やまけんの出張食い倒れ日記

北の都・札幌の寿司はやはり旨かった ススキノ「みのる」

 さてジンギスカンに舌鼓を打った後は、岩崎氏の手引きで少々アルコールを飲み、満を持して寿司へと向かう。
 先にも書いたとおり、僕は人生においてこのススキノで初めて「タチ」を食べたのだ。タチとは、昨晩までの帯広出張記録にもあるとおり、真鱈(マダラ)の白子だ。これを湯通ししてポン酢と紅葉おろしをかけたものが関東でも並ぶが、生のタチを寿司ネタとして食べられるのは、やはり北海道ならではだ。この季節、札幌の寿司屋でタチがなければ何を食べるのだろうか、という感じだろう。僕にとって「タチ」の最初の一口が、ここススキノの名店「みのる」なのである。

 この「みのる」、残念ながらどこを探してもWeb上に情報が載っていない。しかもまずいことに、住所や電話番号が載っていた箸袋を持って帰ろうとしたのに、落としてしまったらしい。今度訊いておくのでとりあえず場所データは無しとさせていただく。まあ、ススキノであることだけは間違いない。

 雪が凍結した路麺をツルツルと滑りながら店にたどり着く。この写真に写っているのが岩崎氏だ。
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「みのる寿司」は大将と女将さんの二人だけで切り盛りしている。オヤジさんは温厚そう、白髪交じりの頭は年期と風格を感じさせる。このみのる寿司と岩崎氏はいろいろと関係があるそうで、本当に昵懇である。旨い物を作るという双方の共通した目的があるせいだろうか、目に見えない信頼感で結ばれている感じだ。
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 さてここでは大将にお任せである。

「あのタチが忘れられません!」

「いいのがありますよ。」

そうしてまた、至福の時が始まったのだ。

順序は違うのだが、やはりまずこのタチ(真鱈の白子)から見て頂こう。
昨晩帯広で食べたタチも実に旨かった。そして本日のタチも最高!

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このプリンプリンの輝きである。妖艶である。口に入れて歯を当てると、官能的にムッツリとはち切れ、口中にそのトロトロを放出させる。ブワっと拡がる旨味、しかしそこには一片の生臭みもない。

「フウンム、、、」

とフランス人ぽく唸ったまま僕は動けない。その動けない状態の写真がこれ↓だ。

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なんだか歌舞伎役者の決めのポーズみたいだな。アホな顔である。

その後も素晴らしいネタが続く。昨晩の帯広に引き続き、シャコを所望する。北海道のシャコは旨いと言うことを知ったからだ。
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口にするとザラリ、ホッコリとした歯触り。おお、これはメスのシャコだ!いわゆる子持ちシャコである。肉の旨味はあまりないが、卵を抱いた甘みがある。

「本当はオスの方を出したいんですけどね、メスがお好きなお客さんが多いんですよ。」

いや、これはこれで非常に旨いです!

そして北海道の旬、ボタン海老だ。

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海老は金沢で旨いのを食ってきたが、北海道のボタン海老もやはり旨い。どっちがいいと言うことではなく、やっぱり質が違うような気がする。そう、北海道のネタは「大陸的」で男性的な味だと思うのだ。

と、岩崎氏が「おお、出たぁ!」と唸るネタ。生アワビである。
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生のアワビなんて、実はそれほど好きではない。柔らかく煮たアワビの方が旨いと思う。でも、この生アワビは実に素晴らしかった。よく出てくる水貝のように固い歯触りというだけではない。適度に柔らかく適度にコリコリ、そして旨味ジュースがタップリである。うーん やっぱ素晴らしいなぁ。


そして出てきた「ホッキ貝!」。
この堂々の偉容を見よ!美しく角が立っている。
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噛むと貝の甘みがシャッキリとした切り口から滲み出てくる。ホッキって旨いもんだ。貝の鮮度的にはやはり北海道の方が東京より有利だなぁと思う。

実はそれはウニについても同じだった。今回ぼくが一度食べたネタを所望したのは、タチとウニだけだ。

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このウニが、、、このウニが、、、本当に素晴らしいのだ。いつも寿司匠で食べるバフンウニの赤も旨いが、みのる寿司のウニはそれを上回る鮮度とみえる。もう、雑味はどこにも見あたらない。10メートル平方の白い絹布をバッと拡げても、どこにも汚点が見あたらないという感じだ。清廉にして濃密、クリームが舌の上で溶けていくのだ。

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と、程よい頃合いで、タチのみそ汁を女将さんが出してくれる。熱が入ったタチはまたその濃度を増し、味わいがふくらむ。ひたすら旨い。

昨日の帯広の寿司といい、このみのる寿司といい、「どちらが旨い」ということではない。北海道の寿司とはこういうモノだ、という気合と気概をストレートに打ち出してくる、誇り高き職人と、それを受け止める素晴らしい客がいる。そういう真剣勝負の中で、不味い寿司が生き残れようハズがない。

ビバ!北海道!
この1ヶ月で、また寿司に対する見識が拡がったのではないかと自分でも思う。そして以前にも増して、寿司が好きになった自分がいる。

ススキノに行かれる方は、ぜひタクシーの運ちゃんにでも訊いて、「みのる」に行ってみて欲しい。

満腹になった腹を抱え、凍結路面にツルツルと滑りながら、さらに奥深く分け入り、酒を飲みに行くのであった、、、

今回の北海道編はここまで。