さてさて ブセナテラスのオーシャンビューの部屋に通されると、そこはもう東南アジア的リゾートパラダイスが拡がっていた!妻はしばらくキッペイと、名護在住のチカシ&さっきー夫妻が遊びに連れて行ってくれるので、その間にお仕事である。
ブセナはかなり大きなホテル施設群なので、レストランもいくつもある。その中でも今回の取材対象となった鉄板焼き「龍潭(りゅうたん)」は、実はメインダイニングよりも予約のとりにくい店だということだ。
たしかに、このオーシャンビューで、シェフがつきっきりで素材を焼いてくれるのだ。人気が出ないわけがない。
しかし僕は実はこれまで、鉄板焼きというのをけっこう見くびっていた。だって、鉄板の上で素材を焼くだけでしょ?という感じだったのだ。これ、実は非常に間違いだったということが分かってしまった。鉄板の上で焼くという調理法に限定されているとはいうものの、「焼く」という行為には凄まじいバリエーションがある。熱伝導のよい最高級の鉄板で、場所によって微妙に違う温度帯を使い分けしながら素材を加熱していくということで、やはり技術と眼が求められるのだろう。
佐藤シェフは、東京でフレンチの修行をしていた人である。なんでブセナに来たんですか、と訪ねると「いや、連れ合いが沖縄の人間でしてね。」という明快な答えが。実はそういうパターン、すごく多いらしい(笑)
「こっちは素材が面白いので、いろんなことを試してますよ!」
と仰るとおり、この佐藤シェフ、実にいろんな勉強をされていることがのちにわかってくる。
さてここから先は週アスの連載記事とかぶらないように書かねばならないので、とりあえず結論だけ言っておくと、
琉球在来種の豚である「アグー」の血統100%のロースを食べることができるのダ!
※アグーについては前回沖縄来訪時のこのエントリをご参照。
「やっぱりね、全然ほかの豚と違いますよ!もちろん旨いです。旨いというのも、脂が旨いし、肉も旨いし、、、言葉になりませんね。実は100%じゃない、アグーの血が50%入っているハーフの豚肉も出してますんで、今日は食べ比べていってください。」
おおおおおおおおおおお
すげぇ!食べ比べができる!
一般の方々はなかなかできないと思うが、食材の評価を絶対評価で行う野はなかなか難しい。絶対音感のようなものがきちんと確立されていればいいが、味覚はいろんな環境要因に左右されやすいので、様々な種類の食材を集めての食べ比べという相対評価のほうがわかりやすい。ただし、そのためには、当たり前だが食材を調達しなければならないのである。これは予算的にちとキビシイ。僕は仕事で野菜の食べ比べをやってきたが、本当に手間もコストもかかるし、本来なら旬の違う産地から同時期に取り寄せするので、その差をきちんと理解した上で評価する必要があったりするのだ。
というわけで、今回のようにアグー100%と50%を食べ比べできるという、スバラシイチャンスは滅多にないのである!
で、こっから先は週アスの記事に書くことなので詳細には触れない。まあ、しょうがないよね、週アスのお金で沖縄いけたんだから、、、ご勘弁。
でもチラッと載せとこう。これが100%のアグーだ!
このアグー、50%のものと比べると非常に小さい。こちらを観れば一目瞭然だろう。左が50%、右が100%だ。一回りくらいサイズが違う。
しかし、このアグーの育て方は非常にスバラシイ。血統書や給与した飼料の紙をいただいたのだが、びっくりしたことに飼育期間が249日に渡っている!
ちまたで食べている豚肉は、幅はあるけど、170日~200日くらいが相場だ。飼えば飼うほど餌代がかかるわけだから、生産者としては早く肥らせて出荷してしまいたいというのが人情だ。しかし、アグーはこれくらい肥育させないと味が乗らないのだろう。
しかしそんなに肥育期間を長くしてもあのサイズにしかならないのだ。なんと貴重な豚なんだろう、、、こういうものを安く、大量に作ることはやはり難しいのだ。沖縄でもあまり出回っていないのは、飼育方法の難しさと、どうしても高価になってしまうということが理由だろうな。
でもね、、、この食べ比べ、火を見るより海を観るより空を観るよりも明らかなのよ!
「えええええええええええええ
こんなに味が違うんすかぁああああああああ!????」
思わず絶叫してしまったのですよ! ニヤリと笑う佐藤シェフ。
「全然違うでしょ? もちろん、50%のほうも通常の肉に比べたら段違いに美味しいんですよ。でも、100%のアグーの力は、それを遥かに上回ってしまうんですよ、、、」
いや、眼からウロコでした。
このアグー、店を予約する段階で「食べたい」と申し入れておけばほぼ確実に食べられるとのことだ。しかし、まずこの店自体の予約が取りにくいらしいので、早めに連絡すべし。今回いただいたコースは9000円程度だが、いろいろ選べるので訪ねていただきたい。
撮影は快調に進み、佐藤シェフの手つき、弾ける脂、香り立つ煙が写されていく。カメラマンのY澤さんは、食材への知識の豊富な凄腕さんだ。
と、佐藤シェフが悪戯っぽい目つきで僕に耳打ちする。
「実はですね、15年以上の古酒(クースー)で漬けた梅酒があるんですけどね、飲まれます?」
飲まないわけがない~~~~~~~~~~~~~~
「じゃあ、杏(あんず)酒も一緒に味わってみてください。」
生きててよかったなぁ、、、両親にも飲ませて上げたいものだ。
ちょっと甘みが勝ちすぎているが、それは佐藤シェフも了解済みの話。
「今年の分は実験的だったので、分量も少し砂糖が多めに入ってしまいました。これでアタリがわかったので、次回はばっちりです!」
うーむ 来年も来なければならんなぁ。
常々思っていたことだけど、果実酒のレシピをみると、ほとんどホワイトリカーを使っている。ホワイトリカーなんて、甲類の、連続蒸留しまくった、香りも味もない、単に酔っぱらうだけの酒ではないか。乙類の本格焼酎、それも40°以上の強いものを使った果実酒の方が絶対に旨いに決まっている。そういう意味では、和歌山の「雑賀」という酒造さんが特別に純米酒で梅酒を造っているのが僕は好きだ。
佐藤シェフには、僕から雑賀の梅酒をお送りすることにした。
「その代わりに、アレください、アレ!」
「あ、分かりましたよ!」
アレとは、シェフ特製のアブラ味噌である。アブラ味噌とは沖縄料理で、豚肉や豚の脂などと共に練り込んだ味噌で、こいつをおにぎりの具にするともう応えられない!
「アグーは脂がタップリ付いてくるので、それを少し削いで、その脂でアブラ味噌を造ってるんですよ」
おおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお
そんなの旨そうじゃないかぁ、、、
ということで梅酒と交換ということなのであった。ふふ。楽しみだ。
この後、匂いにもだえながら待ったガーリックライスも堪能。
「うちは、脂を軽くフレッシュに使うことにしてますので、肉から出た脂などは捨てて、新しいものを使って炒めています。」
観ていると、基本はオリーブオイルとバターのコンビネーションだ。それを軸に色々な炒め技が炸裂するのであった。オマール海老、各種野菜類、そして掟破りのゴーヤーチャンプルーをいただき、大満足。と思っていたら、
「シャコ貝食べます?」
ああああああああああああああああ