2012年4月17日 from 出張
これ、何の光景かわかりますか?
辺り一面に、実に複雑でかぐわしい香りが立ち上る。これは、醤油を搾っているところ。島根県は雲南市の醤油メーカー、「紅梅しょうゆ」さんの蔵の中で運良く出会えた光景だ。
舐めてみますか?と社長の松尾さん。
軽くすすってみてビックリ! 塩辛くない、、、素晴らしく上品な香気、ほどよい塩度、そして複雑玄妙な味わいなのに、スッキリとした後味だ。思わず、二口・三口とすすり混んでしまった。
「これ、再仕込み醤油なんですよ。しかもまだ火入れしていないですから、」
あ、再仕込みなんだ! 再仕込みとは、簡単に言えば「醤油で醤油を仕込んだ醤油」。通常、醤油は大豆と小麦と塩水で仕込むが、塩水の代わりにその年出来上がったばかりの醤油で仕込む。だから二段仕込みとか呼ばれるけれども、これによって旨味は倍増、香りもものすごいものになる。
でも、通常出回っているのは生ではなく、火入れをした醤油だから、これは貴重だ!ああ、ミニペットボトルでも持ち歩いておくんだった、と後悔してる。それほど美味しい醤油だった。昨日巡った奥出雲の仁多米を炊いた白いご飯に、この再仕込みの生醤油をかけて食べたい!
搾り全景。日本酒だと、もろみを搾るための蛇腹になった「ヤブタ」というのがあるけど、その醤油版。けれども醤油の場合は、大豆から油がでてきて、布をそのままにしておくと目詰まりしてしまうので、違う方式が採られている。
これがもろみの入った桶。このもろみを搾って液体にしたのがしょうゆということだ。
濾布(ろふ)を拡げたところにもろみをのせ、風呂敷のように包んで積み上げていく。これに上から圧力をかけて醤油を搾っていく。圧力を一気に強くかけると油が染み出てきてしまうそうで、この辺がかんどころ。
紅梅しょうゆは、実にアイデア豊かなしょうゆメーカーさんだ。社長室に入ると、もうとにかく色んな商品があるので連続的に「おーっ」という声を上げてしまった。
この「ご縁醤」というのが再仕込み醤油の商品だ。これは火入れしていると思うけど、お勧めできます。その横の「食べる醤油」は、もろみ加工品ですな。我が家ではおにぎりに混ぜていただいています。もちろん旨し。
その他のラインナップがまたいろいろあるんだ~!
紅梅しょうゆという社名らしく、梅しょうゆがあったり、流行のたまごかけ専用醤油もあります。
でも、「これ食べてみます?」と出てきたのが、、、
どかーん!とした唐辛子。
「これは雲南市でいま取り組んでいる「オロチの爪」という唐辛子なんですよ!」
オロチの爪!いいネーミングだ、、、これをお酢や醤油に漬けていろいろ商品化しようとしているそうだ。
この唐辛子、完熟させたものはそう辛くない(とはいってもほどほど辛いけどね)ので、好きな人なら液体だけじゃなく、唐辛子本体を食べてもいいと思う。
このオロチの爪と梅を合わせたサルサソースなんかも◎。
なんか、梅ってかんじがしない、不思議な風味。いけますね。
島根には、僕が日本三大醤油蔵と考える井上醤油店があるので、どうもそれ以外に目が行ってなかったけど、美味しい醤油はまだまだあるんだな。もちろん、ここの松尾社長も言っておられたが、
「それでもこの辺じゃやっぱり砂糖を入れて甘くした醤油が圧倒的に人気なんです。商売のためにはそれを造らないといけない。けど、それだけじゃダメですからね、、、」
そう、ぜひこちらのラインナップも頑張ってください。ちゃんとしっかり美味しいから、、、
美味しい風景をいただきました。ごちそうさまでした!
■紅梅しょうゆ
http://kobai-shoyu.co.jp
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