秋田名物「幸楽」のホルモンを小坂町で食い倒れた!

2005年3月 8日 from

18:47 女将のサガリ処理の動画追加しました!肉声聴けますぜ。

予告したとおり、本日は東北青森~秋田のルートで移動であった。羽田から青森へは、スチュワーデスさんってなんでこんなに綺麗なんだろう、と思いながらひとっ飛びだ。空港からバスで弘前に出る道すがら、いきなり雪が2メートルほど積もっている道路脇に現実感が湧いてこない。

僕が弘前に来たのは15年以上前の話で、自転車で東北を回っていた時だ。たしかイトーヨーカドーの食品売り場の試食コーナーでウインナーとかを頬張り腹を満たした覚えがある。貧乏旅行だったのよ。弘前駅は改築していたけれども、飲食店が殆どはいっていない。

サンクスに入ると青森限定のホタテニンニクまんというのがあって、レジのコに聴いたら、商売気抜きにニコッとしながら「美味しいです」というので思わず買った。味はまあ、ホタテニンニクまん的な味がする。

駅舎の横にある蕎麦コーナーで天玉そばを食べるが旨くない。けど、おにぎりコーナーに気になるレトロなパッケージのおにぎりがあった。


かぶりついてみるとなんと中にはウズラの卵の煮たのが入っている。なかなか乙な味だ。

調査の対象である某町で、役場に足を運びヒアリングを行う。実に真面目な取組をしている役場なのだ。にこやかに談話しながら訊きたいことを全て訊き、役場を出る。役場から駅までの徒歩7分くらいの距離に、和菓子屋という看板が3つもある。

駅に一番近い店に入るがおばちゃんが出てくるまで3分くらいかかった。

あんドーナツのような揚げ饅頭と焼き饅頭、それと白あんの小さい饅頭を買って270円。「この辺はなんでこんなに和菓子屋が多いのかなぁ」と訊くと「みんな甘いのが好きなんですよぉ」と言う。

300円を渡すと古ぼけたレジに打ち込んだが、なぜかレジが破壊的な「ピー」音を発し続け動かない。おばちゃん、しばらく格闘していたがあきらめて店の奥に行き、別のところから釣りの30円を持ってくる。この間4分。破壊的ピー音は強烈に存在を誇示しながら鳴り響き続けていた。

駅の待合室で電車を待ちながら饅頭を食べる。餡ドーナツは秀逸だった。カリッとした部分としっとりした部分、ラードが混ざっているであろう油の風味と餡の甘さがグレートに旨い。

弘前に戻ってから、奥羽本線の秋田行きに乗り換える。

ボックスシートには騒がしい高校生や恍惚としたおばあちゃんや、不機嫌そうな兄ちゃんが居る中、津軽美人のお母さんに、3歳くらいの本当に可愛いらしい女の子が座っている。よくおしゃべりする子で、時折僕をちらとみて天使の微笑み光線を放出するのにクラッとなってしまう。俺も娘がいいな。娘ができたら溺愛することにしようと考えながら1時間くらいで大館に着く。

大館駅前には有名な駅弁「鶏飯弁当」のメーカである花善がある。

夕方で店舗は閉まっているが、弁当は販売しているようで、買い求める。

これは明日の朝に食べることにしよう。いや、バスの中で食べようか、でもそうしたら本日のメインイベントであるホルモンが食べられなくなる、、、ということでやっと我慢。

1時間くらいで小坂という町に出る。ここが本日の宿泊場所で、明日のヒアリング先へ最も近い宿場だという。鉱山の景気が良かった頃は電車が通っていたが、しばらく前に廃線になり、いまは貨物車しか通らないそうだ。従ってここへはバスなどでしか来ることができない。

ゴールドパレスという、町営みたいなホテルに入る。チェックイン時に「ホルモンの『幸楽』はどこですか?」と訊くと、ニヤッとしながら「すぐ近くです」と教えてくれた。本当にすぐ近くだ!門限は0時なのでそれまでにお帰り下さい、、、といわれるが、さすがの僕でも20時から4時間は食べ続けられないだろう。そう思いながら、除雪された道をてくてく歩いて店に向かった。

と、ここまでがプロローグである。

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うお、あった!ゴールドパレスから3分くらいで、踏切の先に「幸楽」という看板がみえた時、胃内ボルテージがグアッと上がるのを感じた!

■幸楽 小坂店
〒017-0202 秋田県鹿角郡小坂町小坂鉱山字古館21-7
電話・FAX 0186-29-2030

ドキドキしながら扉を開ける。女将の「いらっしゃーい」の声がする。店内は小さなカウンターと座敷ばかりで6人がけ座卓が4席と、それほど大きくはない。これだとすぐ満員になるんだろうなぁーと思うが、この時なんと客は一人もいなかった!

「お一人様?」

「ん、一人なんですよ。座敷でいいかな?」

「ええもちろん!ホルモンでいいですか?」

「うんうんホルモン2人前とキャベツちょうだい!」

ニカッと笑って女将が鉄鍋とコンロをセットしてくれる。

もうここの仕組みは単純明快だ。コンロにジンギスカン鍋をかけ、特製のタレに浸したホルモンをドチャッと入れ、キャベツをその上に乗せて火を通すというだけだ。


このドチャッとしたホルモンを観ているだけで興奮する!しかもこれまでは、秋田県のNさんが連れて行ってくれていたのだが、今回は僕一人!ていうことは、ホルモン何人前頼んでも僕が独占できるのである!うわーお最高である!
鍋の端の方に汁が溜まり、じくじくとホルモンが煮えてきた。艶やかな薄ピンク色のホルモンは、極めて鮮度が高いことを証明している!でも生煮えは生臭さが出るから、しっかり火は通した方が良い。

「もういいかな?」

「もういいよ!」


バクンと口に放り込み、ブリンブリンのホルモンを噛みしめる。すかさずデュワッとニンニク香が立ち上り口腔内に充満。甘辛いタレの味がホルモンの食感と風味と合わさり、食いながらよだれが分泌されてしまう!

「旨いなぁー やっぱり旨いよ!ここのホルモンは!」

と唸ると、「どこから来たの?」と言うので東京からと言うとビックリしていた。

「暖かくなったら人が沢山出てくるけど、今自分の寒い時期はほとんどここに来る人は居ないよ。」

という言葉になんだか、村上春樹の「羊をめぐる冒険」に出てきた羊の町みたいだ、と記憶が掘り起こされてしまった。

さて壁のランチ品書きをみると、「サガリ定食」という字がある。

サガリとは牛のハラミのことである。

「サガリあるの?」

「あるわよーサガリは最高に美味しいのよ!1人前食べとく?」

食べないわけがないのである。おばちゃん出てきてサガリを鍋にバッと投入する。

「網焼きでも美味しいんだけど、今日は鍋でいいよね? この辺でサガリなんて殆ど食べなかったんだけど、あたしが始めたらどこでもサガリを出すようになったね!」

という感じで、他にお客さんがいなかったこともあってかなりコミュニケーションを密にすることができる感じだ!それならばと色々と幸楽の事情を聴いてみた。

「幸楽はね、鹿角に本店があるのよ。そこでホルモンは全部漬けてるの。あたしが誰かって?あたしは本店に嫁に行ったのよ!で、ここ小坂町に店を出すっていうんで34年前から店やってるの。今は本店にあたしの娘がいるわよ。」

なんとそういうことか!幸楽グループは基本的には血縁関係でやっているらしいのである。どこへ行っても味が変わらないのは、最大のウリであるホルモン自体は鹿角の幸楽本店で漬けているからだそうである。

「でもね、それ以外の肉はそれぞれの店がやってるの。例えばこのサガリなんて、うちしかやってないのよ!だから他の店でサガリが欲しい時は、うちから送ってあげるのよ。」

なんと!このサガリはここ小坂店のオリジナルメニューであった!さてこれが火の通ったサガリである!

噛みしめると、締まった肉質の中にも何とも言えないフカッとした歯触りがある。そして濃い旨味、染みこんだ甘辛タレが秀逸である。

サガリ(ハラミ)は牛の横隔膜である。最近でこそ知らぬ人のいない人気メニューだが、昔はモツの扱いで激安であった。僕の親父は三越に勤務していたのだが、長く食品売り場の管理をしていた。それもあってか、取引先の商品をよく買って帰ってきてくれたが(その時こそが親父が最大に輝く時であった!)、中でもある精肉業者さんのハラミがお気に入りだった。「ロースやヒレなんかよりもこれが一番旨い」といって好んで焼いていた。子供心にもまったくその通りで、どの肉の部位よりも旨いと思いながら食べていたものだ。あんな和牛の立派なハラミ、もう入手困難だろうな、、、

ホルモン2人前にサガリ一人前を食べていると、これだけでかなり一杯の分量ではある。しかもどう考えても2人前以上にサービスしてくれている分量だ。けど旨いのでどんどんいけてしまう。このホルモン、火を通しすぎても堅さが一定で、味も悪くならない。従って汁が煮詰まることを回避できれば、食べ始めから食べ終わりまでずっと満足度が続くのである。

と、女将がやってきてドンと皿を置く。

「ランチの時に出してる焼きそば用のキャベツ、余ってるからサービス。それとこのニラを載せると本当に旨いんだよぉ」

と嬉しいサービスをしてくれる!

確かに確かにニラが入るとまた香りが出て旨い!幸いなことにこのホルモンは宅配をしてくれるので、家ではニラ・葱・キャベツで試してみようと思ったのであった!

「うちのホルモンはね、豚と牛の両方使ってるのよ。豚だけだと味に少し渋みっていうのか、出るんだよね。牛だけだと固くて食べるのに難儀だし。だから両方あるから美味しいんだよ。」

おおおおお
なるほどぉ

「あたしなんかいつもホルモン食べてっからさ、肌ツルツルでしょ!?太っちゃってしょうがないけどさ、でも中性脂肪とかは正常値だし、健康そのものだよ!」

うお、ホルモン健康法ということか!たしかに女将、肌つや最高なんである。
「あーでも健康にいいのはキムチの方かもしれないね。キムチをいつも漬けてっから。ホルモンとキムチ食べてたら病気しないよ。」

残念ながらこの日はキムチが切れてしまっていて、これから漬けるところだという。宅配で頼む際にはぜひキムチも頼もう。


さて煮汁も煮詰まってきたので、うどんを所望した。この甘辛ニンニクダレにで煮るうどんが旨いのだ!

「煮汁足してもらえるかなぁ、、、」

「んー、そうね、、、もう一人前くらい食べるでしょ?」

そう言われて引き下がることのできる僕ではない。もちろん、というと女将、とても一人前にみえない量をドチャッと鍋に投入した!

「東京から来てくれたし、今日はもうお客さんも居ないし、サービス!」

いやマジっすかという感じ。また最初から食べ直しという感じである。ちなみにこの他に丼ご飯を食べている。

うどんが入って良い状態になるとこんな感じだ!

汁の染みこんだうどんは、もうこれ自体がおかずとしてご飯を食べる原動力になってしまう!いやー実に最高。腹パンパン。

ところでこの店、一面に芸能人のサインが貼られまくっている。

「この近くに歌舞伎とかを上演できる劇場があるのよ。そこに巡業に来た役者さんは必ずここに寄るね。ほら、中村獅童の写真もあるでしょ。今みたいに売れる前に『小坂のおっかさんになってよ』って言われたっけねぇ フフフ」

恐ろしいことにこの女将さんと歌舞伎役者さんのツーショットは、必ず頬がくっついている!素晴らしいお母さん力である!しかし本当に店に入ってからずーっと居心地が良い。特に細かい気配りがされているとかそういうことではない。良い意味でのルーズさを醸し出していて、リラックスできるのだ!

「ちょっとこれから横でサガリの処理すっからね」

と桶とまな板を出してきて、ハラミの塊の処理を始める。


■女将さんのサガリ仕込み姿動画(約3.5MB)

「アメリカ産のハラミはもっと分厚くてね。オーストラリア産になってからは薄くて、量も入ってこないのに高いね。」

などとおしゃべり。牛肉については色々言いたいこともあるが、そういう場じゃないのでワイワイと歓談。女将はモクモクとハラミの脂や筋を取って切り分けていく。


そんなこんなで完食。

「イヤー喰った食った。この店で一番沢山食べた人ってどれくらい食べたの?」

「んー5人前くらいかな。けどお客さんもイイ線いってるよ。4人前くらいのホルモンにサガリ一つだからね。よく食べたねぇ。野球選手とかは7人前くらい食べていったけどね。あれはプロだから、、、」

ホルモン3.5人前、サガリ1人前、ご飯、白菜漬物を食べて勘定はなんと2400円である。ちなみに酒は飲まずウーロン茶二本。安いなぁ。

「うちは宅配もしてっからね。一つ頼んでも10コ頼んでも料金はおんなじだから、一度に大量に買うといいよ。近所で分けるか、冷凍しておけばいいんだから。」

サガリなども冷凍しておけばある程度は大丈夫だということだ。

「家でやる時は、やっぱりジンギスカン鍋でやるほうがいいよ。ホットプレートと化だとどうも美味しくできね。」

ここのホルモン用にチューニングされたジンギスカン鍋も宅配で買うことができる。

「山本さんつうの?じゃああんたのおかげでお客さんが沢山きたら、今度来た時また食べさしてやっからお願いね!あたしはインターネットなんかわかんね!」

ということである!

ちなみに注文は電話がよろしい。FAXは壊れている(直してくれよ!)とのことでした。

ごちそうさーん!実に旨かった!僕の名前と住所を書いて渡してお別れ。
ホルモン幸楽は、やはり鹿角にある本店が最も有名とは思うが、近隣に散らばる支店でもかなり楽しめるということが分かった!とくに、その店でしかないネタもあるということ。これは重要だな。サガリ、旨かった!しかし、満腹、、、普通の人ならホルモン2人前で一杯一杯だろうとおもうので、注意して下さいね。