やまけんの出張食い倒れ日記

和歌山ラーメン地元の厳選3店を味わう

2003年8月11日  和歌山出張である。和歌山といえば魚が旨いのだが、旅程が限られている場合は迷わず和歌山ラーメンである。ちなみに和歌山では「ラーメン」とはめったに言わない。通常は「中華」というのだ。僕は通常、ラーメンはそれほど好きではないのだけど、和歌山の中華は大好きだ。8年くらい前に和歌山で農業情報ネットワーク大会というイベントが開催された時に、当時すでに全国的に有名になりかけていた「井出商店」に行き、その旨さにノックアウトされたのだ。  それと、他の地域では見かけないが、和歌山ではラーメンを食べながら「早寿司」という、一口サイズの鯖の押し寿司をつまむのが普通だ。この早寿司が旨い!僕はこれを中華の汁につけて食べるのが大好きで、ラーメン1杯に3個の早寿司を食べるのが普通だ。

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ちなみになぜ「早」とつくのか。本来この地域には、鯖に塩をして、米と一緒に1ヶ月以上漬け込んで乳酸発酵させる「なれずし」があったのだ。今は郷土の伝統食として、メジャーではなくなっているようだが、いわば滋賀県のフナ寿司のようなものだ。その簡易バージョンというか、発酵させていないものが早寿司なのだ。これがまた美味。以前、果樹農家さんの集会に寄らせていただいたら、お土産に20本くらい持たせてくれて、それを2日で全部食べきったときは、至福の時間だった。

さて和歌山ラーメン(中華)である。今回は変則的だが、ある市場への野菜の入荷風景を視察するのが目的だったので、夜から和歌山入り。すでに10時だが、今回アテンドしていただける津田さんが、

「ま、まずは井出商店にいきたいでしょ?」

と連れて行ってくれる。美人の奥様の運転で、井出商店到着。ああ、懐かしい、、、儲かってるだろうに、まったく変わらない外観だ、、、もうかなり遅いのに店は満員である。なんと残念なことに早寿司が机の上に見あたらない。売り切れてしまっているらしいのだ、、、 悔しがる僕をみて、津田さんの奥さんは「相当におかしな人だ」と思ったらしい、、、  憂さ晴らしではないが、中華大盛り、である。和歌山の中華は、注文から出てくるまでが早い。今回も速攻で出てきた井出の中華は、懐かしい濃いスープであった。

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スープをすする。 ん、旨い、、、 けど、化学調味料が前来た時より鼻につくなぁ。麺をすする。ん、若干柔らかすぎ、、、 カタ麺で頼むべきだったかも、、、 と細かい部分は気になるが、秒殺で食べ終わる。  正直なところ、ほっとする旨さがあるけど、和歌山の人が「もっと旨いとこあるよ」というのも納得という感じだ。ま、一日目(というか一食目)だし、いいスタートということにしておこう。


その後、津田さん宅にておもてなしをいただき、非常に心地よい時間を過ごす。夜中の1時から4時くらいまで市場と物流センタの見学と、ディスカッション。うーん大変。青果物の流通ってのはかなり大変なんですよぉ、読者の皆さん。  仮眠を2時間くらいとって、午前中にやるべき仕事をし、店舗視察をした後、午後1時半ころにようやく昼飯。

「これくらいの時間にいかないと混んでて、、、」

といって連れてきてくれたのは「和歌山市内の人しか行かん」という、激レアな店「山為食堂(やまためしょくどう)」である。なんでもここは、一般的なラーメン店ではなく、うどんとかトンカツとかもある、普通の食堂。でも、客が「中華とご飯」以外を頼んでいるところをほとんどみないということだ。この店、通常の和歌山の中華に比べると「とにかく濃い」んだそうである。なので、自動的にご飯を頼んでしまうということらしい。ふむ、濃い味好きの私にはビッタシではないか。

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■山為食堂 073-422-9113 和歌山県和歌山市福町12 営業時間 11時~17時 ただし売り切れ可能性あり 日祝休み

中華そば 650円

山為の店内は本当に食堂。名物のおばちゃんが居て、すべてを采配する。中華は大盛りはできない。ので、中華とご飯を頼む。しばし後に運ばれてきた中華&ご飯は、確かに「濃ゆい」存在感に満たされていた。スープをすする。確かに濃い!豚骨醤油に魚系の出汁が混ざったような感じだが、とにかくねっとり感が強く、それだけでオカズたり得る味だ。迷わず白飯を一口。そして麺をすする。若干太めで黄色がかった麺はスープがよくからむ。煮豚チャーシューがいい相性だ。文句なしに旨い。化学調味料のにおいもあまり感じない。ゼロではないだろうが、それよりも魚系の出汁を使っているのではないか。スープを飲み干すと大量に残る粉っぽい堆積物が、それを物語っている。麺→スープ→白飯の繰り返しであっという間に食べ終わる。実に満足した。これで650円は安いぞ!

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さて山為は美味かったものの、朝から何も食わずにラーメンとご飯(ドンブリ入りだったが)だけで満腹になる訳がない。同行の津田氏は「まだ食うの~?」と引くが、もう一軒ぜひ!

行きたかったのは、これも津田さん情報で、あの井出で修行していたらしい人が始めた「丸三」という店。市内をしばらく走り、見えてきたのは比較的綺麗な一軒家の店だ。

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■丸三食堂 和歌山市塩屋6-2-88 0734-44-1971 営業時間11時〜23時 日祝 休み

中華 500円 特製中華 600円 大盛中華 600円 大盛特製中華 700円 早すし 100円

おおおおやった~! この出張で初めて早寿司に出会えた~! 歓喜の私である。大盛特製中華をオーダーした後、早速1つ食べる。旨い! 中華が出てきた。ちなみに特製とはチャーシュー大盛りのことだ。それに麺も大盛りにしたのが大盛特製中華。説明しなくてもわかるか。この、丼に表現された世界が実に美しい、、、写真をみていただきたい↓ marusan1.jpg

どうですか!? 小宇宙が見事に表現されている!(なんのこっちゃ) 井出も山為も、いい意味でぶっきらぼうな感じなのだが、丸三は芸術点を挙げたくなる完成度なのだ。そしてそれは外見だけではなかった。

「旨ぁ~い!」

個性が違うことを差し引いても、どう考えても今回一番の旨さである。よく考えて欲しいのだが、私はすぐさっき中華とご飯を食べている。その上に大盛を食べて「旨い」というのだから、客観的評価としてはすさまじい高得点になるはずだ。  一番感じるのはスープの繊細さだ。豚骨醤油のベースは変わらないが、雑味が少なく、味わせたい要素を絞り、その各要素を際だたせることに成功している。濃厚さをあまり意識させない内に食べ終わってしまうのだ。麺は今回の3店中で最も細いので、これがスープを繊細に感じさせている要因の一つだろう。しかもチャーシューも手抜きナシで、旨い。バラ肉だと思うけど、味がきちんとしていて、口でとろける。とにかく旨いのである。  おもわず早寿司をもう一つ食べる。中華のスープに少し浸して口に運ぶ。スープと酢飯は絶妙のコンビネーションだ。一口大のガリがスープの脂を引き締める。と、津田さんがレジに立って会計をしてしまう。あああ、、、この「あああ、、、」は、おごって頂いてしまったどうしよう、という気持ちともう一つ「早寿司もういっちょ食べたいんだけどなぁ」という2つの意味がある。  それでもう一つ店員さんに100円払って早寿司を食べたのであった。それで諦めたけど、本当のことを言うともう一つ食いたかった。何せ最高なのである。

大満足して帰途へ。なんと津田さんの奥様が、早寿司を10本セットで買っていてくださり、お土産にもたせてくれる。なんと出来た嫁さんなのだろう、、、でも、告白しよう。この10本の早寿司、東京の自宅について、寝る前にすでに5本食べてしまったのだ。だって旨いんだもーん、、、

こうして和歌山ラーメン紀行その1は終わった。しかし情報によればまだまだいい店があるらしい。続編を期待して欲しい、、、