2005年10月22日 from 出張
★☆水リンの動画を追加しました!★☆
やっとだぁ~ 48人中41番目に水リンが登場!もうすでに声もカスレ気味な僕たち。各国の応援団がやかましく騒ぎまくる中、日本の応援団も、そして僕も絶叫しまくりながら、7分間の競技が始まった!司会役のかけ声で、一気にボルテージが上がる。水リンの真ん前に陣取って、僕もカメラのシャッターを夢中で切りながら声をかける!
これまで観ていた感じでは、所作の美しさで飛び抜けている選手はあまりいない。水リンの流れるような所作が美しくアピールするはずである!
■水リンの入場シーンから選手紹介までの動画。会場内が熱い!
(13MBあります)
彼の創作カクテル「ウィンタージャーニー」は、ロングが多い最近の世界大会の流行には迎合せず、美しいショートカクテルに決めている。そして、デコレーションは明快・単純なものを出すという形で雪だるまとスターフルーツでわかりやすく決めている。
ちなみに水リンの横に、ギシッとした目つきでテクニカルポイントを審査する女性審査員が立っている!
この人が「一番厳しいのよ~」(by井上@NBA)ということらしい。でもテクニカルなら負けねーぜ!
ふと手元を観ると、さすがの水リンもプルプル震えている!
会場のスクリーンでこれまでの選手の手元を観ても大概はふるえているのだが、水リンもさすがに緊張しているのか!?これがまた観ていてハラハラさせるのだ~ うおーーーー 静まれ水リン、
■水リンカクテル調合中の動画。選手紹介されている!
(11MBあります)
「落ちついて!いつもどおりでいいんだぜ!」
と声をかけるとこちらを観ずに小さく頷く水リン。そして調合が終わり、シェイクが始まると、皆が
「うおおおおおおおおおおおおおおおおおお」
っと雄叫びを挙げる!この美しいシェイクを観てくれぇええええええええええええええええ
よしっ 最大のヤマ場が終わった!
綺麗に均等に注ぎ終わり、飾り付けである。まだ制限時間より2分前だ、絶対に間に合う。
「間に合うぞ!まだ2分ある!綺麗に、雪だるま落とさない様に!」
飾りのスターフルーツは九州産のものだ。これを綺麗なまま持ち込むために、僕の方でMAという、鮮度保持をする技術を使った袋を調達した。綺麗に角が立ったままスターフルーツが映える!
完成!
制限時間をオーバーする選手が続出する中、制限時間に20秒程度を残して完成した!
おぉおおおおおおおおおおおおおおおおおっ
とりあえず予選が終わったぁ、、、
よかったよかった。これならバッチリだ!所作も綺麗、デコレーションも控えめながら決まっている。
ちなみにこれが展示されたウィンタージャーニーだ。
水リンの嫁さんのヨーコちゃんも、ほっと一息だ。
「あ~~ もうはらはらしちゃいましたよぉ~~」
水リンのお母さんと妹さんなんか、もう泣いちゃっている。いやしかし本当にこの雰囲気は観たことがない人にはわからないだろう。それほどのすごい緊迫感なのだ!
いやぁ 予選なのに疲れた、、、
さて 予選を戦った48人の中からセミファイナルに残れるのは12人だ。そしてすぐにセミファイナルが開催され、さらに6名に絞られる。その6名が、翌日のファイナルで競い合うのだ。水リンにはとりあえずセミファイナルに進出して欲しい!なにせ、このように部門別に競うようになってからというもの、日本人バーテンダーはまだ賞を獲っていないのである。
ここでしばし休憩。審査に入る。この時、前の席に座っているNBA国際部長である宮里さんと談笑。
宮里さんが興味深い話をしてくれた。
「今回水澤君がセミファイナルに残ってくれれば、ベストテクニカル賞を獲れる可能性があるんですよ。実は国際的なIBAと日本のNBAでは目指すところが違うんです。NBAは、バーテンダーとしての「人」を育ててきました。きちんとしたサービスができる、バーテンダーとしての人格ができている、そしてカッティングから何から、技術がある。そういう人としての側面を観るのがNBAです。しかしIBA基準は、味覚なんですよ。技術が未熟だとしても、旨いカクテルを作れば「いいじゃないか」と認めてしまう。センスに対する評価を重んじるんですね。そう言うわけで我々の基準は明確に違います。だから、今回水澤君がベストテクニカルを獲れば、NBAの方向性としては喜ぶことができるんです。」
ふううむ
なるほど。
たしかに今回の競技を観ていると、日本大会で観た様な美しい所作やきちっと配分よく注ぎ分けることにはそれほどみな注力していないようにみえる。味の部分は、僕らギャラリーは味わうことができないから何とも言えないんだけど、、、
と、ぼちぼちしている間に、いよいよ予選結果の発表だ!
フィンランドのIBA組織のドンが、壇上で全選手を招き入れる。すでに選ばれるか否かでみな表情がこわばっている!
水澤君も登場した。
そしていよいよ予選の発表が始まった!
(↓意訳)
「さあそれじゃあ 一人目を発表するよ!ここフィンランドからちょっと離れた、、、 グレートブリテンからやってきた○○○○○○!おめでとう!予選突破だぁ!」
イギリスの若い美男子バーテンダーが飛び上がって段の前に並ぶ!オーガニックハニーを使った甘めのカクテルを作った貴公子の様な風貌のバーテン君だ。
続いてドイツ人。続いて地元・フィンランド人。彼は地元開催というだけではなく、本当に旨そうな二色のフローズンカクテルを作っていた。そしてキューバ、スロヴェニア、スウェーデン、、、
だんだんと読み上げが進んでいく。あと2人だ。水リン早く呼ばれろっ!
「次は、、、フィンランドから遠い!南アフリカ!」
ま、まだかよ!!
「そして最後は、、、 イタリア!アントニオ・ピアッツァ!」
んんんんんんんんんんんんんんんんんんんんんんんんんんんんんんんんんんんんん
んんんんんんんんんんんんんんんんんんんんんんんんんんんん
んんん、、、
水リンが呼ばれない内に12人がコールされた、、、
ほんとかよ、、、予選、突破できなかったのか、、、
何が起こったのかわからない。
気落ちとかそういうもんじゃない。もう僕は押し黙ってしまった、、、
急に世界が静かになってしまった。
会場内も、選ばれた国の応援団のあげる歓声の裏に、「なぜ、俺たちのアイツが選ばれなかったんだ、、、」という沈黙がコントラストを成している。
僕らの夏が終わった。
選ばれた12人はさっそくセミファイナルだ。
壇上では先ほどと同じカクテルが作られている。
観ていると、だんだんとわかったようなわからなかったような。
今回の世界大会は「ファンシーカクテル」というジャンルで争われた。しかしこの「ファンシー」をどのように解釈する?日本ではファンシーショップというカテゴリがあるが、それってどういう意味だろうか。
どうやらヨーロッパでのファンシーとは、とても個性の強いものだったのではないか、ということなのだ。
例えば地元国のフィンランドの選手が作ったカクテルは、ベリー系の深紅の酒とミルクのような白い飲み物を氷と一緒にブレンダーにかけ、ドロドロになったその二つを一気にロンググラスに注ぐことで、縦に二色に分かれた印象強いカクテルを作っていた。その他の選手も、小さくて可愛くてファンシー、というようなものではなく、かなりヴィヴィッドな印象のカクテルを作り出していたのだ。
水澤君のウィンタージャーニーは、日本人向けのあっさりした味ではなく、甘さを強め、香りを重層的に配置して立体的な印象を醸した、非常にファンシーなものだ。しかし、世界標準のファンシーは、もっと強いファンシーだったのかもしれない。
んーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
それにしても
今回の採点にはほとんど技能(テクニカル)が欠落して居るんじゃないだろうか。
だって、セミファイナルに残った数人は、制限時間を大きくオーバーした人たちだ。
また、デコレーションを落としてしまったりした人もいる。
そうした人たちが、カクテルの味がよいということで救われたというのも面白いが、一方で完璧に技術を決めていた人が一顧だにされないというのはどういうことだろうか。
世界は、技術より味で評価をするのか。
ならば、今後日本のバーテンダーさん達が世界で競う際、日本大会とはまったく違う基準だという目標設定をしないといけないのかもしれない、、、かもしれない。本当のところはわからない。審査員にきいたってわかるかどうかなんともいえないのだ。
言えるのはただ一言、 ああ、残念だ、、、
セミファイナルで6名が通過。残ったのは、傍目から観てもなるほどと思う人たちだった。
その間僕は何も声をあげず椅子にぐったりと座って観戦。
30分ほどしてから水リンが控え室から出てきた。NBAの人たちに礼をしている水リンに近寄っていくと、目が合い、うーん ゴメンナサイという顔をして頭を下げてくれる水リンだった。
「やまけんさん、申し訳ありません!自分では残れたと思ったんですが、、、」
俺もそう思った。審査員がどうかしているよ。でも本当に残念だ、、、
「結果には満足していませんが、全て出し切りました。いいレベルの仕事をしたと自負しています。それで評価がこれだったので、仕方がありませんね、、、理由はいろいろ訊いて帰ろうと思います。」
そう言って笑った水リンの顔は、晴れやかな笑顔だった。
どちらにしても力は出し切ったか!よかった。悔いは残らなかったな、水リン。
こうして僕らのヘルシンキ紀行その1は幕を閉じた。
でも まだ終わっていない!
そう、フレアーテンディング部門の相田君の戦いが明日に控えているのだ!
帰途につき、やけ食い。
その後、フレアーに出る選手が練習しているガレージにいくと、猛者どもが信じられない投げ方で練習をしていた!
相田君は「気が散る」と言って、ここでの練習を切り上げ。別室をとって特訓をするという。
上に上がり、水リンと反省会。
他のバーテンダー達といろいろ情報交換したらしいが、どうもみな「いい技術だった!」「Good Job!」「なんでお前がファイナルに進めないのかわからない!」という声がかなりあったようだった。
「まあ本当に、勝って残りたかったですね、、、」
本当だ。
水リン、そしてNBAの皆さん、大会は今後も続きます。
ぜひ世界で勝てるトレーニングをNBAでも開発してください!このままじゃ引きさがれんでしょう。
残念なことに、NBAでは、日本大会は優勝したら以後、出場はなし。従って世界大会は1回こっきりで、後進にチャンスを与えるということになっているらしい。それも非常にいいことだ。
でも
あえてワガママを言うなら
この経験を踏まえてまた世界に挑む水リンが観たい。
夜の9時くらいから始められて2時間ほど続いたフレアーテンディングの会議が終わり、相田君が別室で練習をするという。
テーブルをどかして、イヤフォンで音楽をかけながら瓶を投げ、キャッチする相田君。
この決死の姿をみながら、僕は疲れのせいか、眠りに引き込まれた。
世界は広い、世界は厳しい!
そして、、、
世界はやっぱりすごいなぁ! そう思う一日だったのだ。
水リンお疲れ様。
君は間違いなく、ベストテクニカルだった!
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