2012年6月29日 from 出張
さて、ごちゃごちゃしたイータリー周辺とはうって変わって、青山・表参道といった趣のある高級住宅街の通り沿いに、老舗精肉店であるLOBELSがある。
ご覧の通りザガットサーベイでも高得点マークしている。
店舗はかなり小さめで、お客さんが入るスペースより作業スペースの方がでかく、なぜか10人近くのスタッフ(ブッチャー)が働いている。なんで?と思うが、実はこの店は店舗売りよりも業務用の卸や、注文販売(配達)のほうがメインであるらしい。だからこの店は本当に「看板」として機能しているようだ。
もちろん、肉の熟成ケースも、ガラス越しに外から見ることができる。
ケースが二重ガラスになっているようで、下半分は見えなくてゴメンナサイ。右側の棚に肉が置いてある。ただし、ここの肉はすでに熟成済みのものをディスプレイしているだけのようだ。どうやらロングアイランドあたりに倉庫があり、そこで熟成をしているそうである。
さあ、店内に入ろう。
ショーケースの上にはなぜかミートパイの列。
ショーケース内には肉が並ぶが、すべてDABである。そして全てのカットがでかい!今回の視察店のなかでも最も立派で厚みのあるなカッティングをしているのがここである。
この写真では見えにくいが、ケース一番左端には真空パックにしたポーターハウス(Tボーン)がある。
この人がパパ・ローブルズ。いま跡取り息子が前面に出ているところなんだけど、それをサポートしている”顔”である。ローブルズは本を一杯出しているんだけど、真ん中の本の4人の一番右側に居るのが彼だろうか。
肉の熟成に関してはいろんなことを話してくれたのだが、基本的な温度・湿度・そして風を回すことは通常のドライエージング技法と同じ。
それよりも彼は、「とにかく肉質なんだよね」ということで、いい肉を仕入れることを至上命題としているようだった。
「うちはあまり香りがぷんぷんする熟成肉は好きじゃないんだ。初日に一緒に食べたウルフガングステーキハウスの肉は、悪くはないけど熟成香が強すぎると思うんだよね。」
実はこの翌日、同行していた千葉ちゃんと延与君が買い求めてくれたLOBELSのステーキを、鉄板で焼いたのをみんなで試食したのだが、たしかにこの店の熟成肉は、ナッツ香というか熟成香が控えめだ。その代わり、ものすごく肉の食感が良い!アメリカの牛肉にありがちな繊維感の荒さがみじんも感じられない。
僕らはどうしてもDAB特有のナッツ香を指標としてしまうところがあるのだけれども、彼らにとっては熟成香はあくまで一つの特性であって、熟成による美味しさは味わい(Flavor)と軟らかさ(Tenderness)が主であるということなのだろう。おもしろい!
正直言うと、日本の牛肉はテンダネスに関してはUSビーフより勝っている。日本人はやわらか好みな民族だからね。だから人工的に熟成で柔らかくする必要があまりないと思うのだけれども、アメリカでの熟成の重要ポイントは軟らかさなのだな。たしかに等級の低いUSビーフはゴムみたいだからな、、、
パパ・ローブルズへの質疑応答は人数を入れ替えて2クール行った。その間もエスタブリッシュなお客さん達が入れ替わり立ち替わりやってきて肉を買っていく。東洋系の女性が「ポーターハウス3枚」とかズドンと買っていくのだから凄い。
「いつかローブルズパパを日本に呼んで、日本のDABを食べてもらいたいね!」
とみんなで言い合いながら、店をあとにしたのであった。
このWebはいわゆるグルメではありません。味や価格だけではない「よい食事」とは何かを追求するためにひたすら食い倒れる記録です。私の嗜好に合う人しか楽しめないと思いますがあしからず。
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