「はじまりのはる」端野 洋子著 福島の農業高校生達が、震災後に直面する厳しい現実とどう対峙するか。監修というか考証のお手伝いをしたのだけど、予想以上に素晴らしい作品!

2013年7月29日 from 日常つれづれ,食べ物の本

はじまりのはる

講談社から「アフタヌーン」という雑誌が出ている。ちなみに僕はこんなに忙しいいそがしいと言っておきながら、ビッグコミックスピリッツ、オリジナル、スペリオール、モーニング、イブニング、アフタヌーンは毎号読んでいる(笑) 最初に務めたシンクタンクの東大出のキレ者上司がいつも、仕事を終えて電車に乗る前に週刊少年ジャンプを買っていた。

「頭を緩めないと帰ってもくつろげないんだよ~」

というのだが、その気持ちはすぐにぼくも共有することとなったのだ。

さて、アフタヌーンは分厚い月刊誌で、実験的な漫画やニッチな趣味の漫画、週刊の青年誌に載せるにはスケールがでかすぎるか、シリアスな話などが載っている雑誌だ。これが実に面白い。有名どころでは「おおきくふりかぶって」や「ヴィンランド・サガ」が載っていて、欠かさず読んでいる。話題作である「謎の彼女X」 や赤裸々な女子漫画「臨死!江古田ちゃん」も最高だ。

そのアフタヌーンの、レギュラー連載ではないのだけど、デビューしてまもない端野(はの) 洋子さんの作品を監修してくれという話をいただいた。編集者のKさんはこのブログをずいぶん昔から読んでくれ、「おおきくふりかぶって」を送ってきてくれる方だ。

「農業というか酪農がらみのシーンが出てきますので、何か変なところがないかどうかを見ていただきたいんです」

ということで、まだペン入れ前の段階のラフの状態で送ってきてもらい、一読した。ほんの数カ所、気になる描写があったので指摘したけど、そんなことより実にいい漫画だと思った。それがコミックスになった。

コミックスを読んで、僕が考証した回の前後の話を読んで、より深く納得した。女性にしか描けない、とても繊細な漫画だ。福島のこと、原発のこと、そして酪農をしている人達の苦悩が実によく伝わってくる。そして、未来へのメッセージもきちんと詰まっている。

実はいちばんびっくりしたのが、あの糸井重里さんが帯を書いているのだ。でも、糸井さんがこころを寄せたということも、なんとなくわかる。このシリーズはまだ続いている。まずはこの漫画を読んでみて、気になったらアフタヌーン本誌も読んでみるといいと思う。はまる人ははまりますよ。