2015年9月13日 from 出張
メジカのシンコをブシュカンで、というとなにかの呪文みたいだが、メジカと呼ばれる魚の新子をブシュカンという柑橘の汁を絞って食べるということだ。しかし、実はもう一つ落とし穴があって、高知県では先の一文は他の地域と違う。
たとえばメジカというと、他地域ではマグロの稚魚のことを指す。しかし高知ではメジカというと、ソウダガツオの稚魚のことなのである。
メジカの新子であるソウダガツオは真ガツオより小さく、鮮度が落ちるのが速いので生節や宗田節に加工される。このメジカ、その年に産まれたばかりの新子だけは刺身で食べられる。しかも生で食べられるのは獲ったその日だけというのだ。
そしてブシュカンというと、お供え物に使われる仏手柑と書いてブシュカンと読む、とてもみかんには見えないあの果実のことを言う。だから、「へー、あのブシュカンで食べられるんだ」と言う人もいるのだが、高知県におけるブシュカンはあれではないのだ。高知のブシュカンはどちらかといえばユズやカボスに似た丸い香酸柑橘で、冒頭の写真の桶に氷とメジカ新子とともに入っているみかんのことなのである。
これらは、高知出身で愛媛大学准教ののざけんこと野崎が教えてくれたことだ。
夏の終わりから秋にかけてのこの一時期だけ、高知県の漁港はシンコに沸く。高知市でもこれは食べることができない、と港町のみんなが口々に言って誇る食べ物なのだ。
その新子を食べる時に必要不可欠なのがブシュカン。先の仏手柑とも違うし、ユズやスダチとも違う品種。酸味も香りも柔らかく、魚の味を殺さないのがいいらしい。
実はこの日、僕らはめざす最終地点である四万十町でとれたて新子を味わうつもりだった。 しかし! 撮影機材もバッチリ揃えて降り立った高知空港で迎えてくれた萩ちゃん入野さんの一言目が、
「やまけんさん~ シケで漁にでられんかったそうです~!」
という言葉だったのである! 来たぁ~! 第一次産業は自然には絶対に叶わない。シケの日は出られんのです。仕方が無い。
「でも、もしかすると大正町あたりなら船が出ているかもしれないので、昼飯に寄りましょう!」
ということで寄ってみたのだ。
おっと発見!
めじか新子あります!
この辺は、昔は本当にさびれた町の小さな市場という感じの場所だったのだが、観光客がやってくるようになり、すっかりお店が整備された。昔来たことがある身としては、ちょっと商業的になっちゃった感もあるが、サービスがきちんとされるようになったので、これはこれでよいと思う。
さて、これが新子だ!
OLYMPUS E-M10MarkⅡ MZD25mmf1.8
「この新子、持って帰って食べたいんだけど!」
「はい、いいですよ~!どれくらいの時間もってきますか?」
「あ、もうすぐ車に乗って喰います」
「それならすぐ食べられるようにしときますね~」
「おお~ ここに、ブシュカンを絞るワケね!?」
と訊いたところ、この兄ちゃんがニヤッとして
「あのね、ブシュカン絞ったら、酸味で身がすぐに焼けてしまう!だからオレ達はね、皮を摺ってちらばしとくんです。ブシュカンは醤油といっしょにつけとくから、食べる時に絞って下さい」
という!
これができあがり。2人前を刺身にしてもらって、ブシュカンと醤油をつけて1000円。安いものですよ。
これを車の中ですぐさまあけて食べる!
一口、くちにいれて噛んだ瞬間に叫ぶ!
うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお
うまい!!!!!!!!!!!!!!!
このクニョンクニョンと歯にまとわりつく食感はなんだ!? 食感は極く柔らかなグミキャンディだが歯に絡みつく感じはマシュマロ食べたときのような感じ!いつまで噛んでいてもクニンクニンと歯にくっついてくるのである!死後硬直する前の身肉の心地よさと言ったらない!
静岡の焼津などでも珍重される、いわゆるモチガツオというアレと同じなのだろうけれども、このソウダガツオの新子はまた全然違う!身が小さいからだろうか、ヤワヤワ感がハンパでないのだ。
いやーやばい旨さだった、、、
四万十で食えなかったけども、うまかった!あいててよかった大正町市場!ありがとう~
このWebはいわゆるグルメではありません。味や価格だけではない「よい食事」とは何かを追求するためにひたすら食い倒れる記録です。私の嗜好に合う人しか楽しめないと思いますがあしからず。
本サイトの著作権はやまけんが保持します。出版物・放送等に掲載される場合はご連絡を下さい。トラックバックはご自由に。