2014年8月29日 from ドライエージングビーフ,首都圏
ここ1年でグググッと有名になった人気店。また、柴田書店から販売されている熟成肉本でも大きくフィーチャーされているので、業界内でも有名なお店だ。
その柴田書店の編集者と都内の和食めぐりをしつつ、予約なんとかなりそうだということで二軒目で足を伸ばす。仮にもドライエージングの仕事をしているので行きたかったんだけど、いっつもいっつもネットで予約が取れない!
で、、、どうやら答えは「ネットじゃなくて電話する」が正解らしい。1Fカウンター席などは、空いているタイミングもあるらしいのだ。ということで、21時過ぎに入店。僕は「ただのヒトです~」という空気感を漂わしながらひたすら食べる。
ロメインレタスは1/4カットしたのに無造作にシーザースサラダドレッシングをかけたのがドンと出てくる。しかも旨い!シズル感ある料理が出てくる。
でも、そんなにお客さんいないんだな、と思ったら2Fがあったのね。もう、ギュウギュウ!しかも女性率7割!すげ~! 神楽坂のカルネヤといい、いったいなんでこんなに繁盛するのか。
この店の火入れ、炭火の焼き台でまずは表面を焼くのだけれども、そののちご覧のような吊り下がり式のガラスケースに入れておく。火がついてるのかと思いきや、どうも火口はないし、電熱があるわけでもなさそうなんだよな、、、高温になる電灯で、余熱にプラスα程度の火をじわじわ入れているのだろうか。肉については最初にオーダーするときに「40分かかりますので」といわれるので待つわけだが、このようにじわじわ火入れをしていくシステムであれば、料理人がつきっきりになる必要がなく、技術がばらついていてもなんとかなる。実に上手な仕組みだと思ってしまった。
その間にオーダーしたのがカルネクルーダのようなものとハンバーグと赤ワイン煮込み。
生じゃなくて、ちゃんと火は入ってます!
これも熟成肉?と聴くとそうだとのこと。黄身を和える前に食べてみたが、ああ、熟成香はあるけれどもとても優しい。そして肉はしっとりしていて、水を抜きすぎていない感じ。はい、よいお味です。卵の黄身はウズラくらいの小さいのでもいいかもね。
これがハンバーグ。もちろん熟成肉のハンバーグで、実はこいつがかなり旨い!
この後出てきた肉もよかったけど、正直ハンバーグのうまさがビックリ。程よい熟成なので、ブンブンと香りがするわけではない。けれども和牛の脂と身肉の旨さがきちんと引き出されている。実に良質なハンバーグです。
一緒にでてきたモツの赤ワイン煮も旨し。二軒目なのにワインが進んでしまう。
そして主役登場!
手前からサーロイン、ランプ、内モモ、ポーク。
いや、なるほどと思いましたね。これはドライエージングというよりは、日本の伝統である枯らし寄りの境界線だと感じた。NYスタイルのような、ガンガン風をあてて自由水を引っ張り出し、微生物をドカンと着けて香りを沸き立たせるという感じではない。
サーロインが実に美味しかった。熟成香もあるが、それより本来的に黒毛和牛がもっている脂と、特徴的な赤身の香りが引き出されている。そして脂はくどくない! 内モモ、ランプもほどよい水分と香り、うま味だ。豚肉はもう少し味わいがあった方がいいかとも思うけど、わるくない。
黒毛和牛をDABにすると、多くの人が「サシが入ってると美味しくないナー」と言うことが多い。それはホントにそうで、黒毛のA4以上を、ハードタイプの熟成にかけると、脂が酸化したり渋みを感じたり、挙げ句の果てにギンギンしたシツコサは消えず、あまりいいことがない。もちろん熟成業者さんによってはA5番でもおいしく熟成することができるのだろうけど、だいたいそういう業者さんは「ロースは無理に熟成にかけずに、ふつうに食べてもらうのが一番」という。
でもここの黒毛はほどよくて美味しい!と唸ってしまった。NYスタイルではない、店主の跡部さん独自の熟成技法がうまく廻っている。
と思ってたら、跡部さんと広報担当のA女史が「やまけんさん、どうですか~?」と! え?おれ、普通の人のフリしてたんだけど、と思ったら、すでに編集者が「やまけんさん連れてくから」と言っていたらしい。なーーーんだ!それなら最初からそのモードで行くべきだった(笑)
「やまけんさんってブログのイラストはなにかたくらんでるなぁって顔だけど、ご本人はニコニコ、ぜんぜん印象違いますね!」
といわれてしまった! えっ イラスト、たくらんでる顔してる?
おとなりにいた二名の方も業界人。吉祥寺界隈で肉レストランをやっている方々だ。跡部さんのところから肉を卸してもらっているのだそう。
最初にオリーブオイルをあたためたところにおろしニンニクをぶわっといれて造っているパスタもまた旨し!夜にこの香りはやばいっしょ。
いやそれにしても来られてよかった。
店先の熟成庫もみせてもらったが、ミートラッパーにくるまれたロースやモモに、風はそよそよかけるだけ。黒毛和牛のA4以上の肉は、やはりNYスタイルとは違う方法で熟成させるのが一つの回答なのかもしれないな、と思った。跡部流の熟成肉、美味しかったです。
また、カウンターに入れて下さいネ。ご馳走様でした!
このWebはいわゆるグルメではありません。味や価格だけではない「よい食事」とは何かを追求するためにひたすら食い倒れる記録です。私の嗜好に合う人しか楽しめないと思いますがあしからず。
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