先日も書いた、大倉正之助さんプロデュースの能舞台、飛天双輪能の当日。「招待するからおいでよ。バラシ手伝ってくれればいいから」
ということで、受付はスルー。スタッフシールを貼って客席の隅から能を観る。
ハコは新木場のスタジオコースト。国立能楽堂のような伝統的なたたずまいと違い、ここはオールナイトで皆が踊る、クラブだ。今日の内容は2本立てで、大鼓独奏、能「山姥」 と新作能「一石仙人」。先日木場で正之助さんに再会したのもびっくりだが、この日はもう一つあって、1本目の「山姥」に、安田登さんがワキとして出演していたのだ。安田さんは、僕の高校時代の担任教員をしていた人だ。教員をしていた当時からすでに能役者だったが、僕が卒業する少し前にいろいろあって退職し、現在は能役者やさまざまなことをしている。その彼が出ている。ちょっとびっくりした。まあ、世界は狭いのだ。
二本目の「一石仙人」は古典ではなく現代人が書いた作品。一石仙人とはアインシュタインのことだ。謡の中では相対性理論が語られる。面白かった。
最後、正之助さんが独りで出てきて御礼のことば。そして、
「さいごに、マイクを通さないで肉声で大鼓をやります。」
そういって、一切のPA抜きで演奏が始まった。乾いた大革の音。正之助さんの声。この日いちばん観客の心に迫ったのはこの音だったに違いない。
客が捌けたら撤収。大道具屋さんに適当に混じってばらしをする。おそらく僕が、全く関係ない人だと思った人は居ないだろうな、、、
実にいい夜だった。