2012年9月14日 from ドライエージングビーフ,出張,日本の畜産を考える
いやもう感動してしまいました。草太郎君、君は本当に美味しかったよ、、、
僕が所有する短角和牛ひつじぐもの第三子、草太郎が肉になりました。
■草太郎のデータ
個体識別番号:0843455944
二戸市浄法寺で生まれ、岩泉町で育つ。生産者は畠山利勝さん。餌に食べたのはデントコーンサイレージとふすま、稲わらのみ!生育期間は約27ヶ月。通常、去勢牛は25ヶ月程度で仕上がるのですが、育ちが少し遅かったので2ヶ月余分に飼育しました。
個体識別情報はこんな感じ↓です。
この草太郎の半丸(半身分の肉)を買って下さったのが、京都は北山にある焼肉「南山」。楠本さんが盛大な「食べる会」を開催してくれたのであります。
朝5時半に家を出て、午前中~午後は大阪で二件商談。そこから京都に移動して北山駅から歩く。なんか、大阪も京都もやっぱりすげー暑くて汗かきすぎて死にそう。集まってくれた人達も大変だったろうなぁ。
楠本社長(左)とご長女の春菜ちゃん。実はこの春菜ちゃん、南山の短角牛を供給している岩手県岩泉町の隣町、田野畑村に嫁ぐことになった! それも岩泉つながりで、山地酪農を行っている牧場の息子さんとそういうことになったのである。なんとまあめでたい!これからは田野畑山地酪農牛乳を応援しないとね!
厨房では、草津でイタリアン「サルティンボッカ」を営む木村シェフが仕込み中。
草太郎のドライエージングビーフが、周りのガビガビ部分のままオリーブオイルでコンフィされている。やんわり熱を入れて、最後に焼き目をつけるのだろう。楽しみだ、、、
このときシェフに熟成度合いをうかがったのだが、「うーん、ちょっと優しいというか、若いかな。熟成期間が30数日だったらしいんですよ。ほんとうはもっと置いたほうが、、、」というのでエエエっとびびる。マジですか足りないですか!
気を取り直して講演の準備。この日は僕の短角牛に関する講演付きなのです。
蓋を開けてみると、関西からだけではなく、全国から人が来てくれた!一番遠い人はなんとフランスから(!)。その他、北海道、東京、宮崎などからいっぱい。ありがとうございました!クックアンドダインの山口さんもご来場。「講演よかったよぉ!」と喜んでもらえたようだ。よかった。
さあて、メインイベント始まりである。
まずは前菜、岩手産野菜のマリネと海の幸のカルパッチョ。
塩ヨーグルトでマリネしたタラのカネロニ・田野畑や町酪農牛乳の自家製リコッタチーズを巻いて
このカネロニがじつに味わい深い!タラといえばボソボソの状態のを食べることも多いが、やわやわと火を入れると、こんなにも美味しい魚なんだな!と再発見できる。滑らかな食感のカネロニ、リコッタチーズとの相性も抜群だ。
そして、さっそく出て参りました草太郎の熟成肉ステーキ。左がオーブンで火入れをしたもので、右側がオイルコンフィだ。
香りがまだあまり着いていないということだったので、おそるおそるナイフを入れる。さすがに50人分を一緒に出すので、熱々の状態ではないが、、、
!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!
来たっ!
確かにぶっちぎりパワフルではないけれども、ナッツのような熟成香がプワンと立ち上る!
そして、そして、、、この肉は美味しい! デントコーンサイレージと小麦ふすま、稲わらだけしか食べていないほぼグラスフェッドなのに、この豊かな味わいはなんなんだ!
いやぁ、、、感動してしまった。草太郎の肉、とてもおいしいのである。成長が遅かったこともあって、実を言うと肉の味もそれほど期待できないだろう、と勝手に思っていた。けれどもこの肉、味わいが最高なのだ。
さらにこれを部位ごとに味わい分けられるように焼肉を。熟成ロース、モモ、ヒウチ、バラそして対照用に黒毛和牛の経産牛である「近江長寿牛」の熟成肉も。
これらを、タレも出たけれども塩でいただいていくと、、、
「おおおっヤマケン、これがドライエージングの香りかぁっ!わかる、わかるよ!なんて旨いんだっ!」とクック&ダインの山口さんが吠える!いやぁ、すんげえ嬉しいぜ!
実際、胸を張ってドライエージングビーフだといえる熟成度合いになっているし、そしてベースの肉のポテンシャルが異様に高いと感じられる。各テーブルを廻ったが、みな草太郎の美味しさをほめてくれた(いや、もちろんお世辞もあったろうけれども)。
生産者の畠山さんも岩泉から駆けつけてくれたのだが、眼を細めながらこう言ってくれた。
「やまけんさん、、、草太郎の味は、いままで私が育ててきた牛たちと違う味がします。美味しいですよ、、、」
本当ですか?マジ?なんか、涙が出てきちゃいそうでした。畠山さんにはイレギュラーな育て方をしてもらったので、相当に苦労をかけてきた。心の底から感謝です。
さて〆は、草太郎の牛すじのリゾットだ。お米は岩手県産の五穀米。岩手県北は雑穀のナンバーワン産地だからね。
これがまた旨いっ! プリンプリンとろんとろんの牛すじ肉に、特製のタレを溶かし込んだスープ。五穀米のしっかりした食感にそれらが溶け込んで、おかわり三杯してしまいました。ああ、いまもくいたい。
デザートは田野畑や町酪農牛乳のプリン、岩泉町で栽培された西洋ほおずきを添えて。
この西洋ほおずきは、以前過去ログにも書いたとおり、僕の大学の後輩である小笠原君(婿入りして早野となった)が地域で取り組んでいる作物だ。このイベントのために岩泉から来てくれた早野君、ちゃっかりみんなに注文票を配って説明していた(笑)
大盛況の会、〆は生産者の畠山さんだ。
今回、この人の笑顔を観ることができたことが一番嬉しかった。
草太郎、おれたちお前を美味しく食べたよぉ。ありがとう、お前は本当に美味しかった。ぜんぶ余すことなくいただくから、成仏してください。
南山の楠本社長にみなさま、サルティンボッカの木村シェフとスタッフのみなさま、ドライエージングを担当してくれた近江牛サカエヤの新保社長、そしてこの会においでいただいた皆様に感謝いたします。本当にありがとうございました!草太郎の味をぜひ、永く覚えていて下さい。
このWebはいわゆるグルメではありません。味や価格だけではない「よい食事」とは何かを追求するためにひたすら食い倒れる記録です。私の嗜好に合う人しか楽しめないと思いますがあしからず。
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