2015年10月16日 from 日本の畜産を考える
そういえば最近、あまり短角の話題をここでしていいないが、私の短角牛ライフは続いている。
最初に私の牛になってくれた「ひつじぐも」♀は5産した後にお肉になっていただいた(美味しかったなあ!)。その後継として、4産目に産まれてきた「いなほ」♀ちゃんが現在も母牛として頑張ってくれている。
そのいなほが2013年の2月に産んだ「さくら」を、地元の肥育農家である漆原さんに預けていたのだけど、このほど30ヶ月齢を過ぎたので出荷!と思ったら、お世話になっている二戸の短角牛メインの精肉店「山長ミート」の専務から、思わぬお願いが。
「やまけんちゃん、この牛、うちに売ってくれ!」
というのも、ここのところ全国的に牛が足りないということもあるのだが、短角牛の世界でも引き合いが強くなっていて、個体数が足りないのだそうだ。やまけんちゃんとこのメス、体重も大きいし、頼むから譲ってくれと嘆願されたのである。
うーーーーーーーん と悩んだけど、仕方が無い。ただし、自分用にリブロース2キロ分けてねとお願いして、今回は山長ミートに相対取引することにした。
ここのところ、なんで僕が渋るかということを分からない人もいるだろう。単純にお金の問題です。漆原牧場に預けて一日600円で餌と世話代としている。それに加えて母牛を預けている農家さんへもその世話代を支払っている。それが僕の生産コストだ。これを上回ってある程度の利益を確保するために、僕はパーツに分けてドライエージングをかけたりして、付加価値を上げた上でこのブログを読んでくれている方々に販売したり、飲食店に卸したりする。
その労力はかなり大変なものがあるのだけれども、頑張ればそれに見合った利益を出すこともできる。とはいってもと畜経費や運搬費、熟成業者さんへの支払いなどを差し引くと、30万円程度だが。
しかし、今回は枝肉の状態で卸売をすることになる。ぼくの短角の血統は増体もいいので、おそらく枝肉重量はだいたい400キロ程度だろうと推察する。それを、1500円程度の枝単価(と仮定)で掛けると60万円程度となる。そこから肥育農家さんへの飼料・手間代を引くわけだが、それが今回は40万5000円だ。それだけではなく母牛維持分のコストも、この肥育牛単価から引かなければならない。まあだいたい12万円程度。ということは75000円!?
しかし、この間ぼくは二戸に何回か通って牛の様子を見たりしている。JRでの往復が3万円。宿泊すると4万円程度。ということで、まあ儲けはないねということになるわけです。でもまあ仕方が無い。もう長いつきあいになる山長ミートさんなら、美味しい状態で売ってくれるだろうから、今年はそれでOK!とした。
まあしかし僕は肥育牛を一頭しかもってないからコスト分散できずにそういうことになるが、プロの農家は月間に10頭とか出荷するので、まあまあ割に合うということになる。ただ、やはり生産者が卸に対して販売する価格というのは、ほんとうにささやかなものだと言うことを識って欲しい。
というのは、よく「500万円の黒毛和牛!」とか出てきたりするけれども、そういう金額と農家手取りが最終的にいくらになるかということとはまた違う問題なのだ。スーパーで並ぶ和牛の価格が100gで1000円以上するのは高い!と思う人もいるだろうが、生産者・と畜場・卸・精肉業者またはスーパーというような流通段階を経ている以上、その各段階で仕事がなされ、お金が掛かっていく。
肉を食べるというのは、ビッグビジネスなんだよなぁ、と改めて思うわけだ。
ということで、もし明日か明後日に二戸に行ける人は、ぜひ短角牛の肉の販売コーナーに足を向けて下さい。だいたい午後遅めになると売り切れちゃうそうですから市役所に連絡するなりして、状況把握した方がいいかも。
僕は生産者さんと山長ミートさんに会っていろいろ相談するので、16時くらいに二戸に入ります。でもスケート大会があるようで、宿泊とれなかったので、盛岡に泊まります。日曜日の朝、どなたか福田パンをご一緒しませんか?
■トリコロールフェスタinなにゃーと
http://www.city.ninohe.lg.jp/forms/info/info.aspx?info_id=1937
このWebはいわゆるグルメではありません。味や価格だけではない「よい食事」とは何かを追求するためにひたすら食い倒れる記録です。私の嗜好に合う人しか楽しめないと思いますがあしからず。
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