数々の問題を抱える日本のジビエをどう盛り上げていくか!? 渋谷でなんとクジャクやキョンまで食べさせるdeco室田シェフが漁師になった理由

2015年11月18日 from 食材,首都圏

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OLYMPUS E-M1 12-40mm f8 1/100

柴田書店「専門料理」10月号の僕の連載「突撃インタビュー やまけんが聞く!」で対談させてもらったのが、渋谷のフレンチレストラン「deco」の室田シェフだ。

渋谷の、人がわらわらと集うど真ん中にあってジビエ料理を出す、それも鴨や鹿といった初心者も食べやすいものだけではなく、ライチョウやクマやアナグマ、はてはクジャクや最近とみに有名になったキョンなどまで出す。

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しかも、シェフの室田さん自身が狩猟免許を取得し、猟友会に所属して狩りをするというのがすごい。

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この日は「それほど入荷がないんですよ、とくにキョンとか、入って無くてゴメンナサイ」と言われたけれども、十分にいろんなジビエが届いていた。

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手前から沖縄のホウライキジ、石垣島のクジャクの子、キジバトに夏バト。

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クジャクは近年、沖縄の一部で増えてしまい、農業被害が出て「害獣」扱いされるようになったそうだ。

「お客様には、できるだけこうして羽根の付いたままの状態でいちど見ていただくようにしています。獣の命をいただくということをわかっていただくという意味もありますね」

もちろん、ジビエ初心者のひとはギョッとしてしまうだろう。だからこの店は2フロアに分かれており、2Fにはジビエ初心者やカジュアルなお客さんたち、1Fにはジビエ大好きな人達というようにうまく振り分けているそうだ。つまり2Fではごく普通のフレンチをいただくことができる。これは賢明な運営だろう。

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こちらはツキノワグマ。僕が「クマは?クマはないの?」と聞きまくったのでだしてくれた(笑) 実に旨そうだ、、、ニンニクと塩をすり込んでローストしたのにむしゃぶりつきたい!

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撮影したアミューズ。

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イノシシのリエットとツキノワグマのジャーキー、山鳩のテリーヌ。

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いずれも作り込みすぎず、素材のジビエそれぞれの匂いやクセがわかるような味付けだ。かといって食べ手を突き放すような嫌味はいっさいなく、さすがタテルヨシノご出身と思える、繊細で上品な仕上げである。

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そして、絶妙な火入れで、ご修行先であるタテルヨシノをほうふつとさせる盛り付けで出してくれたのがこの一皿。

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ハトのロースト 酸味を効かせたソース・サルミ 千葉県産の野菜とともに

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胸肉のしっとりネットリした食感、小さく引き締まったモモ肉の弾力、そしてササミの繊細に折り込まれた筋繊維の心地よい歯ごたえ。くさみとは無縁の「ハトの香り」が、素性のよさ、餌の豊穣さを感じさせる。

「これは私の猟友会の範囲である千葉県産なんですが、ちゃんと田んぼのちかくや綺麗な池の近くに生息するハトを獲っていることを確認しています。ドブ川の近くでとれるハトなどは肉になんともいやな匂いが付くことが多い。けれどもそれは見た目では分かりません。お客さんに出してから後悔することになる。それが嫌なので、苦労をして漁師になったんです。」

という室田さん、真摯にジビエと向き合うシェフだ。

ここ数年、国産ジビエのブームのようなものが起きようとしているが、それは全国的に獣が農産物を食べに降りてきてしまう獣害の被害額がとんでみないことになっており、駆除のために猟師に働いてもらわなければならない、そうすると獲れた獣の肉を商品化していかなければならないということが背景にある。

でも、実際には「使える」ジビエの肉は少ない。なぜなら食用に適した獣ばかりというわけではないし、猟師の初期段階の処理によって肉質が大きく左右されてしまうからだし、そして全国的に処理施設が少なかったり、設備が十分でないというからでもある。色んな問題が横たわっている。

その中で、みずから猟師の視点をもち、料理人でもある室田さんがこれからどんな活躍をするのか楽しみだ。

詳しい話は「専門料理」のバックナンバーをぜひご一読いただきたい。猟師になる過程の話など、実に興味深い。

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まだお若いのに実にしっかりしたビジョンを持っておられる。ジビエの新しいあり方を切り開いてくれるのが楽しみだ。キョン、いつか食べに行かなきゃな。