先日速報として書いたが、宮崎の地鶏料理にインスパイアされた創作料理を出すことで気に入っている「日本橋ぼんぼりが」京橋に店を出した。これがまた、日本橋店とは全く違う味づくりで、客を飽きさせず素晴らしい仕上がりになっているので驚いたのだ。間髪をいれず再訪してみた。
僕と仲間の農業法人のトップ連中でやっている就農塾の終了後、恒例の講師ミーティングをしながらの会食となった。先回も書いたが、1Fの日本風オープンエア(?)のカウンターがいい感じである。
さて今回のスタートは、前回その旨さとコストパフォーマンスの良さに驚いた、レバーのテリーヌ・りんごのモスタルダ添えである。
何回でも言うが、この料理が1000円以下で食べられるというのはものすごいことだ。鮮度のいいレバーとリド・ヴォーを寄せたテリーヌだが、味わいはフォアグラを見まごうくらいだ。しかもりんごのモスタルダがほのかな酸味と甘みを添加し、パイ皮のバター香とともに口中にフレンチワールドを現出せしめるのだ!
この料理は本当にイケてるので、訪れる人はぜひ頼んで欲しい。しかし本当に旨い。パイ皮でぱくんと口に入れて噛んでいると染み出てくるこのフォアグラ感。どこかで味わったことがあるなぁ、と思っていたら、突如閃いた。
あ、これはイタリア・ミラノにある名店「アンティーコ・アルベルコ」のフォアグラテリーヌの世界観に似ているのだ。アルベルコのそれはモスタルダがもう少し酸味の勝ったものだったが、それはフォアグラ自体が甘さを持っているからだ。この店の場合、モスタルダで甘さを足すという部分が違っているが、結果として口の中で醸成される味世界は極めて似ている。
と、個人的なことだなぁと思いながら何気なく料理長である小池シェフにそう言ってみた。
すると!なんということだろう!
「やまけんさん、そうなんですよ!この料理はアンティーコ・アルベルコのテリーヌを思い浮かべながら創ったんですよ!」
うえええええええええええええ
マジ?????????????????
もうビックリ、我が意を得たり、である!こういうことがあるから、料理は面白い。
彼が小池シェフである。話を訊いてみると、なんと彼は、日本でホテルと言えば○国ホテルという、あの名門のイタリアンで修行していたそうである。北イタリア料理をやっていたと訊いてはいたが、正統も正統のコースを歩んでいた訳か!その彼が遍歴する中、仲間のシェフとともにこのぼんぼりに来たというわけだ!
「けっこう好きにやらせてもらっていますので、、、」
それはそうだろう!
ここのメニューをみたらわかる。居酒屋が出す品書きじゃないもんね!
でも、きっちりとメインの酒である焼酎や各種スピリッツに合う味付けになっている。超好感持てるシェフである。
ちなみにメニューは、グランドメニューと本日のお奨めからなる。グランドメニューには、ぼんぼりのメインである地鶏焼きや親子丼などが並んでいるが、この店の真骨頂はお奨めメニューだろう。この日もお奨め中心にボンボンと頼んでいった。
何気なしに頼んだ桜肉のタルタル。手切りで細かくした桜肉を、独特のソースで和えている。
これがまた「居酒屋メニューなのか?」と思うほどの味である。トロトロ・あっさりの桜肉に、少し酸味のあるマヨネーズ系のソースが絡められている。
「やまけんさん、シェフから、ぜひ食べてみてくれと、、、」
と、オーナーの小林さん手ずから運んできていただいたのが、なんと揚げたナスと牛頬肉の赤ワイン煮込みと滑らかなマッシュポテトをミルフィーユ状にしたものだ!照明が暗くて光量がとれず、画像ではわかりにくいのが残念!
この芸術的なミルフィーユにはフォンとバルサミコを煮詰めたソースがかけられている。ナスのトロリとした食感とホロホロに煮込まれた肉、そしてマッシュの滑らかさが一体となって、締まった旨味のソースに絡まる!
これはもう嬉しくて、久しぶりに美味しい顔の炸裂である!
さてこちらは沖縄ロイヤルポークのカツレツ1300円。特製もつ鍋を除くと、この店で一番高いメニューかな。しかし厚いロースをボンと揚げてくれているので
3人で腹一杯のボリュームである。
ご覧の通り中心部はピンク、ギリギリに火が通った状態である。この衣の揚がり方を見た限りでは、どう考えてもイタリアンの仔牛のカツレツの応用で、少なめのオイルで炒め揚げしているはずだ。食べてみてドンピシャ、衣にチーズが入っている、何もつけずにいただくのが旨いカツレツになっている。ロイヤルポークはなかなかにポテンシャルの高い豚肉で、実に滋味だった!
仲間の津田君にひろっきいも「おいおい この店すごいなぁ」とご満悦である。
さてここでお願いしたのがチキン南蛮である。
ぼんぼりの日本橋店では、こちらも北イタリア料理出身の調理長・山下ちゃんによる、ふんわりとしたフリッター衣のオリジナルなチキン南蛮を楽しめる。しかしこちらの店では、本場宮崎流のがっちりした衣に強い甘酢の味付けの、宮崎流チキン南蛮である!
しかも、上に載せられたカラーピーマンと玉ねぎの甘酢漬けがビシッと味が決まっており、実に旨い!東京でチキン南蛮を出す店の中でも屈指の旨さかもしれない。ご飯が食べたい!
これに、先日は食べられなかった胡麻味噌マー油麺をいただく。
これも胡麻系の担々麺が好きな人にはいい味だと思う。
ところでこの間、酒はずっと宮崎の京屋酒造の「かんろ」である。やはりこの宮崎スタンダード焼酎が一番旨いゾ。
さてそしてご飯の〆はやはり「地鶏旨油飯」である!
葱などの入った黄色い油の塊を熱々ご飯に載せ、煮切り醤油を垂らして混ぜ混ぜ。ひろっきいも津田君も、「そんなんホントにうまいんかよー」と半信半疑である。
でも一口食って、数秒間固まって、こうなるのである。
「う、うお、うおっ 旨いじゃないのぉおおおおおおおおお!」
そう、ただの醤油と油まぶしご飯なのに、なんでこんなに旨いんじゃ!という味なのである。
いやー本当に楽しめる店だ。しかしなんとこの後も驚きは続くのだ!
「やまけんさん、シェフがドルチェを用意してます」
「え~ 甘いの?うーんホドホドでいいッスよ、、、」
と気のない返事をしていたのだが、運ばれてきたのをみてビックリである。
「梨のパイ包み焼き豆乳のアイスクリーム添え」 480円
熱々のパイの横には豆乳アイス。パイをさっくり割ってアイスを載せて食べてみる。
熱々の皮の中には加熱されて甘みの増した梨の餡が!熱々のパイに溶けるひんやりした豆乳アイスと絶妙なマッチングである!
「おおおおおおおおおおおおおおおおおお ヤマケン俺はこのドルチェに1000円出してもいいよ!」
と津田ちゃんが狂う。
しかしこれが480円てのは本当にびっくりである。
こちらはプリンかと思いきや、エスプレッソコーヒーのセミフレッドだ。
濃厚なコーヒーの風味がブワッと口中に充満する技ありドルチェだが、380円ってのはどういうコトだろう?
「うちら、価格破壊軍団ですから(笑)」
とニヤリとする小林オーナーである。
このぼんぼり、昼のランチもやっている。実はたった今、行ってきたのである。
いい感じのメニューが並ぶ中、「熟カレー飯」を頼んでみる。
ルーからきちんと仕込んでいるというここのカレー、地鶏の店なのでベースは当然ながらチキンカレーだ。
青菜と肉がごろんとしている。ルーは日本風カレーの体で落ち着いた風味だ。開店当初はバカ辛いルーにしていたそうだが、最近は落ち着いた味にしているそうだ。僕にはもう少し辛くてもいい。調節出来ると嬉しいな。
なんとこのカレーの中には驚いたことに、牛すじというかアキレス腱の煮たやつがごろっと入っている!実は夜、シェフに頼むと、気の利いたパスタを創ってくれる。この前カメラを持たずに行った時には、トリッパとアキレス腱の煮込みトマトソースのスパゲティーニが出てきてビックリしたのだ!まさかそれがカレーにも投入されているとは、、、しみじみとしたカレーだが、こういう技が効いていて十分に楽しめた。昼も使える!
京橋は銀座からも日本橋からも歩いてすぐ、なかなか面白いスポットではあったけど、このぼんぼりの出店によってまたエキサイティングな状況になるかもしれない。一度足を運ぶ価値あり、の店だ。
■日本橋ぼんぼり京橋店 03-5524-1338