2012年11月12日 from トルコ Republic of Turkey
いやもう結論からいえばトルコ最高!なんでこんなに歓待されるんだ!しかも待ち構えてくれた人では無く、街場で初めて出会う人がなんでこんなに楽しく親切に迎えてくれるのだろう。そしてトルコ料理、、、きらめく色彩の塊が僕を突き抜けていく。美味しい、という凡庸な言葉で表せない、ヴィビッドな体験をしている。
イズミルでの宿泊はオテル・エーゲパレス。外を歩くとすぐに港だ!朝から散歩しているひと多数。ここちよい海風に渡り鳥たちが舞う。
なにはともあれ、まずは朝食からだ。
われわれの泊まるホテル・エーゲパレスから車で移動すること15分ほどか。
同行のカメラマン・青木君の装備はなんとOLYMPUSのOM-DとPEN E-PL5だ。これにズームと単焦点を山のように持ってきているが、軽そう!しかも相手に威圧感を与えない小ささで、青木君が「プリーズ!」とカメラを向けると、みなニコニコしながら撮影を承諾してくれるのだ。
今回青木君には、僕が料理撮影に集中している時に手薄になる、建物の内外と立ち働く人たちの撮影などに廻ってくれる。とっても豪勢なキャスティングなのだ。
さてまずイズミルで最初の食事、ホテルでの朝食をとらずにKARASYAKA(カルシヤカ)という、イズミル州を代表する都市へ来た。カルシヤカ市観光局のみなさんが「いつも私たちが食べているものを一緒に食べて欲しいから」とのこと、僕の望むのはそこですソコ!理解してくれてありがとう!
観光局のトップである、うー、ごめん、名刺入れを紛失してしまって名前が正式に出てこない、この方が出迎えてくれた。
■Tuzu Biberi
地域に数店舗出店している人気レストランだそうだ。店内も外も、朝食をとる人がひっきりなしに訪れてくる。朝食のど真ん中の時間帯では無い(9時くらい)のだけれども、さすがに人気店だ。
彼女とネリヒさん、ムラッツ君の三人とは、たったの二日間で家族のような共感を持つようになってしまった!偉い部局の人たちなのに、偉ぶらない。僕なんぞをフルタイムサポートでアテンドしてくれたこと、ここに感謝である。
さあ、いよいよトルコのエーゲ海を望む地域の料理を食べる時が来た!
まず最初にテーブルに運ばれるのは、トルコを代表するゴマつきパンで、地中海地方ではこれをゲブレックと言う。カットしていない、フルサイズのものがこれ。
イスタンブールでは同じものをスミッツと呼ぶそうだ。これを売る屋台がそこかしこに出ていて、みな朝ご飯にこれを食べるという。国民的なパンなんだろう。
ゲブレックにかじり付くと、発酵した小麦の香りがプウンと香り、ゴマの香ばしさが合わさって、素朴ながらリッチに美味しい。ドイツのプレッツェルとは違って、塩味は強くないので、どんどん食べ進んでしまう。という間にどんどんドン!とお皿が並んでいく!
これがトルコの朝ご飯光景。パン類を中心に、そのパンにつけて食べるジャムやペースト類、サラダにオリーブ、そしてチーズがならぶ。
「ビジネスマンなどは朝をこうした店で過ごすことが多いですし、週末には家族で店に来て、みんなで食卓を囲むということもあります。おうちでもこんなに種類は無くても、同じように食べていますよ。」
同じ観光局のネリヒさん(上の写真の左側の男性)がニヤリとしながら言う。
「私は料理が大好きで、自分で毎日朝食をつくっています。愛する妻のために私がつくるんですよ。」
おおおっと華やぐ食卓。実は、トルコで男性が料理するというのは、今の日本よりも珍しいようだ。(まあ最近の日本では女性も男性も共に料理をしなくなってきているのだが...)
これね、もうパン好きにはたまらない食卓だと思うよ!日本では食べたことの無い、素晴らしき幸福をもたらすようなパンに合う副菜ばっかりなのだから!
中でも一番僕らが気に入ったのがこれ!トマトのペーストとクルミ、香辛料にオリーブオイルを合わせたもので、日本で言えば金山寺味噌みたいな感じか。
トマトの味が本当に味噌みたいに濃厚にコンデンスされている。クルミの油分がそれをまろやかにしていて、オレガノをはじめとする地中海スパイス類が、独特の香気をもたらしている。これが一皿あれば、酒をずっと呑めるな、という感じだ。
これはトマトのジャムだという。食べて見るとホントにトマト!
砂糖で煮ているけれども、甘さと酸っぱさと、そして豊かなアミノ酸を感じる。イタリアのモスタルダを感じさせるが、またちょっと違う。エリフが非常にこれを気に入って「うちの店でも出したい」と感動しながら食べていた。
そしてですね、こいつはなんで日本にないの!?と驚愕するほどに美味しくて卒倒しそうになったのが、カイマックというクリームチーズのようで、発酵はしていない感じの、牛乳から造ったという滑らかにクリーミーな物体。クロテッドクリームのようなものらしいが、味わいや質感はまったく違う。こちらのほうがはるかにトロントロンで、悦楽的である!
上の写真の中段、右から先述したトマトペースト、真ん中にドライトマトの皿があって、その左にある、豆腐に茶色いあんをかけたような一皿。この白い物体がカイマックだ!茶色い餡は蜂蜜なのだが、この蜂蜜も含水量が日本のものより高いのか、あまりネチネチしていない。
これをパンにつけて食べるのだが、、、
ああもう、脳天から快楽物質がブワッと溢れそうな美味しさなのだ。華やかな蜂蜜の甘さと、とことん滑らかなカイマックが舌に絡みつき、甘さでボウッとなったところに程よい油分がさらに追い打ちをかけてくる。
カイマック万歳!
手前のぼわんぼわんした感じのパンがボヨーズスというもの(だったと思う)。
みっしりしたパンではなく、パイ生地のふわんふわんしたようなパンだ。これにはゆで卵を合わせて食べるのが吉とのこと。
塩とこしょうをかけていただきます、と指導していただく。うーむ、美味しい。これに限らず、トルコの料理はすべて塩分が控えめで出てきて、食卓で好みで塩を補うようになっているらしい。みな、好きなように塩をかけています。
この後いったどの店でも、朝ご飯はかならずキュウリ&トマト&青唐辛子のサラダを出していた。これがド定番のようである。それともちろん、チーズ!
今回、一番驚いたのはこれかもしれない、、、トルコのチーズは実に美味しい!みためからしてソフトでマイルドな、アメリカのモントレージャックチーズみたいな、当たり障り無い味かとおもって口にした。とたんにバーンッと衝撃。強い芳香である。きけば、羊と山羊の乳をブレンドしたチーズが好まれているとのこと。なるほどね、それであの香りか!
この、ドライトマトの下に敷いてあるのも、味のないカッテージチーズみたいなもんだろ、と思ってたら全然違って臭くて旨い。いや、見た目でわからんな、トルコのチーズ、、、
そしてもちろん、オリーブとオイルである。
特にトルコのオリーブオイルは生産量も多く有名だが、日本では決して評価が高いわけではない。これはハイエンドの製品が入ってこないことも理由としてあるだろう。けど、いい店で出てくる料理に使われているオリーブオイルは、酸化度も低く、上質のように感じる。
ここまで食べてきて、やっぱり旨くてもう一皿!と追加してしまったのが、このトマトのペーストだ。
べらぼうに、旨い!
エリフもたいそうこれが気に入って、「レシピを教えてほしい」とサービスのおっちゃんに頼む。
この人がまた、雰囲気アリなんだよね、、、実はウェイターではなくてシェフらしい。ただし残念ながらレシピ教えて、にはにやりとして静かにお断りされる。ま、そりゃそうだ!
食後のチャイを注文する段で、なんとこのTuzu Biberiの社長さんがご来社!
このお店の料理は、彼の出身である黒海地方のカラーも非常に強いのだという。
「私の生まれた地域では断食もやったりしますね。終わった後はみなご飯を食べます。そのときの内容をこの店でも再現しているつもりです。けれども、普通のトルコの朝ご飯はパンとチーズと野菜、たまに魚というかんじですね。」
そして、今まで僕らが食べ散らかした皿を観て、「あれっ●●●●●は食べてないの?」と確認して出してくれたのがこれ。
なんかすべての乳製品を溶かして焼き目をつけたという感じのグツグツと煮立った一皿。これをパンに絡めて食べる。
ああ、これはいうなればチーズフォンデュ?とっても濃厚!
油がしたたるような濃さで、これ一杯食べたら朝食のカロリーじゃ無いなというかんじだが、とにかく人気の一皿らしい。
ちなみにこの間、青木君は「すごいな、美味しいな、これは日本人が大好きな味ですよ!」とうなりながら食べ続けているのでありました(笑)
そうなんだよ!阿佐ヶ谷イズミルと関わりを持ってからというもの、僕は本当に惜しいと思う。日本人はトルコ料理が大好きなはずなのだ。それなのに日本では撮ること言えばドネルケバブの屋台しか識らないことが多い。そのドネル屋台の内容は...後半戦でその問題についても言及しよう。
さて食後はトルココーヒー。ごく細かく挽いたコーヒーを、専用の加熱機に水と入れて煮出すスタイルだ。エスプレッソとはまったく違う味と香り。皿の下に置いてあるのは砂糖ではなくて、これもコーヒーに付きもののようなお菓子。日本の求肥とかグミのような食感で、様々なフレーバーがあるらしい。
「おや、朝食が終わって、ランチタイム向けの料理が並び出しましたよ」
と、店内奥のショーケース内に続々と旨そうな皿が並んだ!
うぎゃああああああああああああああああああああああああ
旨そう!!!!!!!!
これが、実に一般的なトルコの食堂のスタイルなんだそうだ。そして驚くのは、野菜の前菜(メゼ)の圧倒的に多いこと。トルコ人はドネルケバブやシシケバブなどの肉ばかり食べているんだろうと思う人が多いが、実情は大違いで、肉の倍量くらいの野菜料理を楽しんでいる。この一皿一皿がまったく違う味の料理群なのだ!
中でも驚いたのは、下の写真の一皿。
これ、海藻である。欧米人はシーウィードを嫌うというけれどもトルコではみんな大好きな一品らしい。
この平打ちパスタのようなものはズッキーニをピーラーで薄く剥いたものだ。これも旨そう。
この青菜はラディカと言うらしい。ラディッキオの親戚、というよりそのままアブラナ科の野菜ってことだろう。そういえば地中海はアブラナ科の野菜の原産地である。キャベツや大根の葉茎部のような野菜が実に多く観られる。
これら色とりどりの野菜の隣には、煮込み料理が!
もうね、卒倒しそう。食べたばかりなのにもう食いたい、、、(笑)
社長さんと並んでいるのはビジネスパートナーの女性だ。(夫婦かと思った...)
実質上、トルコでの最初の食事となったTuzu Biberi、実に美味しかった!これだけ食べても全然胃にもたれない。素晴らしきパン類の楽しみ方を味わうことができた。でもまだまだ朝だ。これからが本番なのです。続く。
このWebはいわゆるグルメではありません。味や価格だけではない「よい食事」とは何かを追求するためにひたすら食い倒れる記録です。私の嗜好に合う人しか楽しめないと思いますがあしからず。
本サイトの著作権はやまけんが保持します。出版物・放送等に掲載される場合はご連絡を下さい。トラックバックはご自由に。