2015年4月 3日 from 首都圏
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さて、「流石」のエントリの題名に「まずは職人が手で打ち、伸した十割蕎麦を」とあるが、「まずは」というのは一体どこにつながるの?と思った人もいるかもしれないが、ここにつながります。
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日曜日、新宿駅南口を出て甲州街道を西へ向かって歩き、4分ほど。
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こんないい立地のところに、あたかも昔からありそうなそば屋「さ竹」がこの4月よりオープンしている。実はこの日はオープニングの直前、関係者とその仲間が集まって、オペレーションの練習を兼ねた試食イベントの日なのだ。
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入店するとすぐにどでんとしつらえてあるのが石臼。ということはこの店、挽き立てのそば粉を打つ店なのである。
この店、友人であり「こいつすげぇや」と思っている左今(さこん)君のアグリゲート社が経営している店である。ちなみにアグリゲートの本業というかメインの業態は「旬八青果店」。そう、都市部に展開する八百屋なのである。目黒や五反田、赤坂などに出店しているのだが、「こんなところにニーズがあるのか!?」と驚くような立地で、しかもストレートアヘッドな八百屋をしているのに、千客万来という面白い企業なのである。
僕は勝手に「ネオ八百屋の時代がきている」と言って廻っているのだが、そのひとつが旬八である。これ以外に僕がネオ八百屋と思ってるのは雪ヶ谷大塚の「やさいやふうど」に早稲田の「こだわり商店」である。それはともかく、「旬八」では青果店をやってるのに、いきなりそば屋なのである。
この店のウリはなんといっても、提供される商品と価格のギャップである。十割蕎麦の盛りがなんと330円。笑っちゃうのは、プレミアムモルツが150円(!)。
「サラリーマンの方でも、健康にいいものを食べて、一杯飲んで帰っていただきたいんです」
というのが彼の考え方だ。ちなみにこの日、厨房でわさわさ働いていたなかに佐今君も居た(笑) なかなかやる社長である。
十割蕎麦をこれだけの低価格で出すのだから、とうぜん職人の技ではやってられない。ごらんのとおり押し出し製麺機である。この機械が登場してからというものの、蕎麦の世界はすこし変わった。十割蕎麦といえばそこそこの価格になるもの、というところから一般枠まで降りてきたということである。
この業態としては同じく安い十割そば店として識られている「嵯峨谷」とかなり造作も似ているので、コンサルさんが同じとかそういうことなのかもしれない。
入り口で食券を買い、カウンターでそれを渡して待つ、セルフ方式である。
「セルフにすることで、ホールスタッフの人件費を材料原価にふりむけることができます。そのほうがお客さんに喜んでいただけると思いまして」
といって出てきたのが、ちょっと幅広な麺が特徴の十割蕎麦である。
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つゆは江戸前にしては甘口。 「もちろん完全に無化調です!」 というだけあって、あまっぽいが安っぽい味ではない。しかも最後の方まで味が伸びて、薄まりも遅い。いいつゆである。
蕎麦の味だが、うーん、もうすこしオペレーションに慣れたら、もっとよくなるでしょう。現段階で330円の価格を上回っていると思うが、麺の滑らかさと香りは、もう少し安定させられるだろうと思う。
しかし僕が気に入ったのはこちらのほう。
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生冷や麦である。これも押し出し製麺で小麦を練った玉を押し出す方式だ。これが出色のできばえ!つるんつるんとした食感、麺の切り口はおそらくやや丸形、とてものどごしがいい!
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「まだ、生冷や麦を前面に押しだした店って少ないと思うんですよ!」
ということだが、大当たりだと思う。夏は注文がこれに殺到しそうだ。
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もちろんもりだけではなくかけも頼んでみる。こちらは野菜かき揚げ天の乗った「天玉」だ。通常、立ち食い蕎麦の天ぷらはタマネギとニンジンを極薄切りにして、専用の天ぷら粉を溶いて空気を抱き込ませてフワッと揚げるので、それはもう安いシロモノである。それを分かった上で、ぼくら路麺愛好家は食べている訳だ。立ち食いそば好きにとって、かき揚げ天は"調味料"なのである。←敬愛する路麺評論家・ゴリ君の言葉である。
しかしここの野菜かき揚げ天はそんなやわなものじゃない。タマネギニンジンにサツマイモがしっかりと、サックリと揚げられている。旨い!
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こちらは肉蕎麦。
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肉蕎麦の出汁にはちゃんと豚肉の旨みを溶け込ませているようで、僕にはこちらのほうが天玉そばの甘汁よりも肌に合う。
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このちょっと強めの麺には、つよい味わいの甘汁のほうが合うと思うんだよな。
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おいなりさんも美味しゅうございます。
そして、小かき揚げ天も頼んでみたら、よく考えてみれば分かるけど、さっきの野菜かき揚げが載ってきた!
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けど、二回目でもいいや。実に美味しい。それはそのはずで、旬八青果店の仕入れてる野菜だもんね。
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前日に職人技の極地といえる極細手伸し十割蕎麦を楽しみ、そして翌日に一枚330円の押し出し製麺の十割蕎麦をいただく。スペックだけ見ればどちらも十割なのだが、もちろんそこに込められた意味と、誰に向いているものかというのは違う。その違いをきちんと理解して、どちらも応分に食べることを許容するという姿勢を持っている人が、真の食べ手なのだといえるだろう。
いや、そういう人間でありたいと思う。佐今君、ごちそうさまでした。
このWebはいわゆるグルメではありません。味や価格だけではない「よい食事」とは何かを追求するためにひたすら食い倒れる記録です。私の嗜好に合う人しか楽しめないと思いますがあしからず。
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