2012年6月20日 from 出張
鹿児島で農協関連の仕事をすると、夜にお誘いを受けるのは「華蓮(かれん)」という店であることが多い。鹿児島の経済連、を短縮して「かれん」なんだろうな、ここへは数年前にも連れて行ってもらったな、と思っていたら、立地が違う。きけば7年前に移転したとのこと!マジ?まえに来たのってもう7年前なのか!と月日の経つスピードに改めて驚いてしまった。
鹿児島はなんといっても畜産県で、稲作への依存度が非常に低い特殊な県だ。ということもあって、この店ではさつま黒牛、さつま黒豚、そしてさつま黒鶏という「黒い三連戦」とも言うべきシリーズが売りとなっている。けれども、この店の前菜で定番なのがこの太いゴボウ揚げ。
少し炊いてあるゴボウをぶっとく割り、衣で揚げているのだろうか。衣はサクリ、身肉はフカリと柔らかくて美味しい。しばし夢中になって食べ進む。
酒はもちろん芋焼酎。部長さんに選んでもらったのがこの「ろくすい」だ。ほどよく芋が薫り、飲み応えもバシッとくる。いいですね。
ここ華蓮の名物料理が、牛・豚・鶏と野菜のせいろ蒸し。
ほどよく脂が抜けるので、黒毛のどぎつい脂がどうもという人でも大丈夫。
じつはこの出張の数日後である22日(明後日ですな)に、同じかごしまで養豚農家さんの集まりがあって、そこでも講演をして欲しいと頼まれていたのだけれども、残念なことに22日から僕はニューヨークへドライエージングビーフの視察に行ってしまう。ということで、この夜に黒豚を食べることができて佳かった。
ちなみに黒豚と名付けられているバークシャーの肉は他県にもいくつかあって、それぞれに味わいが違う。埼玉だと川越に彩の国黒豚(だったっけ)があって非常によい肉質だし、仙台黒豚の会という生産者団体の豚肉も、東北らしい引き締まった味わいで好ましい。鹿児島の黒豚はやはり暖かい環境で育った豚特有の開放感のある豊かな旨味、豚らしい風味があるということだと思う。「端麗辛口」とは正反対の「芳醇旨口」系な肉質だ。
ということで、せっかくだからトンカツも追加していただく。
ところで、鹿児島は鶏肉の全国供給基地であり、地鶏品種や銘柄鳥品種も多い。新しく世に出た品種が黒さつま鶏という品種だそうだ。掛け合わせは詳しく訊かなかったが、JAS規格における地鶏で、100日以上の飼養期間をとるそうだ。それはさぞかし美味しいでしょうとつぶやいたら、電光石火で注文していただいた(笑)
もも肉を鉄板でカリッと焼いたのを頬張ると、飼養期間の長い鶏に特有のネッチリした食感。これはいける!巷で出回っている、最低限の要件を揃えた、名前だけの地鶏商品をはるかに凌駕する旨い鶏じゃないか~と思ってしまった。
最低限の要件とは、在来種の血が50%以上入っていること、80日以上の飼養期間、1平米あたり10羽以下の密度で飼うこと。それぞれの要件に意味があって、美味しさに直結する。
ただし、なかなかに単純にはいかなくて、例えば在来種の血が50%という部分で言うと、在来種とは明治までに成立した鶏品種を指すのだけれども、それは「在来していた」ということが重要なのであって、それが極めて美味しい鶏であるということと必ずしもイコールではない。在来種ではない肉専用種の血を混ぜて、地鶏の血液百分率50%以下になっているものもあるが、味はそっちのほうが良いと言うこともある。まあそれは仕方がないことだ。
黒さつま鶏は、Webをのぞいてみたら薩摩鶏と横斑プリマスロックの掛け合わせ。この二種はどちらも在来種なので、血液百分率でいうと100%地鶏である。そして、養鶏農家には嬉しいことに、どちらもある程度大きくなってくれる品種である。高知県の土佐ジローは肉にしても旨いが、あまりに小さく、肉にして1キロ未満のものがザラだ。つまりグラム単価が高くなってしまう。だから大きいということは農家にとってはよいこと。そして図体だけではなく、どちらの品種も味がいい。
80日以上の飼育は味に直結していて、鶏の肉に旨味が生ずるには80日以上はかかるのである。47日で育てるブロイラーを塩だけで焼いて食べると物足りないのはそういうことだ。ただ、地鶏と名乗るものの中には、要件を満たす80日きっかりで肉にするものもある。畜産の最大のコスト要因はえさ代だから、できればすぐに肉にした方がいいわけだ。しかし、在来種の血が半分以上入っていると、あまり大きくは成らないのが普通だ。だから、80日きっかりだと身体が小さくて肉も少なくなる。そういうことから、多くの地鶏品種は100~120日程度まで育てられている。
このさつま黒鶏はそういう意味では、血統と肥育期間のバランスがとてもいいと思う。
「ほんとはさっと炙ったタタキや、刺身で食べていただきたいんですけどねぇ」
ホントだよ、、、僕は鶏の生食は大好きで、宮崎県の鹿児島よりの都城で目覚めて以来、かなりの頻度で食べてきた。無謀にもタタキ&鶏刺しを空輸してもらい、むちゃくちゃな腹痛を引き起こしたこともある。おそらくカンピロバクターであろう。それでもめげずに食ってきた。
だから今回の生肉規制については、ふざけんなよ、である。「私は危険を承知で、自己責任で食べます」という念書にその場でサインすれば、万が一体調不良を起こしたときにも店の責任を問わないという運用をして欲しいものだ。
さてそれはともかく、鹿児島経済連は美人度が高い。企画開発部の階に降りたって、部長さんの机に至るまでに「おっと美人県だここは」と思ってしまった。そしてその企画開発部に抜擢された女性エースがこの方。
うーん腕が無くてゴメン、写真より実物の方が美人です。
農業団体で女性総合職が辣腕をふるうところは、成功に近いと思う。それほどまでに、封建的な県では女性職員が少ない。やはり鹿児島はビジネスセンスがあると思ってしまった。
肉ばかりではつまらないので、薩摩揚げ。二種類あって、手前の淡い色が白身魚ベース、奥のが「ほねごと」という、ジャコをすりつぶしたもの。
どちらも旨いが、個人的にはやはりほねごとのほうが好ましい。
そして〆の蕎麦は、これは完全に鹿児島の味!
さば節(だっけ?)ベースの透明な出汁に、太めの蕎麦をやわらかく。江戸前の剛健な蕎麦じゃなく、実に南国的やさしさにみちた、〆にちょうどいい味だった。
一次会でお別れして、ホテルで一仕事。原稿を書き終えてラーメンを食べに天文館公園の裏手へ。
いつも鹿児島の〆はラーメン小金太。
このブログでめったにでてこないラーメン。東京ではあまり食べません。地方でそれなりの年数を経た老舗店のラーメンが好きです。
豚骨の煮込みがのったラーメン。白湯スープだけど意外にあっさりしていて、揚げネギなどの風味がスープに埋もれず、楽しい薫りと旨さのラーメンです。
豚骨のボリュームすごし。白飯食えそう。軟骨がゴリゴリするのが最高です。
こうして鹿児島の夜は更けていったのです。
このWebはいわゆるグルメではありません。味や価格だけではない「よい食事」とは何かを追求するためにひたすら食い倒れる記録です。私の嗜好に合う人しか楽しめないと思いますがあしからず。
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