最近おめみえしてないので「やまけん、牛飼ってたよね」と思ってる人もいるかもしれないけど、はい、いまも私は牛持ちです。岩手県には、初代ひつじぐもちゃんの第4子であるいなほちゃんが母牛になってくれ(ひつじぐもはお肉としていただきました)ており、順調に子を産んでくれています。
で、いなほの最初の子供である「さくら」ちゃん(メス)が先日、お肉になってくれました。
2015年10月18日
僕の短角牛「さくら」のお肉の格付けはB2でした。飼料用米を1割混ぜた新しい餌の味の感想ともろもろ。
こないだも書いたように、このさくらちゃんを「一頭まるごと、売ってくれ!」と頼まれて、悩んだあげくOKしました。だってお相手が、僕の短角牛ストーリーの最初からずっと一緒にいろいろやってきた山長ミートの槻木専務なんだもの。断れません。
その際、ひとつお願いしたのが「リブロースを2kgだけ、僕用にくれませんか?」というもの。やっぱり、自分の舌で自分の牛の、一番いいところを味わいたい。ちなみに僕はサーロインより断然、リブロース派です。
その肉が来ました!
やや、筋間脂肪が多いかなと思うのと、意外にサシがはいっとる。もちろん短角らしい粗いサシだけど。
個体識別番号は1364480835。
いつものごとく、二戸市の短角牛専門の肥育農家である漆原さんにお願いして肥育していただいた個体。
で、この子が肥育に入るあたりから、漆原さんがいきなり始めたのが、飼料米を餌に混ぜ始めたこと。それも1割以上、、、えええっ そんなドラスティックな飼料設計、やめてよ!と思ったけれども後の祭りです。さくらは、飼料米をたくさん食べさせると牛はどうなるかということを教えてくれる存在になりました。
ご覧の通り肉色は短角らしい濃さだが、脂肪色はかなり白い。飼料米の影響でしょうね。そしてカブリとロース芯の間に大きく入る筋間脂肪。分厚いです。
短角の、それもメスを28ヶ月以上長く飼うとこういう傾向がよくみられる。
ということで早速本日、分厚くステーキに切って焼きました。先日の香川のイベントで高良さんが教えてくれたオーブン焼きと、その前に土佐あかうしセミナーで荻野シェフが教えてくれた方法の折衷(なんと豪華な!)。
あ、付け合わせは北海道の村上農場の熟成インカのめざめをフライドポテトに。ビオファームまつきの松木さんにdancyuに登場してもらった際、取材時に教えてくれた方法、ジャガイモは丸で軽く茹でといて、指で割って、それを揚げるというもの。絶対に失敗がなく、ホックリ上がる方法だ。
さて肉だが、ウェットエージングとはいえとと畜から丸2ヶ月も熟成させておいたので、どーなってるかと思いきや、実に健全で嫌な匂いもしない、綺麗な肉の味。ただし、やっぱり飼料米の影響だろう、実に脂質があっさりしている。そのアッサリの方向性を好む人も居るかもしれないが、どうも僕には短角の赤身のよさをあまり表現しないアッサリ感に思えてしまう。
んー
米は、ほんの数%にとどめた方がいいんじゃない?と漆原さんには言っておいた。山長ミートの槻木専務も同意見。
でも、でも、それはまあ些細なこと。実に美味しい短角の肉でした。あ、熟成インカのフライドポテトはヤバイ美味しさでしたよ智華さん!
それにしても牛の肉は餌で大きく味が変わる。当たり前のことなんだけども、その基本的なことを謳いながら売ってくれる飲食店や小売店が少なすぎる。
牛肉を巡る真実って、なかなか世間に伝わらない。だから、書いてくしかないんだなあ、と思う。
このWebはいわゆるグルメではありません。味や価格だけではない「よい食事」とは何かを追求するためにひたすら食い倒れる記録です。私の嗜好に合う人しか楽しめないと思いますがあしからず。
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