2015年7月 6日 from 食材
いつも僕に「この食材、佳いよ。」と教えて下さる溝口さんからメッセージが来た。
「突然ですがマッシュルームを送りたいので事務所にいる日を教えてください。
岩手の八幡平にあるジオファームという施設での、馬糞を堆肥化して販売しビジネスにすることで殺処分される馬の行き場を作ろうという活動の産物です。
ご存知のように八幡平には地熱発電があり、その地熱によって質の高い堆肥ができます。マッシュルームはその堆肥と地熱を使い育てました。
何より凄く美味しいです。力が漲っています。正直、○○○○さんより味は濃いと思います。乾燥させた商品に差が出ました。」
マッシュルームか!
これが、殺処分される馬を思いやってのプロジェクトだそうだ。ご存じとは思うが、日本では馬はもう競馬か馬術競技に供するくらいしか道がない家畜で、中でも競馬用の馬は、引退後はほとんどが殺処分されてしまう。種馬として残るのはほんの一握り、なぜなら成績を残せない馬の精子を残しても仕方が無いからだ。
その馬たちに、ひとつの道を作ったのだ。そこにマッシュルームが関わる。
マッシュルームはキノコなのだが、その畑ともいえる菌床には、堆肥を使用する。この堆肥に馬糞を使うのだ。そういうと「なに、糞を使うの?」と思う人も居るかもしれないが、糞を使うわけじゃない。糞を完全に発酵させ、その過程で発生する発酵熱を利用して殺菌する。そうして完熟した堆肥に他の副資材を混ぜ込んで、キノコが生成できる床を作るのである。
しかし、疑問に思う人もいるだろう。馬糞でなくてもいいんじゃない?鶏・豚・牛の糞がいっぱいあるでしょう?
実は、それがちがうのだ。マッシュルームはヨーロッパで生まれたキノコで、馬糞堆肥から発生させたのがいちばん美味しいのである。しかし日本では馬が日常にいる環境が少ないので、マッシュルームを製造しようとすると牛糞を使う業者さんが多かった。しかし、それだと形がこの特徴的なマッシュルーム型にならなかったり、味がのらないという欠点があったのだ。
だから、いまマッシュルームでガンガン成功している山形の舟形マッシュルーム、北海道は十勝の十勝マッシュなどは、どちらも馬糞を得ることができる環境で栽培しているのである。
で、八幡平のジオファームだ。馬糞があればマッシュができる。ならば現役を終えた馬を八幡平の自然環境に連れてきて、どんどん馬糞をうみおとしてもらう。その馬糞を堆肥にして、マッシュルームを生産しようというのだ。しかも八幡平の温泉熱を利用して、施設の暖房にする。
これによって、エネルギーをあまり使用せず炭素排出を減らし、馬の生命を大切にするマッシュルームを産み出したというのだ。
とどいたマッシュルームは実にきれいなものだった。
僕もキノコ生産者のところはかなり廻っているけれども、こうしてまじまじとマッシュルームを観る機会というのもない。
さてどうやって食べようかな、パスタにでも刻んで入れ込むかとも思ったが、マッシュルーム単体の味わいを食べなければ意味がない。
ということで、まずは生のサラダをホワイトで。
レモンとタマネギすり下ろし、オリーブオイルでヴィネグレットを作り、クレソンと和える。あいにく美味しくない植物工場・水耕栽培のクレソンしかなかったのだが、、、
マッシュルームが旨いから、とっても美味しいサラダになった!
生のマッシュはクキックキッと心地よい食感に、なんともいえない透明感のあるまろい香り、そして強い旨みがあるのだ。クレソンの青い香りになんともマッチして、素晴らしい!
そして、もうひとつマッシュルーム自体をしっかり味わいたいと思って、フライをつくってみた。
市販のパン粉をフードプロセッサーでさらに細かくして塩も混ぜ、小麦粉と卵でしっかり目に衣をつけて、非加熱圧搾の「御なたね油」でしっかりと揚げる。
もちろんこちらはホワイトとブラウンの両方を揚げてみた。
これが、とっても美味しい!
噛んだ瞬間、マッシュルームに内在していた水分がスープとなってジュバッとほとばしる。やけどしそうになるけど旨い!卵を吸ったパン粉の塩気だけでもガンガンいけるが、マヨネーズをつけるとさらに美味しさが拡がる。
ブラウンマッシュはやはりこっくりハッキリした味わい。ホワイトは上品な香りで、あと口がいい。どちらも標準レベル以上の美味しさである。
舟形マッシュルームや十勝マッシュルームなどと並べて食べ比べていないので、優劣はわからないのだが、日本にまた面白いマッシュルームが出てきたと思う。エネルギーの観点からも、またエシカルの観点からも納得できるジオファーム八幡平に今後、注目したい。
実はまだ八幡平に行ったことないんだよな、車で通り過ぎただけで。八幡平サーモンもあるし、じっくり廻ってみたいんだけどね、、、
溝口さん、ごちそうさまでした!
このWebはいわゆるグルメではありません。味や価格だけではない「よい食事」とは何かを追求するためにひたすら食い倒れる記録です。私の嗜好に合う人しか楽しめないと思いますがあしからず。
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