2012年3月16日 from 出張
何度も、声を大にして言うけれども、宮崎県で最もおいしいカレーは「ガンジスカレー」だと思う。ねっとりまとわりつくルー、まろやかでマイルドな風味、味わいは実に宮崎らしい甘辛感。具材には包丁でミンチに刻まれた肉、粗みじんのタマネギ、そしてマッシュルーム。なんともいえぬコクがあり、もう宮崎に行ったらなによりもこれが食いたい!と思ってしまうのだ。
宮崎市内にガンジスカレーを出す店は、宮交シティというバスターミナルのビル2Fにあるお店と、宮崎空港ビルディング内のレストラン、喫茶店、そして出発ロビー内の売店だ。そして面白いことに多くの宮崎人が、ガンジスカレーの存在を識りつつも、その本店所在地を識らない。
「え?ガンジスって、、、宮交シティのあそこでしょ?」
というのだ。 しかし、、、事実は小説より奇なり(笑)
このガンジスカレー、宮崎空港ビルディングという施設管理会社が商標を持つ本家本元なのである! 空港ビル内のレストラン事業部の厨房内で作られ、各所に配送されているのである。ガンジスカレーのみならず、宮崎空港内の飲食店は非常に充実しているという話を過去に書いたが、それを読んでくれた空港ビルディング関係者さんたちのご厚意で、何回か取材をさせていただくことになった。そして決定版的に、このたびガンジスカレーの製造現場を見せていただくことができたのだ! もー 幸せ!!
宮崎空港に限らず、空港の施設は民間の管理会社が請け負っていることが多い。宮崎空港ビルディングもそういう会社なのだが、社長さんが美食家で、とにかく飲食はきっちりやろうという方なので、どの店に入っても満足できるレベルなのだ。
その中でも旗艦店といえるのが、ビル3Fにあるレストラン「コスモス」。
その厨房に入れてもらったのである~!
「やぁ~ようこそおいでくださいました~」
この方が宮崎空港の飲食を統括する重永料理長だ! 実はこの空港のレストランの料理人さんは、社長自らスカウトしたり、きちんとしたホテル出身の方だったりする、実力派連中なのだ!
「今日はですね、仕込みのキモとなる部分をお見せします。」
と傍らをみると、もうすでにさまざまな食材が並んでいる!
粗くひかれた肉を炒めたもの。
存在感のある大きさで炒められたタマネギ。
マッシュルーム。そしてカレー粉!
カレー粉は、ド定番であるS&BとC&Bに加え、MMMのインディアンカレーパウダーもブレンドしているという。
このカレー粉と小麦粉を炒めたルーが決め手!
油脂で軽く炒めた小麦粉とカレー粉をオーブンで時間をかけて焼いたものだ。このルーだけちょっとつまんで味見させてもらったが、十分美味しい。この段階だと、意外なことに辛みがビシッときいている。完成形のガンジスカレーはマイルドで辛みはほとんど感じないと思っていたが、それはマスキングされているだけだったらしい。
さて、ここまで揃ったら、まずはルーをブイヨンに溶いてカレーソースを作る段階に入る。
町場のカレー屋さんになかなかできないのが、この良質なブイヨンを作るところだろう。一杯1500円とるならまだしも、1000円以下のカレー屋さんで丁寧なスープをとっていくのは本当に大変なことなのだ。ここはホテルだから、数百円のカレーにこんな良質なブイヨンを使うことができる。総合力だな。
さてこのブイヨンに香ばしく炒められたルーを投入!
もちろん、かき混ぜただけで溶けてくれるようなヤワなルーではない。なので、ここからなんと「手で漉す」という工程が待っている!
このようにつぶつぶの状態になっているルーの塊を、、、
料理用手袋をつけた手で漉す!
これを何度も繰り返し、滑らかなカレーソースができあがるのだ。ひえ~!
そしてカレーソースができあがったら、具材をいれて煮込むわけだが、隠し味が存在した!それは、、、
この缶詰、エバミルクだ。コンデンスミルクの甘くないヤツ。そしてもう一つ重要なアイテムが、、、
ピーナツバター! スヌーピー印だぜ、、、(笑)
そうか、あのまろやかさは、このエバミルク&ピーナツバターが隠し味だったのか!たしかに、最近はやりのインドカレーのバターチキンなどにはカシューナッツのペーストが使われていたりする。ナッツはカレーにとってまろやかさを出す素材なのだ。ピーナツの相性もいいに決まってる。
でもねシェフ、こんな秘密おしえてもらっていいんですか???
「大丈夫です、実はほかに言えない秘密がありますから(笑)」
そうか、まだこのほかにも奥義があるのか! じゃあ安心だ(笑)
「まあやまけんさん、製造工程だけじゃなんですから、食べてってくださいね!」
と重永さんに促され、レストランのテーブルへ。いやー 料理長みずからの給仕でいただけるとは、恐れ入ってしまう!
これこれ、これだよ、、、このテリテリ輝く、一目で濃度が高いとわかるルー。キーマカレーか?と思うくらいに粒の立った具材。これが正調ガンジスカレーだ。
ちなみに、実はこの3Fレストラン「コスモス」のメニューには「ガンジスカレー」はない。あるのはビーフカレーと、カツカレーだ。ビーフカレーはルーがちょっと違う。カツカレーは、カツのせの上にこのガンジスルーがかかっている。
でも、俺はガンジスカレーを食いたいんだ!という場合はどうすればいいか?
「あ、どうぞ『ガンジスカレーを食べたい』とご注文ください。お客様がご要望されるなら、喜んでお出ししますので!」
とのことだ!
年の半分程度を出張している関係で、全国の空港を使っているが、宮崎空港以上に食の面白い空港はない。その宮崎空港を代表する料理が、ガンジスカレーだと思う。空港内でレトルトも売っているけれども、まずはこのレストランコスモスか、2Fの喫茶コーナー「カンナ」にて、ガンジスカレーを食べていただきたい。きっと、僕が言っていることが分かるはずだ!
重永料理長、宮崎空港ビルディングの皆様、ありがとうございました!
このWebはいわゆるグルメではありません。味や価格だけではない「よい食事」とは何かを追求するためにひたすら食い倒れる記録です。私の嗜好に合う人しか楽しめないと思いますがあしからず。
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