さて「とみ川」で山麓ラーメンを堪能し、車に乗ると、マスターが「よっしゃ、出勤するか!」と気合いを入れる。
「海の日近辺はね、うちの一番のピークなんですよ!昨年の売上げは凄かったんですよぉ!もう行列。一日中カレー盛ってましたよ!」
15分ほどで町中の店に着くと、本当だ、もう行列ができている!
この行列が数十分後には店から公道まで続くようになり、その状態が夕方までずっと続くことになったのである、、、
厨房に入ったマスターが、凄まじい早さでカレーのオーダーを捌き始めた!
皿を3つ重ね、カレーソースを盛り分ける。
カレーソースを盛られた基本のカレーに、スタッフがパセリ、生クリーム、コーンなどのトッピングをかけていく。ここのカレーのトッピングの多さ、色とりどりさは素晴らしいのだが、これを凄まじい人数のお客さんすべてに徹底しているのが素晴らしい!
ここに、特製のソーセージを、巨漢のヨシキちゃんがドンと載せ、カレー完成!
これをホールのスタッフ(美しい女性陣!)が、1,2階のテーブルにピストンしながら送り届ける!いやこれは大変。この一連の動きが秒速で運ばれているのである!
さてちょっと目を転じて厨房裏を覗いてみよう。普段はお客さんが立ち入ることの出来ないこのスペースでは、毎日500本以上が消費される、絶品のソーセージ類を仕込まれているのだ!
彼が日々、燻製を担当しているテツである。なんと、地元富良野のFM放送でパーソナリティを務めている宮田マスターの娘ムコでもあるのだ!
スパイスを加えて寝かせておいたミンチ肉をスタッファーに充填!この時空気が入らないようにバシン、バシンと強めに投げ入れられる。
水で戻した天然腸に肉を充填していく。全て手動ハンドル操作で行う。
「機械が古いんですけどね!でもこう言うので作ってる方がなんとなくいいでしょ?」
にょろにょろと出てくるソーセージ。これ、ちなみにものすごくぶっといんです。無二路のサルシッチャみたいだけども、太さが全々違うのだ。これを適当な長さで撚って(よって)凧糸で縛り、ソーセージの形を作る。
そして、部屋丸ごとがスモーカーになっている部屋に入れて、富良野の山桜の木で燻していくのである!
そういえば、このソーセージ、小田急などの物産展で見かけると非常に水分が飛んで、カラカラにひからびた状態になっている。それが、マスターが茹でて戻すとプリンプリンに弾けそうなソーセージになるのだ。これをみて以前から、温燻をかける時にハードに水分を飛ばして、長期保存ができるようにしているのだろうと思ったら、正解だった。
「うちの燻製は強めに燻煙をかけて、水分を飛ばしちゃうんですよ。だから仕上げの茹では無いんです。茹ではお客さんの前に出す寸前にやるだけで、きっちり水分が入ったソーセージになります。」
なるほどなのである。いや素晴らしいシーンを見せて頂いた!テツ、ありがとう!
さてホールに戻ると、さらに伸びた行列をマスター以下、スタッフみんなが大忙しに捌いている!
「やまけんちゃんも食べて!スペシャル版だよ!」
おおおおおおおおおおおおおおおおおおお
きたぁああああああああああああああああああああ
燻製全部載っけバージョンか!?
ベーコン、チョリソ、フランクフルト、ハムなどの燻製類がギッシリ載りまくったスペシャルカレーである!
唯我独尊の面白いところは、カレー単体でも素晴らしいところに、そのカレーにマッチしたハードな燻製類を合わせたところだろう。この燻製類が非常に旨いのだ。おそらくもっとマイルドなカレーには合わないであろう、香りと旨味の強い燻製群。これぞ富良野スタイルだ!
富良野の食材をふんだんに採りいれて作ったルーは、深みを感じさせる漆黒だ。
そこに、絹ごしのように滑らかなフランクフルトが絡む。歯触りは滑らかなのに味と香りそしては強い!これがカレーにベストマッチなのだ。
この日はこの激闘がずっと続いていくのであった。
この店の天井などを観ると、20年来のお客さんが貼っていった名刺や写真類が所狭しと並んでいる。
お客さんが一人帰り際に、マスターに「10年前に来たんだけど、その時の写真あるかなぁ」と話しかけていた。唯我独尊のお客さんは、カレーの味と共に、富良野の記憶を心のカプセルに封じ込めているのだ。そのカプセルを解き放つキーステーションが唯我独尊のカレーなのだとしたら、なんて素敵だろうか。
この冬、唯我独尊とコラボレーションで、オリジナル商品を世に出すことになった。まあどんな会のなんばんの粕漬けもそうだったが、僕が直接そうした仕事に絡むのは、この食い倒れ日記の性格上、どうなのかということをいろいろ考えてきたのだが、個人的にはこんなに面白いコトはないのだ。だから、恐れずにやってみようと思う。
「やまけんちゃん、旭川空港まで送っていくよ!」
忙しいマスターが、富良野そして美瑛を案内してくれながら空港まで送ってくれた。この宮田マスターとの邂逅を、大切に発展させていきたいと思うのであった。唯我独尊カレー、必食である。今後も物産展で東京に来る際は、情報を流します。