先日は我が居住地である木場が世界に誇る、下町系タンメンギョーザ略してタンギョーの聖地である来々軒を紹介した訳だが、その際に「実は餃子だけならば、もっと旨い店がある。」という書き方をしたのを覚えている人もいるだろう。そう、好みの世界ではあるが、僕の好みからすると餃子だけならば来々軒よりも旨い店がある。しかもそれは来々軒から150メートルしか離れていない場所にあるのだ。これもまた先般紹介した八百屋「八百周」の隣の隣にある「宝家」がそれである。
■宝家
東京都江東区東陽3-20 -5
03-3645-4336
火曜日定休
http://www.toyost.jp/syouten/2bu/insyoku/takaraya/takarayatop.htm
この店、メインストリートといえる永代通りに面し、かつ東陽三丁目という交差点の角にあるため、トラディショナルな看板がやたらと目立つ。ちょうど厨房が通りに面しているため、昼の3時以降の休憩時間中に、夜の分の仕込み風景がみられたりして、非常にアットホームかつ下町感漂う店なのである。
ここの餃子がめっぽう旨い。言っておくが、別になにかしらの特徴があるわけではない。ただ、木場で餃子という下町感覚を味わうにはベストな味なのである。
ちょうどビールと餃子をやりたいなぁ、と思っていたら、神戸のペットフード関連の商社にいて、ペット写真の本を販売している親友のニシガイチから電話があった。
「よう、今、有明のブックフェア終わったところなんやけど、何か旨いもんないか?」
渡りに船とはこのことである。「はよコイ!」ということで落ち合うことになったのだった。
のれんをくぐるともうそこは下町アットホーム空間。厨房に面したカウンター席と、奥にはテーブル席がある。餃子がその場で作られていく様をウォッチしたい人はカウンターへどうぞ。我々は奥のテーブルに座る。
周りの席を見回すと、おお!びっくりしたことに、寿司処 匠 でよくみかけるおっちゃんがイルではないか!このおっちゃんとにかくうるさいんだけど、よく来てる、、、同じ行動パターンだということが判明してしまった。
それはさておき、品書きはこんな感じである。小さくて見えにくいかな。
値段はかなりリーズナブル。ラーメン500円くらいがこの辺の相場である。それはいいが、品書きに「マンボ」というのがある。これがいったいどういうもんかっちゅうのがわからなくて、ある日頼んでみたら、なんのことはない野菜炒めみたいなもんだった。
でもまあ、この店ではひたすら餃子を食べるのが吉なのである。間違っても麺を頼んではイカン!よくもまあ、こんなひどい麺を出すもんだと、過去二回も後悔している。それまで旨い餃子で機嫌がよかったのに、麺をすすった瞬間、同席していた者同士がいきなり無言になってしまうのだ。 ということでとにかくここに入ったら人数分+1人前の餃子とビールをやっておくんなはい。
「餃子3枚にビールねっ!」
ちなみにこの店では、注文が入ってから餃子の皮に具を詰めて焼くので多少時間がかかる。しかし、この行程がはずせないのだ。この店の餃子は、具に野菜たっぷりでジューシー。それをつつむ皮もとてもフッカリと柔らかい。従ってあらかじめ具を詰めておくと、皮がふやけてしまうのだろうと推測する。その場で包み、すぐに焼き上げないとここの味が出ないのである。だから、入店して腰を落ち着けたら速攻で餃子の注文をしてほしい。
ビールを飲みながらじりじりと焼き上がるのを待つ。お互いの近況やどーでもいいことばっかりしゃべりながら、餃子のタレを作る。ちなみに木場周辺の餃子屋では、ラー油は自家製が当たり前だ。もう一軒の雄である来来軒のラー油は、あまり辛みがたたない味わいの広いものだが、ここ宝家のラー油はビキっと辛い!この鮮烈にして美しい赤を観よ!
そうこうしているうちにようやく餃子が運ばれてくるのであった!みよ、皮のフカフカ感が伝わってくるような外観を!
即座にしかし慎重にくっつきあっている餃子を引きはがし、タレにまぶそう。強烈に熱いので猫舌さんは気をつけるべし。おいらは昔から、猫舌を克服することで人よりたくさん食べることができることを発見し修練につぐ修練を積んでいるので平気の平座である。
宝家の餃子は、先述の通りフッカリフカフカの感触が持ち味で、けっして良くある人気餃子店のような「カリカリ感」はない。それは個性の違いなのだが、昨今の流行は小麦粉を溶いた水を使っていわゆる「羽」をつけてカリカリ感を強調する呈のものだといってよい。しかしこの店の持ち味はそこにはないのである。フッカリしたふくよかな、しかし薄手の皮の中には、ジュワっとジューシーにしてマイルドな優しい餡がのぞく。ネギニラキャベツの柔らかな旨みと、肉と絡み合った複雑な香りが湯気とともに噴出する。
特製の鮮烈紅色ラー油のたっぷり絡まったタレにつけると、これはもう凄絶といっていい色気を放射するのだ! さながら、幕末のとある置屋にて芸者が、自分の情夫のために幕府閣僚の密談を盗み訊きしているところを見つかり、「ああ おまいさん!」 と自害する寸前の表情にも似た色気と言っていいだろう!
あとはもうひたすら食べるだけである。神戸からやってきた味にうるさいニシガイチも「おう、これは旨いわ。」と言うておった。
だいたい一人で3人前くらいは食べられる。この宝家では餃子とビール。麺がどうしても食べたければ、餃子を食べ終わった後、ダッシュで来来軒へ(来来は、5時くらいには店じまいするので注意!)。これを守っている限り。下町餃子の名店の名を汚すことはないだろう。
どうだ?木場、いいところでしょう?
実はまだ紹介していない超絶名店がある。それは、韓国家庭料理&お好み焼きの店である。こちらもいずれ紹介することとしよう、、、