築地市場から徒歩ですぐの月島界隈だが、リーズナブルに魚介を食べさせてくれる店が沢山あるわけではない。もんじゃ焼き屋のイメージが先行しているため、それ以外の店もあるのだが埋もれてしまっているように見える。
「いやヤマケン、マグロ食うならここしかないよ!」
と親友の加賀谷が教えてくれたのが「魚仁」だ。
「ここはねぇ、実は魚屋さんだから、すごいマグロがでてくるんですよぉ、、、」
と嬉しそうに言う。もう一人、これも月島在住の竹澤も目を細めて「そうそう、最高やねぇ~」という。これは行かねばならないだろう、と初めて敷居をまたいだのが昨年の夏だ。以来、何も考えずにマグロを腹一杯摂取したい時は、魚仁と思うようになったのである。
5月30日、晴れ渡る強い陽光の下、海上保安庁による閲覧式というイベントに参加、加賀谷・しんのすけ・金子といった面々と日焼けしながら白熱の演舞(?)を観る。
夜は麗しき女性陣ともんじゃ焼きで食事会であるが、なんだかもう一日が終わったような感もある。
「女性陣が来る前にさ、ビールだけいこうか、ビール。」
「そうだな、マグロは禁止キンシ。」
「ビール飲んでから銭湯入って出陣だな!」
そう言いながら、まだ陽の落ちていない17時半くらいにのれんをくぐったのであった。
■魚仁
※月島西仲通り4番街の大通りに面している
03-3532-6601
店にはろくに冷房が効いておらず、しかももうすでに人いきれでごちゃっとしている。一気に耐熱が上がる。生ジョッキを頼むより早く口をついて出てくるのは「マグロブツ!」である。「なんだよ食わないんじゃなかったっけ?」いやここに来てそういうわけにはいかないのである。
とにかくこの店に来たらマグロブツ切りである。だいたい、生マグロがドカンと盛られて「はい!」と中国系のおねーちゃんによってテーブルに乗る。マグロは様々な部位から切り盛りされるので、中トロも赤身も載っているが、とにかくこのボリュームで500円という値段は、他のどこでも観ることが出来ないだろう。
ちなみにこの量、いつもより少ない。日曜日なので河岸が休みのところにみんなが来るものだから、最大の看板商品が18時で完売間近なのである。
わさびは練りわさび。醤油はキッコーマン。そんなのはこの圧倒的なマグロブツ皿を食べるときには本当に些細なことだ。圧倒的にモノが旨いのだ。これで2000円だったら無言になるところだが、500円だぞ、500円。
加賀谷やしんのすけ、金子の目を盗みそっとピンクの中トロ部分を抜き出し口に運ぶ。舌上でとろける脂をしつこく味わいながら生ビールを呷る。大工や遺跡発掘のバイトをやっていたときの、仕事の後に目上の億ちゃん達に連れて行ってもらったときのヨロコビを味わうようなこの感覚だ。
「あいよ、マグロ串!」
このマグロ串を観て欲しい。1本300円でこのボリュームである。
炭火で焙られた焦げ目の香りとタレ出す脂が悩ましい。皆無言でむさぼり食う。とてもこれから女性陣と食事会という雰囲気ではないのであった。
このほか、ホタルイカ刺身、鮭のハラス焼きを摂取。この日、海の上でご祖母君の訃報に接したしんのすけはここで終了。第二ラウンドは僕と加賀谷、金子で勝負だ。
魚仁を出て、商店街内の銭湯「月島温泉」へ。風呂を浴びると、昼からの立ちっぱなしの肢体に熱エネルギーが循環し、リフレッシュされる。夕暮れ時の心地よい風が吹きぬけていった。