20030920 本日から熊本3連戦である。20日(金)は八代農業改良センタと、地元の農業生産者のパソコン利用クラブである「ぐりーんネット」の共催による講演会に招聘されたのだ。題目は勿論、「農産物のトレーサビリティ」。 八代とは実は関わりが古い。まだ学生の頃、農業情報ネットワーク大会で知り合ったネットファーマー(ネットを駆使する農業者のことだ)に、八代の鶴山さんと宮本さんがいたのだ。二人は、ともに八代名産のフルーツトマトである「塩トマト」生産に取り組む篤農家達だ。生産圃場を見せていただき、その味に驚嘆して以来、取引させていただいたりしながら今に至る。
熊本空港に着くと、鶴山さんが迎えに着てくれている。半年前の農業情報ネットワーク大会ぶりの握手。 「最近、熊本では黄化萎長病が流行しているんで、トマト農家は壊滅的な被害を受けてるんよ」 という穏やかならぬ情報を聴かせてもらいつつ、1時間半程度で八代へ。昼食には生け簀寿司の店で握りとバッテラをいただいたが、意外(!)に美味しい寿司をいただいた。 「実は熊本の魚は旨いってことが、知られてないんだよねぇ」 本当にそうだ。僕はすばやく認識を改めた。
(続きはこちらをクリック↓)
講演会場には60人くらいの聴衆が集まっていた。どうやらこれは「めずらしか」ことらしい。やはり今日的な話題で、しかも何をやらねばならないのかがかはっきりわからないテーマだからだろう。皆、熱心に1時間半の講演を聴いてくださった。
終了後、市内のホテル「大黒屋」へ。ここは宴会場として一番有名なホテルなのだそうだ。料理は、熊本名物も盛りこんだものだが、基本的には宴会料理。九州ならではの鶏のたたきを集中的に食すことにした。
さてこの宴席で一番面白かったのは、実は食べ物よりも生産者との話だ。それも、食べられる品目ではなく、いわゆる「い業」の話だ。い業とは、い草を生産して畳表(たたみおもて)をつくる仕事を言う(へぇ~)。やまけん的には食べられない作物にはあまり関心がないのだが、これは話を訊いていると非常に面白いものだった。いや、まずは話をしてくれた古島さんという若手生産者さんが面白いキャラクターだったので引き込まれてしまったのだが、、、ごつい外見でかなり笑わせてくれる陽の気を持った人だった。
■い草の話 1反部(10アール)の畑から、畳表4~500枚分のい草が収穫できる。そのい草を畳表に一次加工したものが、1枚分で900円~1200円になり、1反部あたり大体60万円前後となる。
この畳表の流通構造だが、やはり一般の青果物と同じく、卸売市場があって、JA経由でそこに出荷、問屋を通じて全国の畳屋に流通することになる。これが一般的なルート。 そして、ここで登場するのがネットだ。このぐりーんネットの生産者のうちの数人はいち早くWeb上で畳表の直接販売を始めた。顧客対象は当然ながら畳屋さんだ。実は、畳の世界でも、流通場の不具合が散見されていたのだ。例えば畳屋が問屋を通じて仕入れをする場合、いい畳表が手に入った時、「これと同じものを欲しい」と思っても、次回同じものを入手できる見込みは低い。卸売の仕組上、生産者までの指定が難しいらしいのだ。
つまり、もし「よい畳表」が安定的に入手できるとなれば、直販ルートでも何でもよいという畳屋さんもいるということなのである。 ここで重要になるのが「よい畳表とは何か」ということだが、これについては僕も選別眼は持ち合わせていない。ただ、もう1人話をしてくれた岡さんの話では、い草のニッチ市場があるという。
「通常、い草は泥染めといって、保存性をよくしたり独特の色合いを出すための着色をするんですが、アトピー等の問題もあって、これを嫌う人たちも居るんです。なので、うちでは完全に薬品等を無添加にして、安全な畳表を出荷しています。生産品の9割以上が直売で売れますね」
面白い話である。い草にもそんな市場があるのだ。世の中深いというか、農業はやはり面白い。どこにもあるのが、従来型の市場流通の構造的問題。そしてそれを踏み越える意欲的な生産者がいる。 勿論、世の中の従来型の市場構造は、悪い側面ばかりではない。ただ、実状に合わなくなった構造は多数存在する。この構造を逆手にとって自己を確立する人たちもいる。日本の農業の衰退は目を覆わんばかりだが、まだまだ元気で面白い人たちがいると実感した。
ちなみにこの後、二次会にて焼酎を飲み、ラーメン屋にて熊本ラーメンと餃子を食べたが、隣に座っていた兄ちゃんが、 「この店はラーメンよりもチャンポンが旨いよ」 と言うので、チャンポンも頼んでしまった。そして確かに旨かった!ありがとう名も知らぬ兄ちゃん。
こうして熊本の第一夜が更けていった、、、