福島県の郡山近くの、とある生産者団体にヒアリングをするため、日帰りの出張をする。
東京から東北新幹線で一息でいける福島は、あまり東北地方という感覚がしない。しかし車窓からみえる風景は確実に田園が多く見え、やはり農村地帯だなぁと実感する。
さて本日の生産者団体は、実は僕がこの日本で最も美味しい米を生産すると思う団体の一つだ。その名をジェイラップという。予め言っておくと、この団体の米は一般では買うことができない。特別栽培農産物を中心に流通する大地を守る会か、ある会員制の流通団体、生協でしか買い求めることが出来ないのである。しかもそこでの名前は生産者団体の会社名とは違うので、分かりにくいと思う。
しかしこの団体の米は本当に旨い。凄まじく旨い。数年前、とある催しでこの団体のミルキークイーンを入手した。炊いてみてビックリした。本当にビックリした。世の中にこんなに旨い米があるのか、と思ったのだ。それ以来、実はミルキークイーンについてはこの団体以上のものを食べたことがない。むろん、コシヒカリについても同様だ。
その理由の一つに、特別栽培中心であることが挙げられるだろう。このブログでは何度も書いているが、農産物においては、その食味を決定づけるのは産地×品種×栽培方法という方程式だ。この中の栽培方法とは何を指すかというとかなり広い範囲になってしまうが、その最重要な一つに どのような肥料を使うか ということが挙げられる。よく「無農薬だから美味しい」という文句が散見されるが、はっきり言って農薬の有無は直接的には関係がない(間接的にはあると思うが)。重要なのは有機質肥料をメインに与えるのか、化学合成肥料を中心にするかということだ。で、どちらが旨いかということについては、この国のスタンダードにおいては「差異はない」ということになっている。しかし僕は差異がある、と思う。格闘技においては「技量が同じであれば体格に勝るものが勝つ」といわれているが、それと同じで、産地と品種と栽培技術レベルが同じであれば、有機質肥料中心で生産したものが旨い、というのが僕の見解だ。もちろんこれが成り立つためには、有機質肥料の質がよいこと、などの前提があるが、僕の狭い経験上これは確実なところだ。
ということで今回は憧れの生産者団体さんへのヒアリングだったのである。ヒアリング冒頭でその熱い思いを伝えると、なんとも嬉しいことにお米とキュウリをお土産にいただいた!
そして「昼飯に行きましょう」ということで、このジェイラップの米を使っているという料理屋さんにご案内いただいたのである。
郡山駅からは20分ほどかかる場所ではあるが、このお店ではジェイラップの米が使われている。
筑前煮と刺身定食を頂いた。丼一杯に盛り込まれた白飯はツヤツヤと光っている。
まずこの米を口いっぱいに頬張る。
「うおおおおおおおおおおおおおおお やっぱし 旨い!」
モチモチ・ネットリした食感、余韻の長い風味。言うことがない。
「この米は、まあうちの標準レベルのものですね」
というのだから痺れてしまう。おもわずお代わりしてしまった。
そして家に帰って、いただいたきゅうりを水に放ち、パリッとさせて、一緒にいただいた味噌につけて食べることにする。
「うちの米以外の主力商品は、きゅうりなんですよ。今はミニキュウリが出回ってます。これにつける味噌もつくっていて、ゴマと大葉を入れ込んだ特製の味噌なんですよ。このミニキュウリと味噌の組み合わせは最高です」
と担当の小林さんがおっしゃっていたのだが、果たしてどんな組み合わせだろう?
結論からいうがこの味噌、最高!
ゴマと大葉が多量に練り込まれている練り味噌で、ミニキュウリとの相性が最高なんである。嫁と争うように貪り食べてしまった!
これも会員制宅配でしか買えないのだろうか?常備しておきたいと思う旨さである。
ミニキュウリは、小さいうちに収穫した贅沢なキュウリである。
キュウリなんてどこのでも差がないだろう、と思う人もいるかも知れない。が、実はキュウリも非常に栽培方法に食味が左右される作物だ。特に肥料と水質に受ける影響は大きい。キュウリに味がないと思っている人も多いようだが、キュウリの10種以上を食べ比べした経験上からいうと、これほど癖のある瓜科植物も珍しい。最後にはキュウリ香が鼻について食べられなくなってしまうくらいである。で、ジェイラップのキュウリはこれもまた秀逸。カリポリという食感と果肉の潔い硬さ、中心の種周辺部の肉の緻密さがとても素晴らしいのである。バランスのよいキュウリであった。
こういうのがスーパーに出回るとよいのだが、「いやいや そんなにたくさん出荷できないですよ」ということである。このジェイラップの作物特に米を買うためだけにでも、会員制宅配システムに入会する価値があるかも知れない。
いい出張であった!お世話になりました!