2月11日改定:「でわかおり」→ひらがなで「でわかおり」が正解でした。
出張二日目のメインイベントは何かというと、なんと蕎麦打ち体験である!これは、この2日目に講演で僕を招聘してくれた農業改良普及員である芳賀さん、一戸さんが企画してくださったものだ。お二人とも、上京時に僕の行きつけの焼き鳥&釜飯屋にて痛飲し、意気投合したのだ。その際、蕎麦打ち名人である芳賀さんが、
「いずれやまけんさんを山形に呼びます!」
と言って下さった。その約束が果たされたのが今回なのだ!
ちなみに農業改良普及員という職業について解説すると、県の職員として農業者に様々な支援・指導をする人たちである。その細かい中身は解説すると長くなるので略すけど、おそらくその土地の旨いものについてもっともよく知ることが出来る立場の人たちである。考えてみて欲しい。一人で500人くらいの農家の担当になって、常にコミュニケートしているのだ。だから、ピンポイントで「あそこの○○さんとこの何番目の畑で獲れた枝豆が一番旨い」ということがわかる人たちなのだ。そしてなぜか、僕の仕事はこの普及員さん達にお話することが多いんである。むふふ。役得とはこういうことを言うのだ。
さて
蕎麦打ち名人の芳賀さんが言う.
「やまけんさん、山形の蕎麦関係者で知らぬものの居ない、すごい人にお引き合わせしますよ。実は、蕎麦屋さんが蕎麦うちを習いにくる方です。」
そう、山形蕎麦に欠かせない伝説の仙人がいらっしゃるのだ。この方は鈴木製粉所という、そば粉を石臼で挽いて販売をする製粉業の社長さんで、鈴木彦市さんという。地元ではむちゃくちゃ有名らしいのだが、この方が、市中の蕎麦屋さんに蕎麦粉を販売しながら、打ち方指南をしているというのだ。
そして、
「この鈴木社長の打った蕎麦は絶品で、私(芳賀さん)にとっても一つのベースとなっています。でも、社長さんは粉屋さんですから、商売として打つことは一切ありません。なぜならお客さんである蕎麦屋さんに失礼だからです。ですから鈴木社長にそば打ちを教えていただいて、かつ食べることができるというのは、すごいことなんです。」
なんとまあ、すごい話ではないか!
そして、山形駅前のホテルから車で数十分、高速を降りて山間部に入ったところに、石臼挽きの粉の工場である「石臼館」がある。石臼以外の工場も近隣にあるらしいが、この立地にも分けがある。それは、この辺が以前、蕎麦畑であったこと。いい蕎麦ができる条件である霧がけぶる冷涼な気候の土地であることなどが、蕎麦を製粉し保存する工場としての立地によいということだそうだ。
なんだかわくわくしてきた。何かを無心に追求し専心している人に会うことが出来る、しかもその蕎麦工場の立地の話だけでも素晴らしい含蓄である。
←その鈴木社長がこのお方だ。
なんと鈴木社長、昨日の僕の講演をわざわざ観に来て下さったそうだ。
「わかりやすくていい話だった。」
と仰っていただいて、恐縮至極である。そして
のっけの一言目から、とんでもない謎かけが発せられる。
「あのね、10割蕎麦が一番簡単なんだ!難しいのは5・5だ。」
5・5とは、蕎麦粉が5割、小麦粉が5割という意味だ。いったいどういうことか。鈴木師匠の言うところ、
「10割なら蕎麦粉の茹で時間だけ気にすればいいけど、小麦粉と蕎麦粉ではゆだる時間が違うんだよ。」
ということらしい。 むうー 蕎麦打ちではなく茹でにもそんな話があったか!
「じゃあ、打ちましょうか!」
おお!とうとう始まるぞ!ちなみに場所は、この石臼館の中にある蕎麦打ち道場である。同時に8人くらいが蕎麦をこね、打つことが出来るくらいの設備がある、まさに「蕎麦打ち虎の穴」である。
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「蕎麦碾處石臼館」
http://www.suzukiseifun.co.jp/ishiusukan/index.htm
〒990-0014 山形市大字滑川字谷地411
開館時間 9:00~ 17:00
休館日 原則として土、日 、祝日定休
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ちなみに今回使わせていただいたのは、山形県が育種した蕎麦に最適な品種である「でわかおり(でわかおり)」だ。これも現時点ではまだ生産量が多くないため幻と言える。昨年度は天候のせいで収量も上がらなかったそうだが、今年からは大増産態勢に入るとのことで、来年度以降、でわかおりを使った旨い蕎麦が食べられるようになるだろう。
でも、現時点では幻なんだよーん!!
さて計量した粉をこね鉢に入れ、水を加えていく。蕎麦うちはこの時点でほぼ決まると言われるくらい重要な「みずまわし」である。
ちなみに僕は蕎麦打ちを10回くらいしたことがある。そのうち4度は人から教わりながら。あとは自宅のボウルとテーブルでやったものだ。そして成功率(まともな蕎麦になった)のは3回程度というお粗末さ。なので、素人である。
しかし!なんだかこの回数だけを聞いて、普及員の芳賀さん、一戸さんは僕を「できる」と勘違いしてしまったらしい。すっげープレッシャーなのであった。でも、水回しをしながら、大師匠が
「おお、10年くらい水回ししてる手つきじゃ」と言って下さった!素直に感動である。
水が蕎麦粉に浸透していくと、だんだんと粉が粒になり、粒が塊になり、と言う風にまとまってくる。そうなったら捏ね(こね)にはいるわけである。
さて僕がこれまで失敗を重ねていたわけがここでわかるようになる。捏ねの意味を取り違えていたのだ。うどんやパンと同じように、強く揉み込んでコシを出すように刷ればいいのかと思っていた。 全然違うらしい。 蕎麦の場合は、蕎麦粉の粒子たちを「つなげる」ために捏ねるのだ。だから、手のひらで強く押し込みながら練ると、逆に粒子が離れてしまう。僕は一心不乱に練りつづけてしまった、、、
さて捏ねてまとまった生地を台にとり、「のし」の工程に入っていく。
最初は手で優しく伸ばし、それを麺棒で均等にひろげる。
伸びてきたら麺棒に巻きつけ、5・4・4・3(←長くなるので説明は略します)の割合で伸していく。
そうするとなぜかこのように真四角の美しい生地が出来上がるのである!
さて
この辺で、僕の生地はどうにもうまく伸せない! うがーーなんでだぁーーー
と悶絶する僕を尻目に、初めての蕎麦打ちにも関わらず一発で乗せてしまった一戸女子が笑っているのが下の写真である。くっそぉ~
で、結局僕の生地はダメだった。どうしてもまとまらないのである。 うーん 大師匠すみません! しかし本日メインゲストはこの僕であるため、参集した皆さん(この時点で10人くらいいらっしゃっていた(汗))の目が僕につきささる!
絶対になんとかせねば!
「まあもう一回やってみっか。小麦粉を1割入れて、トイチ(10:1)にしよう。」
トイチとは、10割の蕎麦粉に1割の小麦粉である。大師匠いわく、
「食べてみて旨いと思うのはトイチだよ」
とのことだ。もうヤマケン、必死である。芳賀師匠(鈴木大師匠→芳賀師匠→ヤマケンという序列だ)にも教わりながらなんとか生地をまとめることができた。ふううう
なんとか伸せた後はコマ板を使っての麺切りだ。実は麺切りは結構得意である。師匠、大師匠からもなんとか及第点をいただいた。
しかし、師匠の切り(↓)から比べると、肩に力が入りすぎである。うーむ 蕎麦包丁買って修行しようかなぁ
さて、完成である。あとは茹でるだけだ。うーんこんなに緊張したのは初めてです。
さて、大師匠の奥様が茹でてくださった蕎麦が運ばれてくる。まずは僕や一戸さん、芳賀師匠が打った蕎麦から試食する。
僕のような素人が打った蕎麦でもやはり、旨い!コシが効いていて、ダシの乗りが良い、美しい味だ。
しかし、、、
大師匠の蕎麦が運ばれてきた瞬間に、北海道の栗山町の岩崎農場にて味わった至福の蕎麦以来の衝撃が、僕を襲ったのだ。
大師匠の蕎麦は非常に細い。山形では太めの麺を良く見かけるのだが、師匠のは江戸前でもあまり見られないほどに細い。それを何もつけずに一口すすってみる。
「ガツン」と衝撃を受けた。
蕎麦のあの香りがする! 香がするというレベルではなく、口から鼻にかけて強く蕎麦の香りが突き抜けていく!
強いコシと、角のびしっと立った切りによる口当たりは極めてシャープだ!
「これはトイチ(10:1)だよ。」
そう、師匠はこの味を10割ではなく10:1で出したのだ!正直言って10割蕎麦より旨い。ていうか、腕前はともかく、同じ作り方をしているのになんでこんなに差が出るの??
もう、びっくりなのである。
さてこの蕎麦のおかげで、やまけん人生史上の最高記録が出た!
山形が誇るでわかおりの蕎麦を9.5枚食べました。
1枚100g前後だと思うので、950gだなぁ、、、
いやほんと、旨かったんです。だって幻だよ?これを逃すと食べられないんだよ?
でも、さすがの僕もしばらくは喉に蕎麦が滞留していました。
15時からの講演でこれを話したらみんな笑っていました。
大師匠にお礼を言う。この気さくなお師匠さん、俺は大好きだ!ぜひ、腕を磨いてから、またお会いしたい。そして、今度は1日かけて、石臼で挽いた粉を蕎麦に打ち、師匠のお話を伺ってみたい、と強く思うのであった。
鈴木大師匠、ありがとうございました!
そして連れて行ってくださった山形県農業改良普及員の皆さん、ありがとうございました!
でもまだまだ山形紀行は終らないのであった、、、
おつかれさまです。大変ですね!
寒河江の近くに西川町間沢というところに「一松」という蕎麦屋さんが有ります。僕のお勧めの所です。次回行かれた時はトライしてみてください。
中国の内蒙古にある蕎麦工場の駐日営業マンです。蕎麦を輸入したがる日本の工場や企業を探しております。大量、優質の蕎麦面とそば粉が安い値段で提供できますので。ぜひ、詳しく相談したいと思っております。 TEL: 080-5333-0620 担当者:サイ
Posted by: サイ at 2005年05月14日 14:24