹である。そのビールをまったく置かない酒屋などというものがあったのか!?
確かに店内のケースを見るとすべて地酒である!
「いやぁ、ほんとだぁ、、、東京じゃ手に入りにくい、すごい酒ばかりですよ、、、」
と工藤ちゃんも低くうなる!
浅野さん、ムチャクチャ熱い思いを抱いた人なのである。
「秋田の酒って、素晴らしい蔵がたくさんあるのに、評価されにくいところがあります。しかも地元の秋田の人自身が、いい酒蔵があることを知らなかったりします。だから僕は秋田の地酒の伝道師をやろうと決意したんですよ。」
と静かに語るが、目はランランとしている!
「工藤さんやまけんさん。今日は秋田が誇る銘酒をずらりと利いて頂きますよ!」
と、秋田地酒オンパレードの利き酒会が始まったのである!
はっきりいって何本飲んだかしれない。白滝も喜久水もあったが、特に明日回ることになっている「雪の茅舎」の品揃えがすごい!
「明日、回られるんですよね。ここはすごいお酒を造っています。うちにはほぼ全ての商品がありますから、予習していってくださいね!」
と、次から次へと冷蔵庫から瓶を取り出しては開けてしまう浅野さん。本当に酒を愛しているんだな!ということがビシビシと伝わってくるのだ!
結局、常温から冷や、お燗までつけて頂きながら20種類くらいの酒を利かせて頂いた、、、
それにしてもこの天洋酒店、良心的すぎる。4号瓶でこんなに安い価格なのである。
これもすべては秋田の地酒のため。もちろん業務用にも関東や関西などから引き合いがあるらしく、全国発送が可能である。詳しくは先記のWebを観て頂きたい。
工藤ちゃん、もうずっとうなりっぱなしである。
「ああ、この酒は◎度、こちらは○度くらいがいいのかなぁ、ブツブツ、、、」
と、酒質の見極めに余念がない様子である。
ちなみに佐々木さんは運転手のため、一滴も口を付けることが出来ない。
「いいです。夜に爆発しますから。」
いやそれにしても飲んだ呑んだ!
最後、貴重なお酒をいただき、ホロホロと甘く舌の上を転がして締めた。
「やまけんさん、これからが始まりですよ! 秋田の郷土料理を存分に味わって頂きましょう! 酒は本日回った全ての蔵のを呑んで頂きますよ、、、」
そう、ここからが本番なのである!