2015年12月28日 from 出張
年の瀬です。いちおう、僕も今日が最後の出社かなぁ~。今年もあっという間に、まばたきするくらいの体感速度で、一年が過ぎてしまった。今年はいろいろバタバタしていたこともあって、ブログエントリ数が極端に少ない! これはイカン!
ということで、足を運んだのに書いてないエントリの補完計画をできる限り実行しようと思います。フランスの牛肉編とかね。
その第一弾。1月7日という、新年早々で島根に行ってたのですね。出雲縁結び空港を降りると、島根県の職員にして、数々のお米品種などを産み出してきた技術者でもあるアキラさんが迎えてくれた。
「今回はですねぇ、真面目にやってる生産者さんや、全国的にはまだ知られてない島根の面白い農産物を識っていただこうと思ってるんですよ。」
うーんそれは大歓迎である。そして車に乗ると、1時間ほどひた走る。そのうち、パラパラと雪が、と思ったらけっこうな勢いでどかどかと降ってくる!島根県から広島に抜けることができる新しい高速道路で、県境に近い方に向かっているのだが、それって要するに山間部なのだ!
「雲南市吉田町というところで有機農業を黎明期からやってこられた、木村有機農園という生産者団体があるんです。そこがこのたび道の駅と直売施設を運営することになって、ガッチリと6次化の取り組みをしてるんです。話をききながら、昼飯もここで食べたいと思ってます。あ、ここですここです。」
山中の道に忽然と現れた道の駅「たたらば壱番地」。農産物の直売所もあるが、冬は野菜もできないので、乾物や加工品がズラリ並んでいる。それと、お弁当コーナーには、出雲名物「焼きサバ寿司!」といっても、サバの棒寿司ではない。出雲の焼きサバ寿司は、こんな感じでちらし寿司にほぐした焼きサバの身を混ぜたものなのだ。美味!
けれども僕の目はその奥のレストランに釘付けだ。だって、お蕎麦屋さんなんだもん!
「ふふふ、そうです。木村有機農園さんを中心に、この辺の有機栽培された蕎麦を挽いた出雲蕎麦を食べられるんですよ!」とニヤッと笑うアキラさん。実は僕とアキラさんは大の蕎麦好きという共通項があるのだ。アキラさんが連れてくるんだから、美味いに決まってる!
頼むのは、出雲蕎麦名物である割り子そば、、、は味見程度にほんの一段分だけ。
それより僕が大好きなのは、出雲にしかない食べ方である「釜揚げ蕎麦」(下の写真右のどんぶり)だ。
写真を見てお分かりの通り、蕎麦を茹でた汁をそのまま丼に張った中に、釜揚げ蕎麦が入る。
食べ方はなんと、ここにつゆをダイレクトに注ぎ入れる!程よい味加減になったら啜って食べるのだが、これが素晴らしい美味!なんでこれが全国区の食べ方にならないのか、不思議である。
「喜んでいただけてよかったです。やはり、この地域は山間地ですから、農産物を造るだけじゃなくて加工をし、かつお客さんに直接届けるということをしないといけないと思い、この施設を運営してるんです。」
ちなみに昼時、既に口コミが拡がっているのだろう、またたくまに満席になった!
ちなみに木村さん、新しいチャレンジをしているという。まずは味見を、と小さな椀に入ったビーフンのような麺が出てきた。啜ってみると、、、あ、これは米粉麺だ!
「そう、米粉麺です。よく出回っている米粉麺は、米粉だけではなくでん粉を加えないと麺になりません。しかし私たちは、米粉100%で麺にする技法を編み出したんです!」
おお、それはスゴイ!
ふつう、米粉麺をつくるには、馬鈴薯デンプンなどの、要するに粘るつなぎを入れなければ、うまく麺にならない。それを、100%米でやるというのは難易度が高い。けれども複雑なアレルギー症状が拡がっている現在、米粉100%というのは、必要なひとにとっては実に朗報だ。しかもこの麺、高タンパクで高アミロースなお米で作っているらしい。二重の意味で唯一の存在になるかもしれない。
クキッとした食感、これはモッチリ感の強い日本の米粉麺とは違う美味しさがある。でも、何より驚くのは木村さんのチャレンジ精神だ。
有機農業を黎明期からやってきて、その産物を販売するために加工まで手がけ、そして6次化の拠点としての道の駅を軌道に乗せ、そこでさらにあくなき商品開発を行う。すごい人だよね、ホントに、、、
ちなみに、さきの「たたらば壱番地」のそばで美味しかったもの。
名物「出雲牛すじ蕎麦」。見た目で分かると思うけど、トロトロに煮込んだ牛すじのエキスが染み出たつゆが、また最高に美味い!
さて出雲空港方面にとってかえし、お次に向かったのは島根県農業技術センター。
「食べて欲しい野菜と果物があるんですよ。おそらく、いや確実に島根県でしか食べられません(笑)」
とまたもやアキラさんが不敵に笑う。センターに着く前の小さな畑で車を降りると、そこにはどうやらアブラナ科の一種であろう菜っ葉が盛大にわさわさっと繁っていた。
「これが島根県が開発した『あすっこ』という新野菜なんです!」
なぬ、新野菜!?そう思っていると、育種担当者さんがポキッとその先端部、花蕾(つぼみですね)がつきかけたところを手折って渡してくれる。
「生で食べられますから」というのでかぶりつく。パリッと心地よい食感、ブロッコリーのような青くて美味しい香り、そして苦みや青臭さは全くない。美味いじゃないか!
「いけるでしょ?ブロッコリーとタカナの仲間を掛け合わせて創り出した野菜なんですよ。」なるほど、タカナと掛け合わせることで、このパリッとした食感になるんだな。
「あすっこ」は、ちょうど旬のナバナのようにつぼみがまだ青い菜の花を食べる新野菜。茎はアスパラガスのような甘さと旨味があり、葉も柔らかく、つぼみの部分は得も言われぬ食感を楽しめる。しかもレンジでチンしただけで本当に唸るほど美味しい!あとで近くのスーパーで観たら一束100円程度と手頃な価格だった。
このあすっこを摘み取ってセンターに入ると、会議室に電子レンジの用意が。
「実はこの野菜、茹でても美味いんですが、レンジでチンでもいけるんですよ!」
ええっほんと?僕はあまりレンジ調理は好きじゃないんだけどな、、、と思いつつも、ラップに包んでレンジで1分半ほどチン。出てきたのを食べると、、、
あれ!?茹でたのよりも味が濃くて、美味しい!そうか、茹でると味がお湯に抜けるが、レンジならそれがないからだ。
「お弁当のおかずや、急な来客時にも、これにポン酢やマヨネーズで簡単に一品作れるでしょう。県内ではかなり人気もあるんですよ。」
いやこれ、ぜひ全国区で出して欲しい美味しさです。
もう一つ驚いたのが、これまた島根県が育成したという高級メロンの品種「ゴールデンパールメロン」だ。 メロンといえば一般的にはアールスメロンのような緑色の果肉か、夕張メロンのような赤肉が有名。このゴールデンパールメロンは、なんと果肉が白いのだ!味わいは実に甘く濃く、薫り高い。
ん? でもいまは冬ど真ん中ですよ?メロンなんてできるの?
「ふふふ、、、実はそこがポイント。このメロンを、特別な冷凍技術を使って、このメロンの最盛期に凍らせたんです。普通は果物を美味しく解凍することはできないんですが、その技術だとメロンがちゃんとメロンとして解凍できます。しかも、、、天然のシャーベットになるわけです!」
凍ったメロンを包丁でしゃりしゃりと切り分けたのを食べると、、、
おお、なんということだろう、じんわり溶け出す甘さとともに、得も言われぬかぐわしい香りが鼻をくすぐる、、、口中で温めて歯をたてると、高貴な食感で歯が入っていくではないか!
「これ、東京のホテルなんかでデザートに出たら、喜ぶ人いると思うんですけどね、、、」
いや、もちろん大喜びでしょう!
この凍結メロン、あたりまえのことだが、普通に冷蔵庫で凍らせたらこのようにはならない。ある特殊な技術で、細胞を崩さずに凍結しているのだ。しかも、凍ったまま簡単に切ることが出来る。なかなかに面白いが、この冷凍技術さえあればどこの産地のメロンでもできてしまうのではないか!?
「いえいえ、それはもう、このゴールデンパールメロンの味が美味しいと言うことで、、、」
あっ そうだそうだ、たしかにこのメロン、とっても美味しかった!
いやまだまだ、いろんな食材があるんだなぁ、と感じ入ったのである。
このWebはいわゆるグルメではありません。味や価格だけではない「よい食事」とは何かを追求するためにひたすら食い倒れる記録です。私の嗜好に合う人しか楽しめないと思いますがあしからず。
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