ロンドンはケンジントンストリートのシェ・パニース的レストラン「Clarke's」で、28日間熟成のスコットランド産ブラックアンガスビーフのステーキをドンと食べる。イギリスとアメリカの肉の好みの違いをまざまざと識る。

2014年10月17日 from イギリス

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ちょっと間が空いてしまったが、イギリスネタだ。

よく「イギリスに旨いもの無し」と言う人がいるが、それは明らかに真実ではなかった。少なくとも僕は5泊6日の滞在中、「これは不味い!」と思ったことが3度に留まった(笑) マークス&スペンサーで買ったサーモンとウォータークレスの、それは美味しそうなサンドイッチ、そしてぜったいに日本人じゃない輩が経営しているであろうスシレストランのにぎり寿司である。

で、旨かったのは多々あるのだが、その中でもなるほどね、と思ったのがここClarke'sである。

 

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泊まっていたホテルがあるのはハイストリートケンジントン駅の近くで、このレストランはケンジントン通りにある。てくてく歩いて現地に向かった。

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実はこの店も、カリフォルニアのコンフィチュール大家であるJune Taylerが僕らにリコメンドしてくれた店だ。そこで、インターネット上の予約フォームに「ジューンと友だちなんだけど、彼女がリコメンドしてくれたんです」と書いたところ、なんとシェフのサリー・クラークご本人からメールがすぐに返ってきた。

Wonderful! We are great fans of June Taylor.
We look forward to seeing you later this evening.
With kind regards

ということで行って参りました。

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ちなみに、お米関係でいつもお世話になっている山田屋本店のご息女であるまりえちゃんがロンドンにいるということで、呼び寄せた次第。

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これが店内だ。実にエレガント、僕らが17時の口開けの客だったので、まだ誰もいない。やったーということでシャッターを切らせてもらう。

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さて、この店は「イギリスのシェ・パニース」的な評価をされているようだ。シェ・パニースはしらないひともいないだろうが、カリフォルニア・キュイジーヌと呼ばれるムーブメントを創出した、アリス・ウォータースが率いる伝説的レストランだ。僕も、今和泉夫妻&飯尾彰浩君と共にディナーを愉しませてもらった、素敵な店だ。その流儀は、ローカルな素材を吟味し、シンプルな調理で提供するというもの。明らかにClarke'sもその流れを汲んでいるということがわかった。

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そうそう、イギリスでは、当たり前かもしれないけれどもスモークサーモンが実に美味しい!日本のなんちゃってスモークではなく、本当にこうばしい薫香がするのだ。身肉はシットリしていて、なにより分厚いので官能的な食感も楽しめる!

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ロンドン郊外の酪農家の生乳を使ったチーズがたっぷり入った、これはパイ?ごめんメニューを撮影するの忘れたのでおぼろげです。

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これも見た目ほどチーズチーズしているわけではなくて実にシンプル&ストレートにチーズのパイという感じだ。

それと、イギリスは白身魚が美味しいので、この日はスズキともう一つ、名前を忘れたが魚を頼んだ。

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どちらにも言えることなのだが、身に振った塩も控えめで、ソースの味わいも実にあっさり。下の、バターたっぷりにみえるソースでさえとてもアッサリ目である。ペルノーのような酒でうっすら香りづけをしているが、魚と一緒に食べてもほのかな香りで、白身の味わいのほうを優先するような、そんな意図がみえる皿である。

とはいえ、以外に火入れはガッシリと中心まで通っている。この辺は生好きな日本人の好みとの違いが見てとれる。こちらはなんにしてもやんわりとした火入れというのがあまりない。

さあそしてこの日、メニューを見て「これはぜったいに喰う!」と決意したのが、これである。

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本場、スコットランドのアンガスビーフを30日間ドライエージングにした、骨付きのビーフステーキである。かなり大きな版である!

ちなみにイギリスでもフランスでもイタリアでも、ドライエージングは行われている。しかし、そのドライエージングはNYのように積極的にカビをつけるわけではないので、あのほとばしるようなナッツ香はしない。ごく控えめな香りがするもので、どちらかというと風味は日本の肉の熟成方式である「枯らし」に近いような気がする。

おそらく熟成香を期待するのではなく、草をたくさん食べさせた牛の赤身部分に多量に含まれる水分を抜いて旨味を凝縮し、肉を軟らかくするということを主眼としているのだろう。

なにせ、こんな真っ赤っかな肉だからね(笑)

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外側から中心部にいたるまでに三層の肉色がある。外側は黒く焼けており、焦げ具合から炭火か熾火であろうことがわかる。褐色にちかいほどに焼き固まっている層が2~3ミリほどあることから、かなり高温の強火をしばらくあてて焼いている。そこからこれまたかなり長い時間、ベンチタイムを置くことによってじんわりと火が入り、最後にすこしだけ肉を温める意味で火に掛けたという感じだろう。実際、肉全体の温度はぬるい感じだった。

味わいは、、、とてもリーンだ! 熟成香が強くないので、純粋に肉の味がわかる。粗飼料中心、というよりは本当に穀物飼料をほぼ与えていない肉だ。熟成期間が長いこともあり、筋も柔らかくなって噛み切りやすい。硬いという印象はまったくない。肉の香りはマイルドで、いわゆるグラス臭は一切無い。ただし、過度に旨味が乗っているわけでもない。実にシンプルに「牛の肉だなぁ」という味わいで、どちらかというと地味な印象である。

塩加減はやっぱり淡かったので、卓上で塩を足しつついただいた。こうした肉を食べる人達が黒毛和牛のA5を食べたら、そりゃあ別物だと感じるだろう。そう、まったく別のものである。そしてどちらも価値があるのだ。

ちなみにデザートにとったこのビスケットが実にじつに美味しかった!やっぱり麦の国、粉ものは旨い。

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じっくり2時間ほどかけた食事だったが、食べ終わる頃にはお客さんが満杯。どのテーブルも富裕層だと一目でわかる人達ばかりだった。

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Clarke's、イギリスの食材のストレートな味わいを識るためにはいい店です。

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そのClarke'sの目の前には、これも有名らしいパブがあった。お腹パンパンで入らなかったけどね。

ジューン、リコメンドしてくれてありがとうね!