2016年3月 2日 from カメラ
ということでしばらくOLYMPUSのご厚意で、発売前のPEN-Fを結構な期間、試用させていただきました。確実に言えることは、あらゆる面で正常進化であり、グリップのないPENスタイルが好きな人は間違いなく買いです。
一方、E-M1やE-M5などのOM-Dシリーズに慣れていて、同じ操作感を欲する人には、少しだけ注意が必要かもしれません。でも、それでも超魅力的な選択肢であることは間違いなし。
誤解を恐れずに言うと、このPEN-Fの最大のセールスポイントは「かっこいい」ということだと思う。僕はデジタルの初代PENと2代目を持っているが、それと比べてもかっこいい。持って見せびらかしたくなる。E-M1などは「撮影機材」だけど、PEN-Fはなんというか、自分はこういうの使うヒトなんです、と主張するツールになるカメラだと思う。
ただしその場合、注意ポイントがある。ズームレンズは使わず、小柄な単焦点レンズを装着すること。常用している万能ズームレンズ12-40mmを装着すると、残念だがかっこよくない。長いレンズも似合わない。ということで、25mmを装着しているわけです。
まず画質だけれども、これはもう素晴らしいの一言。というのは、センサーが2000万画素以上にスペックアップしたわけだ。これは、印刷を前提にした場合、とっても嬉しいこと。だってトリミングしても十分な画素数になるから、助かるのだ。
で、画素数が多くなると、ダイナミックレンジなどが損なわれないか?という恐れがあるのだけれども、逆に十分なダイナミックレンジが確保できてきているという気がする。
僕がいま記事を書いている雑誌媒体に「そばうどん」という専門誌があるのだが、当然のようにそばやうどんの麺を撮ることになる。この麺というものが、光を当てすぎると白く飛んでしまいやすい被写体なのだ。白飛びしてしまうと、麺の質感が伝わらない写真になっちゃう。
この部分に関しては、センサーサイズが小さいマイクロフォーサーズ規格のカメラはこれまで、不利だった。だからどうしても麺ものの場合はNikonの35mm版センサーをもつD800の登場となっていた。
けど今回、取材にPEN-Fを持っていって、D800と共に撮り比べしているのだけれども、あきらかに質感描写が向上している気がする。編集者に見せても「あ、このクオリティで大丈夫です」といってもらえるのだ。
ちなみに、下の二枚の写真、片方がD800でもう片方がPEN-Fなんですけど、この大きさでその判別がつきますか?
レンズ焦点距離も絞りも違いますが、わかる人にはわかるでしょうね、とくに割り箸の影のグラデーションの情報量をよくみたらなんとなくわかるかと。けど、その差に意味がある時と無い時があるということ。
AFに関しても早い!借りたサンプル機の個体によるものか、たまに迷うことがあったのだけれども、問題はなし。
おかげでこんなシビアなタイミングをバッチリキャプチャーできた。
ちなみに、E-M1には搭載されている像面位相差センサーはないので、フォーサーズ時代のレンズを装着すると、コントラストAFになってちょっと遅くなります。けど、このカメラでそんなことしたい人もいないでしょうから問題なし(笑)
次に、とにかくこれでしょう、PENシリーズ史上初めて搭載されたEVF!
これは文句ありません。フラッグシップモデルのE-M1に比べれば倍率が小さいものの、使用上はまったく問題なし。みえもとても良い。マニュアルで合わせる際にも、フォーカスピーキング機能(ピーキングの色も選べる。赤がわかりやすい)があるので、楽勝でバチピンの写真を撮ることができます。
ただし、OM-Dシリーズを使っている人はちょっと戸惑うのが、その配置だ。
ご覧のように、レンジファインダーカメラのようにカメラの左側にある。OM-Dはカメラ中央部にあり、それもペンタ部が盛り上がっている根元にあるので、位置関係がちょっと違う。
最初はこの差はそれほど感じないだろうと思っていたのだけれども、二台を使い分けていると非常に違和感がある。僕の場合、右目で覗いて左目で実物を見るという撮り方をしているので、この位置だとカメラ本体はほぼ顔の右端から出てしまう。結果、安定した構え方をしにくくなってしまった。
また、僕のブログは基本、縦位置写真が多いのだけれども、縦に構える方法がまた変わってしまう。PEN-Fには縦位置グリップが販売されないので、シャッターボタン側を下に構えるか上に構えるか、どちらかとなる。この時、シャッターボタンを下に構えたら、EVFを左目で覗くことになる。この方式はぴったり顔がカメラ背面に密着するのでホールドしやすくなるのだが、いつもと違う眼で覗くので違和感がある。
そしてシャッターボタン上に構えると、EVFののぞき窓がカメラ下部にくるので、カメラ全体に顔を密着させてホールドすることが出来ない。また、OM-Dで慣れた高さより上にシャッターボタンが来るので、どうにも持ちにくい。
ということで、スペースの制約がなければ、EVFを真ん中に持ってきてほしかったなと思う。でも、レンジファインダーカメラに慣れた人はこれがいいんだろうね。諦めるしかない。
もうひとつ、マイナスポイントがある。背面液晶がタッチパネルになっているので、EVFを覗きながら右手親指でぐりぐりと液晶をタッチすると、フォーカスポイントを動かすことができるという超便利機能がある。この機能は、さきごろOM-DのE-M10markⅡで試用して「すっげー便利!」と思ったものだ。
しかし、上の写真を見てもらうとわかるように、PEN-FのEVFはアイカップと背面液晶の間がほとんど離れていない。この状態でEVFを覗き込むと、鼻や頬があたったのを、タッチパネルへのタッチだと認識してしまうようで、構図を決めようとしている時にぐりぐりとフォーカスポイントが動いてしまうのだ!
ということで、残念ながらこのタッチパッド機能は、僕には使えないものだった。ただし、これも皆がそうなるということではないだろう。僕はたまたま顔をグッと液晶につける撮り方をする。だから、気になるのだ。そうでなく軽くEVFに眼をつけるだけなら、こうならない可能性もある。
ちなみに試用の後半、僕はタッチパッド機能をオフにしていたのだが、電源を入れ直すとまたオンになってしまうという現象に見舞われ、カリカリしてしまった。これもサンプル機だったからで、最終販売まえの追い込みで解消されていることを祈る。
そうそう、バリアングル液晶について。
僕にとってはE-3以来となる、久しぶりのバリアングル液晶である。とても懐かしいと思いながらいろいろ使った。
地面すれすれにかまえて撮影する時や、自分の頭より高いところに手を伸ばして撮るときなど、液晶を自分のほうに向ける自由度が高いのが、このバリアングル液晶スタイルなのである。
バリアングル液晶はその構造上、縦位置撮影をする人間にとってかなりありがたいものになる。逆に、横位置の撮影のさいには、チルトが出来ないのですこし使いにくい。僕が日常使っているE-M1では、このようなバリアングルではなくチルト液晶なので、カメラを横に構えた状態での縦方向にしか動かない。ただ、僕の場合、真俯瞰(まふかん)で撮影するとき、手を高く上げて、液晶をチルトさせて確認し、シャッターを押している。その使い方が、このバリアンだとできない。光軸からはずれているので、バリアングルになれるのは結構大変だ。
ということで、バリアンもいいけど、本音ではチルトのほうがありがたかった。ただ、それは時と場合によるので、マイナスポイントではない。素直に歓迎したい。
さて、今回ハードウェア的に大きく変わったと実感するのがシャッターのメカだ。
ご覧のようにクラシカルなシャッターだが、ここの一式を新規開発したという。それによって、シャッター音が明確に小さくなり、そしてかっこよい「シャキッ」という音になった。いや「シキッ」という感じかな。
2000万画素を超え、手ぶれに気をつけねばならなくなった状況で、振動を押さえたシャッターになったのは意義深い。しかもかっこいい音だから嬉しい。
僕はもっぱら「低振動シャッター」を使っていた。シャッタースピードが限定されるものの、無音シャッターもある。ただ、細かいことを言うと、シャッター音自体はないのだが、ボタンを押し込んだときのハード的なクリック音が意外に耳に残るのが、ちょっと気になった。それ以外は満点。
ちなみに今回のPEN-Fの目玉のひとつ、前面についている画像のコントロールを実現するダイヤル。これは、実に面白いと思うし、「自分の写真はこうでなければならない」というのがハッキリしている写真家にとっては使いでがある機能だと思う。
でも、僕は現像処理をPCでする人間であり、テイストはその際に加える。カメラで撮るのは素直な情報であり、味付けは後というスタイルなので、これはほとんど触らなかった。ふうん、こういう機能ねというくらいだ。正直、この位置にボタンは必要無いなと思う。
今回とってもよかったもの、それは同梱ストラップ!
いつもSIGMAのdpシリーズを使うとき、同梱される合皮ストラップの質が良くて、これで十分なんだよなと思っていた。OLYMPUSはなんでチープなストラップばかり?と。 でも、それがずいぶんいいものがつくようになった。
これなら、よほどデザインにうるさい人以外は同梱ストラップだけで事足りるだろう。
ということでぽちぽちPEN-F雑感を書いていきます。が、結論をいえば、OM-Dユーザー以外には完全にお薦めできる。OM-Dユーザーはちょっとだけ戸惑うかもしれない。飽きに噂されているE-P2を待ちましょう。
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