2016年1月18日 from お取り寄せ
SIGMA dp3QUATTRO
タキイ種苗といえばあのトマトの桃太郎シリーズを世に出した、日本を代表する種苗メーカーだ。そのタキイがなかなか面白いことをしている。というのは、京都で「野菜提案企業」と銘打つWebや実店舗で野菜販売をする、坂ノ途中というショップと組んで、タキイの品種を集めた野菜ボックス商品を販売していたのだ。
これがじつにこんにち的というか、野菜の未来につながる可能性を感じたのだ。
※11月・12月に実施して、現在は売り切れ表示なのでおそらく終売だと思います。
これがなかなか面白かった。箱を開けると、最近の宅配野菜商品の特徴だが、綺麗に梱包されている。中身はニンジン、長ネギ、ミズナ、ホウレンソウ、サラダ菜にタマネギ。それら全てがタキイがシリーズ化しているファイトリッチという、機能性成分を多く含んだファイトケミカル強化品種たちだ。
SIGMA dp3QUATTRO
もともと色の濃い野菜は、太陽光に含まれる有害紫外線を遮るために生まれたということもあって、強い抗酸化作用をもつものが多い。
健康によいとされるのが緑黄色野菜であることにもそういう意味がある。ちなみに緑黄色野菜の機能生成分はカロテンであり、カロテン量が600μグラム以上含まれているものをそう称している。
色つきの野菜は、味わいもすこし色無しのものと違うことが多い。というのも、例えば上のごとき紫色や赤色の色素はアントシアニンと呼ばれるポリフェノール類で、その正体は糖である。はっきりと「あまいっ」と叫ぶような違いになることは無いが、ほのかに風味が変わることは往々にしてあるのだ。
この長ネギはおそらくタキイが誇るホワイトスターだろう。じっくり作ればとても美味しい一本ネギである。
こうした野菜に加えて、加工食品も入っていた。京くれないにんじんに黄色トマトのジャム、そしてなめらかピューレだ。
この日から野菜類はできるだけ味の分かる食べ方で食卓に上らせた。
OLYMPUS E-M1 12-40mm
このリーフレタスがなんていう品種なのかはちょっとよくわからなかったけれども、適度な苦み、トルコ産オレキデのオリーブオイルに富士酢プレミアム、塩だけで十分おいしい。
ちょうど、陸前高田の醤油蔵である八木澤商店から、奇跡の醤や三升漬けなどが届く中、なんと新製品か、椿油とヤマブドウのドレッシングというのが送られてきていた。
ので、これで紅法師という名の紅いミズナをいただく。
これがビックリするほど美味しい! というのもドレッシングが実に旨いからというのも勿論あるんだけど、紅法師のもつアブラナ科特有のツンとした香りにほんのりした甘みが乗っかって、つよい味わいが感じられる。
そうそう、ゴボウも入っていたんだった。 ゴボウをいただく際には、ささがきにして油で炒め、塩だけで味をつけたきんぴらを作る。太白胡麻油を使用。
いや、美味しいですね。
ふつうに長根種が切りそろえて入れてくれたのだとおもうけど、ザクリと食感がよく、土の風味を感じるお味でした。
そして白眉はニンジン。
上の方にあった写真からわかるように、金時ニンジン系の東洋種と西洋ニンジンを掛け合わせたタイプらしいが、このミックス加減はとてもよい!
ちなみにニンジン料理で僕が一番好きなのがこれで、千切りにして多めの油を使ってじっくり弱火でいため、ニンジンの色素が油に溶け出し、表面に焼き目がついてくるくらいまで炒める。塩だけで調味。エスニック風に食べたいならクミンシードを途中で投入するといい。
これ、マジで白飯が進みます。
京くれない、なかなか美味しいではないか、、、
ということで楽しんだんだけど、こういうの面白いと思ったわけです。一般の人にとっては「種苗メーカー」といったってよくわからない。だいたい「種苗」を「しゅびょう」と読むことすら知らない人だって多い。けれども、種苗メーカーの違いはけっこうおおきくて、ポリシーや得意分野、品種開発の方向性が各社違う。
だれでも、醤油やソースを選ぶときは、自分の好みのメーカーを選ぶものだ。けれども野菜に関して「私は、タキイよりサカタのトマトの方が好きなのよね~」「たくあんの大根は干し理想に限るわ」なんていってる人を見たことがない。
実際、そんな楽しい状況になったほうがいいと思うのだ。それには、売られている野菜がなんという品種で、どのような特徴があるのかをきちんと情報発信していかなければならない。
もちろん必要なのは「消費者に対する情報発信」だ。
しかし、いまどこの種苗メーカーも、品種の情報として熱心に出しているのは「農家向け情報」ばかりだ。そこには「食味良好」「耐病性が高い」「手がかからない」「多収性でたくさんとれる」といったことしか書かれていないのだ。ホームセンターに並ぶ種の袋を手に取り、裏面をみればわかる。味のことなんてぜーんぜん書いていない。
もっともっと品種による味の違いを打ち出していくべきだと、10年以上前から僕は思っている。なかなか状況は変わらないけど、こういう企画は楽しい。またこんな商品やったらいいのに、と思う。
美味しかったよ。
このWebはいわゆるグルメではありません。味や価格だけではない「よい食事」とは何かを追求するためにひたすら食い倒れる記録です。私の嗜好に合う人しか楽しめないと思いますがあしからず。
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