本当に素直で心地よい肉質、嫌な匂いの一切しない、美味しい豚肉だ。在庫はたっぷりあるそうなので、ぜひ神楽坂しゅうごに食べに行っていただきたい。
秦(はた)先生は、僕が足を向けて寝ることのできない方だ。出会いは2009年のエントリ。
■畜産システム研究会の会場となったのは北大の静内キャンパス。なんと470haもの敷地内は、動物ワンダーランドだったのである! 肉牛のヘレフォード種と短角種、そして本物の道産子・馬を観た!
https://www.yamaken.org/mt/kuidaore/archives/2009/06/470ha.html
そう、畜産システム研究会で訪れた北大の付属牧場、といっても札幌から2時間かけてバスで行った、あの美しい牧場である。そこにはヘレフォード種や短角種といった放牧に向く肉牛品種が山に放たれ、その脇の林のなかには、ホンモノのどさんこ馬の一群が優雅に走っていたのである。
あの空間を管理・監督しておられたのが秦先生だ。家畜の面倒をみ、来場する学生の面倒をみ、そして札幌に戻って授業もする。そんな秦先生が、僕を北大に入れてくれた張本人なのだ。「さっさと博士号とれよ」といまだに言われるのだけど、ハイ、頑張ります。
その秦先生が早期に退官された。実は在籍時からずーっと「俺は養豚やるよ」といっておられたのだが、それを実現させたのだ。実はそのきっかけも僕はご一緒していたのだが、それは野菜畑の跡地を電柵で囲んだ中に豚を入れ、配合飼料をほとんど与えずにゆっくり放牧で育てるというものだ。
通常の三元交配であるLWDの豚は、配合飼料を与えて豚舎で飼うと175日で100kg程度に育ち、出荷される。100kgというのが一番美味しいというわけではまったくなくて、それが一番効率的で経済的なのである。
しかし、その放牧養豚は365日かけてゆっくり育て、体重を120~150kgくらいにして出荷していた。それだけ時間をかけてゆっくり育てると、肉質はぎっちりと締まり、後腿部はがっしりと張った状態になる。そう、生ハムに非常に向く肉質になるのだ。その後腿部を生ハムにし、それ以外の部位をテーブルミートとして飲食店に出荷するという流れを作りだしたのが、いま北海道のジビエの分野で有名になりつつあるエレゾ社の佐々木君である。
その仕組みをみていた秦先生、ご自身でこれをやってみたい!と思ったのだろう。本当に十勝の忠類(ちゅうるい)というところに土地を見つけて、養豚を始めてしまったのである!
昨年のいまごろ、忠類に入って数ヶ月の秦先生だ。豚舎と家もついていたのだが、そうとう手直しが必要だったようで、かなりお金が掛かったらしい(笑)退路がありませんな。
しかし、広大な面積が先生のものに。あ、北大牧場の400ヘクタールに比べれば小さいけどね。
あっ彼方に白豚ちゃんが見える。
こちらは発育のよいケンボローという品種。人間が寄ると、餌をくれるのかと思ってブヒブヒ集まってくるのである(笑)
ブヒヒィ~! と寄ってきて騒いでたと思ったら、、、いきなり!
ぱたむ、と寝てしまう豚、続出。
おいおい、、、いまのいままで騒いでたじゃん、、、
ほんと、わけわかりません(笑)
このように、配合飼料はおやつ程度にしか与えず、放牧で場所をローテーションさせながらゆっくり一年ほどかけて育てたのが、冒頭の写真の肉なのであります。
「黒豚(バークシャー)もやってるんだよ。そうだ、隣のデントコーン畑の収穫した跡地に、餌を食べさせに行くんだった。いこういこう」
「あれ?いないなぁ、、、ちょっとまっててね、さがしてくるよ」
「おーい!おーーーーーい! おかしいな、、、」
と思ってたら!
おおっ
おおおおおおおおおおおおお!???
うああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ
くっ 喰われる!?
まじで身の危険を感じた、、、(汗)
それなのに!
なぜかうちの嫁さんには、なついてやがる、、、 ちっ
おやつに、野生のリンゴを食べさせます。
ヨーロッパのバークシャーらしい、弾丸型の体型に巻いた尻尾、そして立った耳。さあ、この子達を隣のデントコーン畑の跡地へ連れて行く。
もちろんいうことなんざ聞きやしません(笑)
とおくに勝手に行っちゃうやつら続出。
なんとか連れ戻します。
こっちにご馳走がたっぷり落ちてるんだよ、、、
この子達が喜んで食べているのは、餌用のコーンを収穫した後に落ちている残渣だ。
コーンの破片を見つけるとすかさずがぶりと食べてます。
なぜか、うちの嫁が順調に豚使いになっている、、、(笑)
こんな環境で育った豚の肉がいま、「神楽坂しゅうご」に到着してます。
「いやー なんかすごい量おくって来られて、、、冷蔵庫パンパンなんですよ、、、」
と汗を浮かべる廣瀬しゅうごシェフ。そうかそうか、じゃあたくさん食べないとな!
コースのはじまりはなんと小玉スイカのガスパチョ。これが素晴らしく美味しい!スイカはウリだね!違和感のない味わい。
こいつも美味しかった、鯖の瞬間燻製とアワビタケを合わせた前菜。
さあそして秦先生とこの豚肉登場。今回の豚はケンボローの365日放牧肥育のものだ。料理は豚バラのボッリートと八列トウモロコシのポレンタ添えだ。
同じ十勝産の八列トウモロコシのデンプンと香りがいいソースになる。
洋風おでんといっていいボッリート、この秦先生の豚バラが実に素直な繊維感で、気持ちよくほぐれて美味しい。ほらみてこの綺麗に走った繊維。
そして、ロースはカツレツに!
この日、三部位あるといっていたので、バラは煮込み、ロースはカツ、肩ロースはローストとお願いしておいたのだ。
ロースの素直で美麗な肉質は、カツレツに向いている。水分がほどよく抜けた身肉はほくほくしていて、それと際(きわ)の脂身の透明感ある油脂分がマッチして、素晴らしい。分厚いポーションを一気に平らげてしまった。やっぱり廣瀬しゅうご、天才です。
そして最後は肩ロースを、ミニトマトのモスタルダ、カチョカバロチーズと芋と共に。
肩ロースはいろんな筋繊維と脂身が入り組み、食感・味・香りともにいちばんダイナミックなあじわいの部位だ。
でも、粗野な感じがまったくしない綺麗な肉質。これ、まだ入荷し2週間くらいしたらすっげー旨みが出てくる気がする。
モスタルダとの相性も抜群。最高です。
ということで、この日の〆はマトンのサルシッチャを使ったアマトリチャーナ風?にしてはミントが添えられてましたが、、、
うまかった!
ということで、いま東京では唯一この神楽坂しゅうごにて、秦先生の豚を食べることができます。みなさん、私の恩師を喰わせるためにも、ぜひ食べに行ってやって下さい。しばらくの間、メニューに載り続けると思います。
ちなみに、、、オーダーするともれなく豚ちゃんの記録をみれます(笑)
こんな豚肉、なかなか食べられませんぜ! 秦先生、美味しかったですよ!バークシャーの出荷も待ってます!