やまけんの出張食い倒れ日記

ホンモノのお酢を使っていますか。飯尾醸造の酢でアソブ!

僕と仲間で始めた、農業への就職希望者を支援する「就農塾」、おかげさまで好調だ。毎週水曜日、様々な年齢層、職業の人たちが集まり、農業の講義を受けている。

多士済々が集まっているのだが、応募時に僕がびっくりした方がいらっしゃる。それは飯尾醸造という、京都で酢を醸造している会社の若頭である飯尾さんだ。

飯尾醸造は、自然食やホンモノ志向の料理人で知らぬ人の居ない醸造元である。いや、飯尾の名前を知らずとも、「富士酢」という米酢を知らない人はモグリだろう。


■飯尾醸造のWeb
http://www.iio-jozo.co.jp/about/about.html


無農薬の契約栽培米を原料に醸造したもろみを静置発酵という技法でお酢にしている。真っ正直で嘘のつけない醸造方法だ。しかも、この手の自然食品的な商品としては、価格が非常にリーズナブルなのである。もちろん、味は素晴らしい。毒にも薬にもならないような酢ではなく、ズンとした個性がある。米酢は米から出来ているのだ、という当たり前のことがわかる骨のある香りと味なのである。

大学時代から僕も自炊に愛用していた酢なので、この飯尾さんの就農塾への参加はとても嬉しかった。その飯尾醸造さんの酢は、最近の健康ブームの中で相当に人気がでてきている。今月号のエル・アターブル誌上でも、同社の綺麗な赤色のいちじく酢を炭酸で割ったドリンクが見目麗しく紹介されていた。

で、先週の就農塾の終了後、交流会をしたのだ。これまた受講生の方が務めていた飲食店を安く借りてくれ、そこでみんなで集まってワイワイガヤガヤと。

そこでずらりと並んだのが、飯尾醸造が世に送り出している色とりどりの酢のラインナップだ!

贅沢なことだが、いちじく酢や紅芋酢、無農薬のりんご酢、梨酢などの珍しい酢が並び、これらを一同でテイスティングさせて頂いた。どれもまろやかで、全くむせかえるようなことはない。原料果実の香りやふくらみを残した、程よい酸味の酢ばかりで好印象を持った。

これらはどれも「飲む酢」というのがメインの使い道となるようだ。それならば飲み方をいろいろ試してみたくなる。

「飯尾さん、どうせならこの酢を、門仲のバー オーパに持っていってカクテルにしてもらいましょうよ!」

「え、そんなことができるんですか?」

やっちゃうのである。日本随一の技能とセンスをもつバーテンダーは、これらの酢をどうカクテルにするんだろうか、面白そうじゃないか!ということで急遽移動。

試してもらったのは、蜂蜜で甘味を加えた紅芋酢と、世にも珍しい100%無農薬・無肥料で育てたりんご(通常、それでは生産できない)を素材としたりんご酢だ。

「ひとつは酢っぽくない、カクテルとして美味しいモノ。それと、酢の個性をドンと出したモノ、その2種を作ってみてくれないか?」

とお願いすると、じっと考えていた水澤君、「わかりました」といってカクテルを調合し始めた。


まず一品は、蜂蜜入り紅芋酢のシャンパンカクテルだ。紅芋酢がそれだけで甘く美味しいので、シンプルに決まった。これはカクテルとして非常に美味しい、予想できる味に仕上がった。

そして二品目なのだが、残念なことに僕はこの写真を落としてしまった!ブラッディメアリーにりんご酢を入れたものだ。これが実に秀逸!素晴らしいカクテルになったのだ!飯尾さんも「これは素晴らしい!」と絶賛。水澤君も、「これをレギュラーにしたくなりますね。」と言っていた。むろん、その場に持ってきていた酢は進呈したので、ちかくオーパを訪れるならば、水澤君に「飯尾醸造の酢を使ったブラッディメアリー」と所望してみると、飲めるかも知れない。超お勧めである。

そして三品目は、どうせ酢のクセがあるんだから、クセの強い酒を合わせてみようと思って、水澤君に「アクアビットはどうかな」と声をかけたら、なんと彼も「僕もアクアビットがいいかも、と思ってました」ということだった。

カイピリーニャを、ラムではなくアクアビットで、酢を足して作ってみたのがコレだ。リニアというアクアビットを使ったのだが、これがクセの押さえられた上品な味なので、少し酢に負けてしまった。しかし、超・超複雑な味!これはこれでもう少しチューニングすると、面白いものになるのではないかと思ったのだった。

「いやぁ、大感激です!」

と喜びひとしおな飯尾さんだった。彼は今年30歳と、若い後継者だ。その飯尾さんが就農塾に来てくれた動機は、無農薬で生産してくれている契約農家に対して、きちんと対応ができるように、農業を学びたいというものだった。とても立派な動機だと思う。飯尾醸造というビッグネームを迎えて、背筋がピンと伸びた気がするのだ。