「強力」のお肉は、実に素直で筋繊維が揃った、実にリーンなお味だったのです。カルネヤに引き続き、神楽坂しゅうごでも味わえます。強力の内蔵のアンデュイエットのパスタも絶品!

2012年2月19日 from

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いま出ている「男子食堂」(KKベストセラーズ)は豚肉特集。巻頭ページは岩手県のプラチナポーク、白金豚の取材ページで(俺が書きたかった!)、そのあとの豚肉の知識編を僕が監修させてもらっている。その編集部とライターさんとの打ち上げをどこかでしようということに。

「実は、ライターさんとカメラマンさんへの指示と編集作業ばっかりで、豚肉料理はほとんど食べてないんですよぉ~」という美女編集者Aさんのために、とびきりの豚肉を食べようと考える。そうなると、海外のブランド豚を食べるよりも、北海道は十勝にて、畑の跡地に電柵をたてた中に豚を放し飼いにし、LWD豚を300日以上飼って育てている「蝦夷豚(えぞぶた)」がいいだろう。帯広のエレゾ・マルシェ・ジャポンの佐々木君が取引しているアレだ。

蝦夷豚を食べるなら、いろいろチョイスはあるけれど、総合力で神楽坂しゅうごかなと思い連絡をしたら、なんと嬉しいことに「強力」の肉も置いてくれているというではないか!ありがたや~

ということでダブルで楽しみに伺ったのだ。

 

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神楽坂しゅうごの広瀬しゅうごシェフの火入れ技術には全幅の信頼を寄せているので、今回は久しぶりにフルコースでお任せするからと言っておいた。まずは26kgものクエのタルタル。もちろん部分買いだそうだけど、20万以上するだろうな。身は叩き、皮は鱗付きでバリッと焼き上げ、そしてソテーされた肝もついてきた。

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フォークで潰した肝、皮、身を三位一体に混ぜ、ショウガの千切りのようにみえるだろうけどこれはリンゴ、と一緒に口一杯に頬張る。うーーーーーーーーーーーーーーーーーん、美味しい。旨味たっぷりのクエの身肉のすばらしさに、なんつっても上品に濃ゆい肝の油分が絡んで、最高だ。

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お次はスープ。なんとキジのコンソメだ。もちろん足肉入り。上に載ってるのはもしかしたらそのキジの肝の裏ごしかな?野性味よりも上品さがきわだつコンソメ。アタリが柔らかく、純然たるイノシン酸を感じる。これを呑むと、鰹だしがいかにクセのあるスープかということがわかる。付け合わせの紫にんじんの甘さものっている。

さあそして、いきなり肉だ!

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手前は蝦夷シカ、そして奥にあるのが強力の外もも! うわー 外ももか!なかなか大変な部位を出してきてくれたな!というのは、外ももは以外に堅さもあって、ストイックな味わいなのだ。さていったいどんなもんだろう。まだ書いてないけど、高知と大阪でサーロインを食べてから、他部位を食べるのは初めてだ!

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やっぱり、筋肉質!とにかく歯でかみ切るまでのストロークが長く感じられるし、その筋繊維の並び方が非常に規則正しいように感じる。それに染み出てくる肉汁の綺麗なこと!つまり健全に育てられたということがよくわかる肉になっている!

ただし、この肉を「物足りない」と思う人も多くいるだろう。多少のサシがはいると、脳にとって快楽物質として働く脂の旨さが加わるが、強力は純粋な赤身肉だ。赤身部分に含まれる旨味成分のみの勝負になる。リーンで綺麗な味なのだ。一般的には、この肉はウェットの状態でも40日以上は寝かせた方が美味しくなる可能性が高い。でもしゅうごちゃん、冒険して使ってくれてありがとうね。おれ、嬉しいよ。

まだ強力の肉はあるので、神楽坂しゅうごに行ける方はぜひ予約時に「強力」と言ってみてくださいネ。

さて、そして本日のメイン(強力はメインではないのです(笑))、蝦夷豚とメスのイノシシのローストだ。

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左が蝦夷豚、右がイノシシ。野生のイノシシの芳醇な風味に、蝦夷豚も負けてないんだよ、ということを示すためにこの二つの盛り合わせを頼んだのだが、なんと蝦夷豚の方が圧倒的な風味だった!

これまで食べた蝦夷豚は、牛か?と思うほど強くワイルドな風味だったが、冬まっただなかにおとしたからだろうか、身質がキュッと締まって実に上品で、しかし細胞に含まれる旨味と薫りの濃度が一段高まっているかのようだ。噛めばブワンと強い、風が吹く。そんな感じの豚だった。

「これが今日の肉なんですよ。サシが入ってるんで驚きました」

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うお、確かに蝦夷豚っぽくない!カロリー控えめで長く飼うというのがコンセプトにしては霜降りだ。やはり冬を乗り切るために身体が脂肪をため込むのだろう!

さあそしてパスタだ!すみませんちゃんとしたイタリアンとは逆の順番ですが、、、今しか食べられないスペシャルがあるのだ!それは、、、

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これ観ただけじゃわからないでしょう。実は、、、

「強力の内臓肉のアンデュイエットとほうれん草のパスタ」

なのだ!

アンデュイエットは、豚肉の内臓を豚の腸に詰め、そしてちょっと発酵させたりしたのを焼いて食べるという、モツモツモツ~!な伝統料理。まあ、正直言って内臓嫌いな人には絶対に勧められません。

そのアンデュイエットの「中身」を強力の内臓で造り、それを包丁で丁寧に細かく刻んでラグー状にしたものとほうれん草刻みをソースにしたパスタだ。

俺はつねづね、広瀬しゅうごシェフを天才だと思うんだけど、ホントそう思い直した。

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昨年のベストパスタは同じく彼の「羊のパンツェッタのアマトリチャーナ」だったけど、今年前半のベストはこれだ。まったく内臓の臭み無し、内臓を食べているという感じが全くしない!ほうれん草の舌触りもなめらか、清らかで豊かな風味のパスタなのだ。

「強力の内臓はすごいっすよ!脂がきれいで、臭みもないんです。こんなに綺麗な脂の美味しさは、内臓肉では初めてですね!」

実は強力の内臓はだれよりも早く彼が独り占めにしちゃったんだけど、こんな料理になるなら強力も本望だろう。マスト・イートです。

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〆はその昨年度ベスト。ラムとマトンの中間のホゲット肉をパンチェッタにしたもので、アマトリチャーナを作る。タマネギのしゃっくり感が残っているのは、同じ鍋にいれず別にローストしたタマネギを後で加えるから。実に旨い。

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「男子食堂」のAさん(右)と、ライターのFさん。Aさんはなんと大学で日本文学を修めた才媛。「彼はものを投げた」と「彼がものを投げた」では、一体何の意味合いが違うのか?ということを教えていただいた(笑)言葉に携わる人間としては重要ですな。

お二人に大感激してもらって、店を選んだ甲斐がありました。この日はごちそうさまです!

ということで、強力の肉も内臓も、蝦夷豚もまだあるようなので、神楽坂へGo!です。