2013年6月 3日 from トルコ Republic of Turkey
さあトルコから帰国しちゃったけど、とりあえずこのエントリは書いてしまわないとな。
さてメゼ(前菜)に舌鼓を打っているうちに、、、俺が日本で「くいてぇ〜!」と思っていたど真ん中の料理が出てきた!
これ、チーキョフテ(Çiğ köfte)といいます。どんなもんかというと、簡単に言っちゃえば牛の生肉に挽き割り小麦と各種スパイスを混ぜて、ひたすら手でこねる。長いときには2時間くらいこねるそうだ。
僕がこれを初めて食べたのは、阿佐ヶ谷イズミルの初代シェフが居た時で、店が休みの日に彼がまさにこれをうっすら汗をかきながら捏ねていた。時折ほんの少量の水をかけながら。挽き割り小麦が水を吸って、手で捏ねることで軟らかく食べられるようになるまで捏ねないといけないようなのだ。
「よーしこれで食べられるぞ」という段階になると、なぜか在日トルコ人仲間がわらわらとやってきた。そんでシェフが片手で赤いペースト状の生肉タルタルをキュッと握り、それをレタスとルッコラの上にのせ、レモンをキュッと搾ったのを渡してくれた。
「巻いて食べてごらん」
レタスでその赤い肉団子を巻いてかぶりついて、僕は衝撃を受けた!
な、な、なんじゃこりゃぁあああああああああああああああああああああ!
旨いやんけわれぇえええええええええええええええええええええええ!
激烈に旨い!
というかまず、辛い!レタスのパリパリみずみずしい食感の中からしっとりした肉団子が出てきて、舌に触った瞬間にすんげーバリッとくる辛さ!しかしその辛さの下から牛の赤身部分の生肉特有の旨みに、刺激的かつエキゾチックな香りが匂い立つ。レモンのクエン酸がその旨みを縦に引き締めるから、辛くて清涼で心地イイ!
うんまぁああああああああああああい!
間違いなくこれ、オール日本人が好きな食べ物だ!
しかし、ご存じの通り日本では生肉食べるのが困難になっているので、これを出す店は存在しないでしょう。ていうか、前から出す店ほとんど無かったと思う。リスク大きいしね。けど、トルコではこれは普通に出てくる料理。衛生面でもほぼ問題視されていない!だって俺はイズミールのカルシヤカ市でこれを屋台で食べたからね!
うちの嫁さんも、うちのおふくろも(今回、母も連れて行きました。たまにゃ親孝行しなきゃね)、「これ、辛いけど美味しいね」といって食べてたから、誰にでも食べられるでしょう。トルコに行ったら絶対に食べなきゃいけないものベスト3に入る、それがチーキョフテであります。
さーどんどん出てきます。お次は、、、やったー!ラフマージュンだ!
ラフマージュンはトルコのミートソースのせピッツァという感じの料理。だが、そもそもイタリア料理のピッツァのおおもとはトルコのピデらしいので、ラフマージュンを『トルコのピッツァ』と称するのはおかしいかもしれない。
まーしかしですな、こいつがもうすんごく旨いんですよ。
エリフの店、阿佐ヶ谷イズミルのスタイルでは、ラフマージュンをごく薄い生地で焼き、パリパリのうちにその上にトマトとルッコラをのせ、レモンを搾ってパリパリと巻いて食べる。ここでは前菜的に出てきたからか、単体だ。レモンだけ搾って食べてみて「!」となった。
ミートソースが羊肉である、、、それも、いい感じに匂う羊肉だ!
そもそも僕は羊肉はちょっとくらい匂いがしないとつまらないと思う人間だ。そういう人にとっては、ここのラフマージュンは最高である。
いやーそれにしてもこの店、料理のレベルが異様に高い! 先程来、地元民のお客さん達が「あんたらよくこの店を見つけたねぇ!」「何も知らないで来られたんなら奇跡だよ!」と言っていた理由がわかった!それはそうだよ、地元の宝なんだ。観光客相手の店が建ち並ぶイスタンブールのど真ん中だけど、それらの店を営む人たちが食べに行く店は、地元向けの味を出している。その中でも旨さに序列があるのが当たり前。ここ「エメッキ・サライ」はそんな地元民向けの最上級の美味しい店なのだろう。
さあそして、この店のとっておき料理、スペシャリテが出てきた!
こちらがパトルジャン(ナス)主体のもので、、、
こちらはドマテス(トマト)主体の鍋。
「な、なにこれ?」
「エメッキサライ・スペシャルって言ってるよ」
そう、実はこの店の得意技は、土鍋を使って煮込むこれらの料理らしい。どちらもぐつぐつと煮え立っている。
このメニューの一番上左側にあるEMEK SARAY SPECIALというのがそれだ。
この、上に青トウガラシが載っているやつ、真ん中のチーズの両脇には羊肉のミンチにしたのが乗っている。
これを食べるものなのかと思いきや、スプーンですくうと、下に焼きナスをムース状にしたものが詰まっているのだ!
トロトロの焼きナスとハフハフのチーズ、スパイスの効いた肉のミンチに青トウガラシを一緒に口に運ぶと、もうそれぞれの旨みが渾然一体、灼熱の香りの集合体がドゥアッと鼻に抜けてすさまじく旨いっ! 旨いゾっ!
うーんこいつぁホントにうまいや、と舌鼓を打つ料理写真の大御所、伊藤千晴師である。
こっちのトマト主体のほうはですね、キノコがたっぷり入ってる。一番質量がおおいのは通常のマッシュルームだ。なんか、ナス主体のほうの旨さがあまりにビビッドすぎて、こっちは逆に地味な印象と思ってしまった。
いやそれにしても初日からこんな旨い店にぶちあたるなぞ、なんと運の良いことか!これもエリフの友人であるシベールさんのおかげです。
彼女は夫が航空機関連のエンジニアで、各国に赴任していて、日本にも長いこと滞在していた。その時にエリフと姉妹のように仲良くなったそうだ。
「あのね、私にとって日本にいた時間が人生のなかで一番楽しい時間」
と言ってくれた。後日、仕事で走り回る僕を尻目に、僕の妻と母は彼女の家に招かれることになる。
店内の誰もが、地元チームが出ているプロサッカーリーグの試合に釘付けになっている(机をバンバン叩きながら応援)のを尻目に、僕は厨房へ。
前菜や煮込みは見えない奥のスペースで、そして手前には薪オーブンが。ここで焼き物や、さsきのエメッキサライスペシャルのような土鍋煮込みを加熱するんだろう。
みなさん、気持ちよくポーズをとってくれます。
デザートはスイカ。日本のスイカと遜色ない甘さ。もっとさっぱりしてますがネ。
最初は慣れない外国人に緊張気味だったボーイさんも、中盤からは打ち解けてくれて、換える頃にはなんでもOK状態。この店、マジでお薦めです。
最後に言っておくと、僕らはこの日、地元民価格で食べた。それはエリフとシベールさんが居たからだ。最初持ってきたのはユーロで価格が書かれたもの。それをみて血相換えた二人が「あたしたちはトルコ人よ!なにこれ!」と文句をつけたら、トルコリラのメニューが出てきた。
けどね、俺たち観光客だから、ユーロでもいいんだよ、、、彼らはそれが稼ぎになるんだし、と思ったんだけど、まあそうはなりませんでした。
だから、メニューブックに書かれている値段はアテにしないで下さい。おそらく外国人価格は1.2〜2倍くらいの価格になっていると思う。
けどね!そうだったとしても、ここは超お薦め。全行程クリアしたいま思い出しても、もう一度行きたいなぁ、と思ってしまうのだ。
このWebはいわゆるグルメではありません。味や価格だけではない「よい食事」とは何かを追求するためにひたすら食い倒れる記録です。私の嗜好に合う人しか楽しめないと思いますがあしからず。
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