2006年1月19日 from 出張
さて講演は60名程度入ってくれてかなり盛況に終わった。昨年中にトレーサビリティの事例集作成の仕事でお邪魔した農協のご担当者であられるHさんも来て下さっていて感激。なんとここのJAでは「山本さんのトレーサビリティ本を読んで、その通りにシステムを作ったのがうちの農協のトレーサビリティシステムです」とのこと。こういう話があると、この仕事しててよかったと思う。
さて
本来なら夜は講演の招聘元であるHCSさんらご一行と飲むというのが常道なのだが、もともとある会でご一緒させていただいている富山の青果市場のKさんが、「せっかくだから飲みましょう」とお誘い下さっている。HCSさんとは翌日昼に飯にいきましょうということになり、夜はKさんにセッティングしていただいた。
そこでご指定いただいたのが「寿司割烹難波」という店だ。
■寿司割烹難波
富山市公文名34-12
電話 076-493-8686
http://www1.odn.ne.jp/nanba/sushi/index.html
富山駅からだとタクシーで15分くらいだろうか。落ちついた一軒家の寿司屋である。
店にはいると、長いカウンターに職人さんがこの日は二名。すでにお待ちいただいていたKさんと、もうお一方いらっしゃった。ご挨拶をすると、なんと大手の水産市場の社長さんであった。今日の講演も途中まで聴いていただいていたとのこと。
「今日はこちらの社長さんのセッティングですよ!」
ということで恐縮しきりだ。しかし水産会社の社長さんのお薦めの店ということは、、、すっげえ旨い店に違いない!
「まあ うちの魚も入ってますけどね、、、富山に来たらやっぱり食べていただきたいのがいくつかありますんでね。」
とおっしゃる。いやもう期待しまくってます!
まず突き出しに ついっ と置かれたのが、この緑色の実の漬物だ。
「間引きしたメロンの漬物ですよ。」
おお、間引きメロンは僕も好きで粕漬けにしたりするが、この型のは美しいな。
この漬物がタダモノじゃなく旨かった!
メロンの濃い瓜としての風味に少しだけ醗酵した香りが付き、塩梅もちょうどよく、ポリッとした食感・ジューシーさともども最高であった!思わず「もう一つ切っていただけますか?」と所望。やっぱり野菜って美しいよね!
もうとにかくおまかせで頂くしかないわけだが、寿司の握りよりも、出てくる数々の海の幸の皿に圧倒されまくったのであった。
まずは何はなくともこれだ!
「白海老の昆布〆です。この一盛りで70匹くらいですかね」
おおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお
門前仲町の寿司処 匠でも定番の富山県産の白海老。 本場で食べる白海老だ!
醤油をすこしつけて頂くと、白海老の解像感の高い甘みと昆布の旨味成分に醤油の香りがまぶさり、そして瞬間的に舌の上でフッと溶けていく。通常、口中の温度に近くなると味の組成がはっきりしてくるが、なぜかこの白海老、冷たいままで舌の上に置かれた瞬間が一番ビビッドな味を感じる!
「いやぁ 旨いですよぉ! 東京の寿司屋で食べる白海老とはやっぱり鮮度が違うから、匂いが一片もなく、香りが素晴らしいですね!」
お造りはブリと鯛そして甘エビだ。
富山湾は海老の種類が豊富で、もちろん旨いということで有名。甘エビも、正直言って関東で食べられるものとは天と地ほどの違いがある。以前、富山出身の友人の子供が、関東の甘エビを「腐ってる」と言って全く食べないという話をきいたくらいだ。
それはこの甘エビを食べてみれば一目瞭然。これまた甘い香りがフワンと口中に漂って消えていく。
醤油つけなくてもいいなこりゃ。
ちなみに富山や石川では回転寿司でも相当に旨い海老が食べられるが、やはりこういういい寿司屋で食べる海老はレベルの高さが違うという感じだ。
焼き物は貝だったのだが、残念ながらこの美麗にして美味、濃厚な味わいを持つ貝がなんだったか失念してしまった。仕方ないよな だって10月25にちのことだもの。にんげんだもの。わすれちゃうよ。
しかし旨さは覚えている!
貝の旨味が焼かれることで活性化して、ずぅうううううううううううううううっと噛み続けていたいくらいの旨さなのである。
そして出てきたイカソウメンがこれまた絶品。
新鮮とかいう形容詞が陳腐に思える甘さと、美しい香り。そして歯応えはムチンとしながらもブルンとした官能的な、もうすぐ20歳を迎える女性のような(スミマセン)食感だったのである!
カウンターの上では、個室の団体客さん用に握りが盛り込まれていく。
ああああああああああ 俺も食いたいぃ~
「いや まあ寿司は東京でも食べられるでしょ?」
と出てきたのが、鰺を味噌で叩いたような一皿。
これがまた絶品だったのだ!
ちなみに酒は立山のお燗。
実は富山といえば僕は銀盤が好きだったので「米の芯」という純米大吟醸を頼んだが、食中酒に適した純米酒を飲み慣れた口で飲んでみると、香りの立ちすぎる酒で、魚に合わせるものではないかと感じた。
「こっちじゃ立山だよ」
と言われるとおり、燗の立山がどうにも合うようだ。
「じゃあ少しだけ握ってもらいましょうかね」
やった!
富山の寿司である。
鯛、イカ、白海老の軍艦、コハダ、マグロをいただく!
もう言葉は入らないだろう、この美人な握り群をみて欲しい!
うおおおお
もっと食いたいと思ったけど、
「寿司はね、まあやっぱり東京が一番技術が高いと思うよ。だからまた違う機会にね」
うーーーーーーーーーーーーーーーーー
なるほど、、、しかし、魚の旨さが半端じゃないので満足度は非常に高い!
さて
この椀がまた最高。濃いめの味噌汁だが、魚のアラが入っているかと思いきや、アラどころか立派な魚の切り身がドンとはいっている。
しかも切り身にはしっかりした焼き目が付いている。下ごしらえをした椀である。適度なこげ目はタンパク質の凝固と共に旨味を生ずるから、これによって椀の旨さが増しているのであろう。いや実に最高!
この店、個人的にぜったいに再訪したいリストに入った!
今度来たら前菜から握りまでズダダダダダと食いまくってみたい。
さて実はこのあとひょんなことからすっごく話が盛り上がった。
実はこの水産会社の社長さんの姪御さんがとある県のとある酒蔵へと嫁いだそうだ。その県名をきいて、フッと僕の脳裏にある小さな酒造が思い浮かんだ。というのも、その県の酒蔵といえばそこしか知らなかったし、見学に行った時にその専務さんが「今度結婚します」とおっしゃっていたからだ。
そこで、その酒造の名前を口にしたのだ。
「○○酒造さんですかね?」
「おおおおおおおおおおおおおおおおお なんで知ってるの?」
ま、まじかよ!?
人生とは本当に面白いものだ。ちなみにその酒蔵見学は、日本酒のトップライターである藤田千恵子さんと、居酒屋伝道師の工藤ちゃんと一緒に行ったのだ。
「こりゃちょっとうちの兄貴に会わせないとな」
ということになり、タクシーで社長さんのご実家へ。事情を聴いた兄ごさんとご母堂が、話を訊いてにっこりされていた。もちろんその傍らにはくだんの酒が出ていたのである。
そしてこれがそのご母堂のあつらえて下さった酒肴。滋味溢れるキンピラに、ひとつ蒲鉾が付いている。
「やまもとさん、これがうちの商品ですよ」
このかまぼこ(蒲鉾)、実に最高!
僕は瀬戸内の蒲鉾しかうけつけなかったが、富山のかまぼこはまた魚の味がして素晴らしい!
感動してしまった、、、
こちらはご母堂の漬けられたタクワン。素晴らしいという他無い。
30分ほどの歓談だったが、実に心が温かくなった。
素晴らしい富山の人間模様に触れた。
そして翌日はまた疾走が始まるのである!
(つづく)
このWebはいわゆるグルメではありません。味や価格だけではない「よい食事」とは何かを追求するためにひたすら食い倒れる記録です。私の嗜好に合う人しか楽しめないと思いますがあしからず。
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