2012年11月27日 from 日本の畜産を考える
ありがとうございました、お肉の注文を〆切とさせていただきます。
現在、ランプやイチボ、内モモは人気集中しており、新規申し込みには対応できない状況です。まだ空いているのはカタバラ、ウデ3.5k、カタスネ、シキンボ、トモズネ、ナカニク、ハバキです。
えー 柿木君の短角牛一頭丸買いセットが無事に販売完了、先週末に届いて美味しく食べていただけたかと思います。で、、、実は、わたしの草太郎の肉がこの間、ドライエージング庫でゆっくり熟成されていました。
本当はもっと早く出すべきだったのですが、人様の応援をしている関係上、そっちを押しのけて自分の牛を売るのもはばかられたので、遅くなりました。
草太郎君の肉です。半年間を岩手県二戸市浄法寺の稲庭牧野で育ち、お母さん牛の乳と牧草を食べました。その後、岩泉町の畠山利勝さんの牛舎で、自家製のデントコーンサイレージと小麦フスマ、稲わらのみを食べて育ちました。ですからほぼグラスフェッドといってよい内容です。
先般、京都の焼肉「南山」で開催された「草太郎を食べる会」では、ロース肉一本をまるごと、近江牛のサカエヤさんにドライエージングにしていただきました。一方、もう片方のロースは、これも10月1日に開催した赤肉サミットに、短角和牛のグラスフェッドとして出品するために、静岡県のさの萬さんにドライエージングにしていただいたわけです。
さて、のこった半丸(牛を半分に割ったもの)のうち、ロースをとったそれ以外の部位をどうしよう!?昨年までは全部位を真空パックにかけたウェットエージングで熟成し、飲食店さんや、焼肉セットにして読者の皆さんに販売しました。
今年は色々考えたのですが、ドライエージングをかけて販売しようということになりました。その熟成を誰に頼むか。おそらくこれまで表に名前が出てくることはあまりなかったでしょう、千葉県は浦安市で主に高級黒毛和牛を商っているマルヨシ商事さんにお願いしました。
そう、2年前のNYドライエージングビーフ視察ツアーで一緒に行った平井君です。
マルヨシ商事は、誰もがしている有名な牛肉専門店や大ホテルなどに納品をしている、非常に有力な精肉卸です。平井君は現在専務ですが、数年前から、とある有名な牛肉料理店さんからの依頼で、ドライエージングに取り組んできました。
私が観た狭い範囲でいうのもなんですが、日本でドライエージングの熟成をきちんとかけられる業者さんは非常にすくない。大手さんが専用工場を建てても、うまくいかないケースがあるくらいです。しかし、マルヨシさんは極めて良好な熟成環境を構築しました。
NYのブライアント&クーパーの熟成庫に入った時、彼が僕に向かってつぶやいたことが忘れられません。
「やまけんさん、うちの冷蔵庫と同じ香り、同じカビです!」
実際、帰国してからいろいろと食べさせてもらい、平井君の熟成技術はNYのそれと比肩しうるものだと確証を得ています。面白いことに、日本のドライエージングのパイオニアであるさの萬さんのエージングとも風味が違います。チーズと同じように、造り手によって味が変わるのです。
さて、草太郎の肉は7 月25 日にと畜され、数日後にマルヨシ商事へ送られました。実はこのとき、できれば真空パックをかけないようにお願いしたのですが、と畜場の作業システムの関係上、それは無理ということで、部分肉にわけて真空パックをかけて納品ということになりました。
なぜ真空をかけない方がいいか。それは、牛の体内には自己消化酵素があり、この酵素が働くことで、筋繊維を構成するタンパク質が分解し、旨みのもととなるアミノ酸に変容していくのです。真空パックをかけると、その酵素が外側に引っ張られてしまい、ドリップとして染み出てしまう。だから、NYのDABナンバーワンのプロバイダであるマスター・パーベイヤーでは、真空パックした肉は使いません。
ただしこれは、アメリカでも業者によって考え方が違うようです。その後いろいろ回った中で、「真空パックしたものでもDABにすることは可能だよ。」という人もいたし、実際にそうしているお店もありました。そこで僕は、いちど真空をかけた草太郎の肉を、マルヨシ商事の熟成庫内に入れてもらうことにしたのです。
さて、8月から11月後半ですから、3ヶ月半経っているということになります。相当に熟成が進んでいます。オーストラリアから帰国し、トルコへ行く直前に、どんなふうに熟成されているのかを観てきました。マルヨシ商事の熟成庫がこうやって公になるのは、これが初めてかもしれません。本人からの許諾を得て公開します。
熟成庫は大型冷蔵施設の一室を使っています。金属ラックが立ち並ぶ中、場所によって風の強さなどをコントロールして、肉をこまめに移動させながら熟成をかけているのがわかります。
「これ、黒毛のサーロインです。」
中央の下側をごらんいただくと、うっすらと白カビに覆われていることがわかると思います。これはブライアント&クーパーでも同じような感じになっていましたね↓
ほら、じつによく似ているでしょう!違うのは、マルヨシの肉のほうは黒毛和牛でマーブリングが強いと言うこと。
さてここで熟成されている草太郎の肉と対面!
3ヶ月以上も熟成させると、水分が完全に飛んじゃうんじゃないかと思う人も多いでしょうが、マルヨシ商事の熟成ではそれほどガビガビになりません。
1cm程度削ぐと、このように弾力に富む赤い肉が出てきます。不思議なことですな。
試食用に内モモ、スネ、肩などを少し切り取ってもらいました。
これはすね肉。
「すね肉は硬い硬いっていうでしょ?違うんですよ、スネには硬い筋が入ってるからみなそう言うんですけど、うまく筋を外して食べれば硬くないし、味がして美味しいんです。しかもDABにすれば、筋も柔らかくなりますし」
そう、実はDABで美味しくなるのは筋だったりするのだ、、、
さてこれらを携えて向かうのは、平井君の弟さんが営む店、「肉料理 まこと家」。
この店、東京メトロ東西線の浦安駅からすぐ近くにある超穴場店である。なんていったって、マルヨシ商事直送の和牛肉が、ものすんごいリーズナブルな価格で食べられるのだから!
とくに、ここのモツ煮は絶品!
肉屋の仕入れ力は一般の飲食店とは全く違うと言うことを見せつけられてしまうのだ。
ステーキもほれこのとおり。
特製おろしダレをかけて、、、
ちなみにこんな価格体系です。
ステーキハウスに行ったら一枚8000円にはなる肉ですからね、マジで。ちなみにここのハンバーグはお得でムチャクチャ旨いです。
さてここで平井君みずから焼いてくれる!
うーん、見た目上、ガビガビ感は全くありません。実はDABにすると、外側は当然水分が抜けますが、内部にはしっかり細胞と結着した結合水が残るため、それほど硬くなったりしないのです。もちろん、ちょっと細い部位とかはバサバサになりますが、、、
さて草太郎の肉、大変に美味しいです。かなり硬いはずの外ももの部位やすね肉も、しっかりした歯ごたえですが、容易にかみ切れます。そしてDAB特有の香りがきっちりついています。美味しい、、、
ただし、ネイティブに真空パックなしに入庫したものと比べると少し差を感じます。ですから、これは「半ドライエージング」というのが適切だと判断しました。
さて読者の皆さんや飲食店の皆さんに、この草太郎の肉を販売します。
外側のガビガビは剥いていますので、表に書いてあるキロ数は、そのままカットして調理できる荷姿です。
ブロック単位ですが、例えば肩ロースのザブトンが5キロ近くなどあったりして、個人消費には難しいと思います。ですので、2kgを最低単位としてカットも受けます。ただし、複数の注文をいただいた場合、キロ数の多いものを優先させてください。
※単価はキロ単価です!念のため!
※この価格に消費税と送料がかかります。
お申し込みは下記フォームから。
■草太郎の半ドライエージング肉の販売フォーム
http://my.formman.com/form/pc/0uxkBfXn6ZADZlNU/
申込みを整理して、こちらから返信します。
荷姿はこんな感じです。
分割対応の場合、一度にやってしまわないといけないので、配送日はご希望に添えない可能性があります。基本、今週末か来週中盤にかけての発送とお考え下さい。来週以降まで持たせたい場合は、冷凍にかけて送ります。冷凍を解凍しても、あまり品質的にかわらないとのことです。byマルヨシ商事
たくさんのご応募お待ちしてます。どうぞ草太郎を食べてやってください!
■草太郎の半ドライエージング肉の販売フォーム
http://my.formman.com/form/pc/0uxkBfXn6ZADZlNU/
このWebはいわゆるグルメではありません。味や価格だけではない「よい食事」とは何かを追求するためにひたすら食い倒れる記録です。私の嗜好に合う人しか楽しめないと思いますがあしからず。
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