これが年越し肉。北海道のソフィアファーム・コミュニティーで放牧された18ヶ月齢の牛のお肉。2016年の牛肉シーンを予見すると、グラスフェッド(牧草肥育)の美味しさが見直される年になるはずだ。

2016年1月 1日 from 日常つれづれ,日本の畜産を考える

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前のエントリで書いた、年越しに食べたのがこのお肉。

同農場はバイオダイナミック農業を実践している農場であり、この牛が食べているのはそこで生えた牧草などだけだ。つまりバイオダイナミック農業の認証をしている、EUのデメター認証をとろうと思えばとれてしまうお肉。なんのことか分からない人もいるだろうけど、そういうのがあるんです。

18ヶ月齢は若すぎるだろう?と思う人も多いだろうが、食べてみたらそんな感じはまったくしない。マルヨシ商事による吊るし熟成の素晴らしさが光る。牧草肥育の肉は脂が少ないので、赤身を時間かけて熟成・分解し、アミノ酸の美味しさと熟成香をまとわなければ、なかなか美味しいといえる肉にしあがらない。真空パック熟成には限界があり、含気熟成をしないと肉のポテンシャルを引き出すことができない。今回は肉の到着後すぐにマルヨシ商事の平井君に手渡して熟成してもらったのだが、この判断がよかったと思う。年末の繁忙期にこんな面倒なことをしてくれた平井君には感謝の一言だ。

タイトルに書いたとおり、牛肉シーンは霜降りブーム、赤身肉ブーム、そして熟成肉ブームと続いて、今年はグラスフェッドの美味しさが見直される年になるだろう。そこでは、単なるグラスフェッドということではなく、「どんな草を食べさせたのか?」ということが重要視されるようになるはずだ。みな、グラスといえば草くらいの認識しかないかもしれないが、牧草の種類や時期によってまったく品質や栄養価が変わるのだ。従って、牛の味も変わってしまう。昨年、イギリスの牧場で出会った牧草のサイレージから香るバニラのような甘い香りは忘れられない。イギリスの肉と日本の肉の味が違う理由を垣間見たのだ。それはフランスと日本の違いにも通じる。

牛肉の味は、牛が食べたものの味でもある。その認識が深化する年になるはず、いやそうしたいと思う。