僕が住む木場~東陽町あたりでは、なぜか餃子とタンメンを売りにする店が多い。その中でも最強の座にいるのが今回紹介する店、その名も「来来軒」である。漫画じゃあるまいし、来来軒なんてネーミングはないだろうと思うのだが、本当である。そしてこの店は、下町的底力に満ちた、まさに「タンメンギョーザの王道」を行く店なのである。
この店、実はかのdanchyu誌の数年前の餃子特集で紹介されたことがある。それを見て、当時木場の某社にコンサルの仕事で通っていた僕が攻め、感動してしまった。これが実はその後木場に住む大きなきっかけとなったのである。これはマジの話なのだ!そして住んでみたらもっと沢山いい店があったという、ラッキー満点な人生なのであった。
さて、東西線木場駅の出口1番を出るとすぐに永代通りがある。これを東陽町方面に3分歩くと、「東陽3丁目」という交差点に出る。ここに先日紹介した八百屋「八百周」があるのだが、その角を右に曲がって100メートルほど歩くと、「東陽弁天アーケード通り」というローカルな商店街がある。その一角にあるのが、この来来軒だ。
まあ、近くを通れば必ずわかるはずだ。なぜならどの時間でもほぼ確実に行列が出来ているからである。この店は強烈なことに、昼のピークタイムはもちろん、午後3時くらいに行っても行列が出来ている時がある。そして6時には麺が無くなってほぼ終了してしまうというオソロシイ店なのだ。だから、時間に気をつけていかないと、15分以上待たされてしまう。しかし、回転も速いのでまあ我慢できないほどではない。
店内にはいると、カウンターとテーブルで23,4人くらいが入れるような感じである。厨房内には、見事なまでに共通の遺伝子を受け継いでいるとしか思えない一卵性双生児的兄弟であろう2人のパンチパーマのおっちゃんと、これまたその遺伝子を強烈に引き継いでいるのが明瞭な息子(20代後半くらいか)、そしていかにも下町風おばちゃん2~3人という布陣である。写真では残念ながらこちらを向いているところはさすがに写せなかったので、来店して確認していただきたい。まず笑ってしまうこと間違いない。
で、この店では圧倒的大多数が「タンメンと餃子」を頼む。たまにラーメンとか頼んでいる人もいるが、食ったことがある僕としては、とにかくこの店ではタンメンとギョーザを食べるべきであるとしか言いようがない。
ちなみにタンメンが650円、ギョーザが450円である。ラーメンはたしか450円くらいとリーズナブルなんだが、組成が全く違うので考慮外にして欲しい。 とにかく席に座ったら、こう言おう。
「タンギョー。」
これは「タンメンとギョーザ」という注文である。では、二人で入って、タンメンと餃子をそれぞれ人数分頼む時はどうか。
「ニコニコ」
である。二個以上になる場合は「サンコサンコ」などと増やしていけばよい。では、タンメンが2つで餃子が1つでいいな、と言う場合はどうか。
「ニコイチ」
となる。そう、タンメンの数が最初にくるのである。この原則を覚えておけば怖いモノはない。というか、別にこういう符丁を使わなくても「タンメンとギョーザ」でいいんだけどね。何というか、常連の驕りでした。スミマセン。
ということで本日もタンギョーである。ピークタイムにはいると、注文が入っているいないに関わらずギョーザが焼かれているので、比較的早めにギョーザから運ばれてくることが多い。
ダンチュウにも掲載されたここの餃子は、厚めの皮に野菜たっぷり餡が詰められたものだ。餡は一日寝かせているらしく、確かに熟度の高い印象を受ける。しかし全体的にはあっさりしている。これに皮のモッチリ感と、焼きの際に油多めで最後は揚げギョーザ風にぱりっとさせているのが特徴である。
そして木場周辺のギョーザ店では、大体どこでもラー油を自家製で作っている。唐辛子と陳皮などの材料をふんだんに使ったラー油はかなりストロングであり、それだけで十分調味料なのである。
これと酢と醤油で、黄金律的なタレを作ってギョーザを絡ませるわけだが、僕としては酢多め、ラー油多め、醤油少なめという加減をお奨めする。そして、ギョーザに箸で小さく穴をあけ、タレを浸透させて頬張るというのが佳い。
ギョーザを3個くらいやっつけていると、タンメンが「あいよっ」運ばれてくる。このタンメンが出色のできばえなのである。ダンチュウでは餃子特集で出たが、むしろタンメン特集で出すべきではないか?と思うコトしきりである。なんと言ってもこの迫力なのだ!↓
この圧倒的な盛りの野菜類を食ってしまわないと、麺にはなかなか行き着けない。しかし安心めされい、ここのタンメンをタンメンたらしめているのが、特注の麺なのだ。この店の最大の特色であるタンメンの麺が、実に暴力的に極太なのである!
どうだ!この麺、実に迫力がある。ズズっとやって噛むと、ブリンブリンとした弾力が歯に抵抗しやがってかなり食いでがある。おそらく強力粉を少し練り込んであるはずだ。ラーメンの麺というよりは超硬質デュラムセモリナ粉でコシを出しながら打たれたパスタのような堅さ加減である。スープの中に長く置いてもなぜか伸びた感じがしない。
そして、このスープがまた佳い!透明感溢れるスープは、先の店内写真の向かって右側のおっちゃんが担当。ちなみに麺とスープで担当が分かれており、このどちらかが欠けてもタンメンが成り立たない。一度、長期に休みをとっていた時期があったのだが、どうやら「相方が手を怪我しちゃってサ、スープが作れねーんだヨ」ということだったらしい。
基本的な作り方としては、向かって右のおっちゃんが中華鍋で野菜類を炒める。でもすぐさま巨大寸胴のスープをお玉で注ぎ、煮に入る。併行して左側のおっちゃんが麺茹で開始。塩を振って味を調えたら、どんぶりにスープ投入。この時白い粉が一緒に投入されるのだが見ないフリをする。そこに極太麺投入、そして上に大量の野菜を乗せてできあがりである。
で、このスープがすさまじく笑えるのだ。なんて言ったって、よっく見ていると、スープが少なくなったら水道の蛇口をひねって水をドボドボ足しているんだもん!
「あああ~ 薄めないでくれよぉ~」
という心の叫びも虚しく薄められてしまう。それだけではない。一度仕上げをやった中華鍋のスープがあまると、巨大寸胴にそれを戻すのである。もうムチャクチャ。
しかし!それでもなんでも、なぜかいつも旨いのである!極太麺のブリブリ感と野菜のしゃきしゃき感、適度なコクと透明感のあるスープ、そして合間に囓るギョーザの旨味。下町といえば、タンメンギョーザしかないのであった!
ちなみに、タンメン後半戦にはいると、ラー油をこのようにスープにいれて食べるのが準公式作法といえよう。お好みで酢もどーぞなのだ。
タンギョーで1200円。おっちゃんは下町生まれらしく「ホイ、せんにしゃくえん」と発音してしまうのがまた小気味よい。
まあタンメンとギョーザのために木場くんだりまで来るという人もいないかもしれないのだが、実は木場にはもっと色々あるので、1日かけて攻めるつもりであればとっておきコースをこれから教えてあげよう。
そうそう、後日またゆっくり書くが、実はギョーザだけで言えば、この来来軒から100メートル離れたところに「宝屋」という店があって、こちらの方が旨い! 来来軒とはジャンルが微妙に違う餃子で、薄目の繊細な皮に、ニラの効いた濃い餡の組み合わせの餃子で、こいつがビールと最高に合うんである。
しかし、、、致命的なまでに麺類がマズイ。もう、笑っちゃうくらいにマズイのだ。スープは「お湯じゃねーの、これ?」というものだし、麺も延び延びなのだ。従って、僕のお薦めコースは
・まず宝屋にて、ギョーザ二人前とビールを速攻で食べる。
・食べたら勘定を済ませてダッシュで来来軒に移動。
・タンメン単品を頼んで汗をダラダラかきながらすすりこむ。
・汗を冷やしながら、アーケード街の酒屋にて輸入ビール「ヘンリーワインハード」一本280円を飲みながら汗を乾かし、ブラブラする。
というものだ! いろいろ試行錯誤したけど、これが最高!
ま、希望者がいれば、引率することにしようではないか。もちろん、味と満足度は保証しよう。