2013年3月25日 from
ということで、前のエントリでは簡単な紹介しかしなかったが、サバの塩辛という強烈無比なインパクトを持った食品が、日本橋三越本店の地下一階フードコレクションにて販売されてます。
これも「料理通信」とのタッグイベント。三重県の旨いもの、識られてなかったり流通量が少なかったりで、あまりこれまで世に出てこなかった素晴らしいものを発掘する記事が、今月号の「料理通信」に掲載されているが、その商品を三越さんが販売してくれるという企画だ。
サバの塩辛はもともと、伊勢の安乗(あのり)漁港周辺に起居する、漁師さんが家でつくる伝統食だ。基本的にはサバを写真のようにぶつ切りにして塩をして、重しをして保存するというシンプルなものだ。内臓はとってしまい使わないのが安乗流。実はこの安乗の塩辛に出会った直後、島根県出雲地方でもサバの塩辛に出会うのだが、こっちは内臓あり。それで全く味が変わる。
安乗近辺での製造工程も数件みせてもらったが、作り方が人(家庭)によって異なる。それが伝統食のおもしろいところだ。たとえば塩をしたら浸透圧でサバの内部の水がわいてくるが、それをいったん捨てる人もいる。捨てない人もいる。話を聞いてると、「稲わらを樽の中に入れて、浮いてきた水を吸わせるとよい」という人もいる。その場合、稲わらについてる菌類がまた発酵に関与することだろう。
また、「サバの頭は捨てるんだけど、エラの部分だけは風味がよくなるから一緒に漬け込む」なんて話もあった。マジ?
安乗の丸勢水産は、そうした家庭料理としてのサバの塩辛を製品化してくれた。これがなかったら僕もこのビビッドな食べ物に出会ってはいなかっただろう。
丸勢水産の樽は、温度管理された室内で熟成を続けていた。特別にその中身を見せてもらうと、、、
これもこのあたりの伝統的な方法で、石を重しにして漬け込みをしている。ご覧のようにつけ汁はピンク色の液体になるのが面白いところ。おそらく肉が亜硝酸と結びついて発色するメカニズムに近いのだろうと思う。
丸勢水産の社長さんによれば、「おふくろのつけ方そのものです。わいてきた水は半分捨ててます。」とのこと。いろいろ食べたが、丸勢水産の製品が一番食べやすいかな、と思う。
さてこの塩辛、ご覧のとおりサバをぶつ切りにしているので食べにくい。ご飯の上にドカンと載せて食う、というのは最高なんだけども、骨もヒレもなにもかもついてるので、上品に食べるってのは難しい相談だ。
しかし! たとえば三枚におろして骨や皮なしで漬け込んでしまうと、味が出ないというのだ。第一、身のたんぱく質が完全に溶けてしまって液体になっちゃうのだという。やっぱりそれくらいのことはもう試されていた!
しかし丸勢水産さんはその食べにくさを克服した。三越でも販売している商品のメインはぶつ切り状態の塩辛なのだが、それ以外に意欲的な製品を出しているのだ。それが、、、
サバチョビと名づけられた瓶詰。オリーブオイルにほぐしたサバの塩辛をつけてある。これは食べやすいし、このままクラッカーに乗せてもよし(クリームチーズが塗ってあるとなおよし!)。
それにもう一つ、塩辛をクリームチーズに混ぜ込んだサバチョビチーズがまた絶品なのだ!
これ、小憎らしいほどちょっとしか入ってない(50gだ)のに481円もするんだけど、めっぽう美味しい! うちに持って帰って開けたら、いつのまにか嫁がほとんど食べちゃってたほどだ。
これ、東京で買おうと思ってもなかなか売っているところがない。ので、発酵熟成商品が好きな人は騙されたと思って、まずは三越にGO!です。僕がうっかりしてて遅れちゃったので、チャンスは今日と明日だけだ!ごめん!
あのり さば塩辛 180g 801円
さば塩辛骨なし 50g 801円
サバチョビ 50g 851円
サバチョビチーズ 50g 481円
おすすめは、骨なしではないさば塩辛を2瓶買い、サバチョビチーズを2~3個買うことだな。まあ騙されたと思って食べてみてほしい。アンチョビの代わりにサバの塩辛を使ってみて御覧。ちょっと驚く風味になる。
今晩、丸の内ムスムスのイベントに参加する人は味わうことができる!ということで、よろしく!
このWebはいわゆるグルメではありません。味や価格だけではない「よい食事」とは何かを追求するためにひたすら食い倒れる記録です。私の嗜好に合う人しか楽しめないと思いますがあしからず。
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