2012年1月10日 from
宮崎県の北部は、本当に山里の恵みで一杯だ。ただし、日本全国どこへいっても、山の幸というくくりにすると、ある程度品目が限られる。原木椎茸や山菜、そして野生のイノシシやシカ。だいたいどこでもそうした品目になってくる。だから、どうも特色がないようにも見えてしまうのだが、、、
本当は、そんなことはない。というのは、同じような品目であっても、味が変わる大きな要因があるからだ。農産物も水産物も、育つものそれ自体の品種などによって味や成長度合いが大きく変わる。これは先天的な要因だといっていい。しかしそれだけでは味は決まらない。より重要なのは後天的な要素、つまり育つ環境や餌だ。全国どこでもイノシシがいる、といっても味は一様ではない。イノシシが住む山の土質や気候が違えば、植生が変わる。植生が変われば、その地域に生きる微生物から小動物の生態も変わる。そしてイノシシが食べる餌も変わってくるわけだ。
だから、「山里にいくと、出てくるものが変わりばえしないなぁ」と思う人が居るかもしれないが、本当は「違う」ものなのだと考えた方がいい。たしかに、山菜だって新潟で食べるのと、岩手で食べるものは違う気がする。気がするだけじゃなくて、土質が違うところに生えてくるのだから当然、違う味なのだ。
で、何が言いたいのかというと、この諸塚村の宝は「森と川」。とくに森については、一定の基準で管理された森林であるかを認証するFSCを取得している。この諸塚の特産物はすべてこの「森林の味」と言えるのである。だから、「ありふれたもの」などではない、ということを感じたのだ。
宮崎が誇る食品スーパー「フーデリー」の宮田理恵ちゃんと、農サポ藤嶋ちゃんに連れられ向かった先は、この諸塚村の産直市場であるもろっこはうす。
森林が生み出す産物である干し椎茸はいろんな生産者のもの、いろんな規格のものがずらりと並ぶ。
そして、売れ筋のゆずごしょう。それと、この辺でとれる激辛の黄色いトウガラシを使った、黄色ゆずごしょう。あとで舐めさせてもらったが、拷問に近い辛さであった!
そして、やっぱりありました、味噌もの。
味噌漬けは長期保存も可能になるので、椎茸に限らず山の幸を練り込んだ味噌製品を作りやすい。
この辺をひやかしていたら、「まずは裏手へ、、、」と案内される。
もろっこはうすの裏手すぐに川が流れていて、そこにかかる吊り橋がある。これが絶景!
しかも、上からみてもヤマメや鮎などの魚影が濃い!思わず降りて川に入りそうになってしまった。
魚が、たーくさんいますがな!
いや、素晴らしいなぁ、、、ここに二時間くらいぼーっとしていたい。川の流れの音が、清浄なサウンドスケープ。
「じゃあ、ご飯食べましょう~」とお声がかかり、食べに上がることに。
腕を振るってくれたのは、もろっこはうすの運営をしている黒木雄介さんだ。
「シカとイノシシと、うちの村の生産者さんが造ったブルーベリーとかで料理してみました!」
なぬ?素晴らしいローストじゃないか!
いい火入れ技術!これに、ブルーベリーを軽く煮込んだソースをかけて、、、
見事に旨い!ブルーベリーとシカ、合いますな、、、
お次は見事なイノシシ肉。
もちろん椎茸もね!
よく、イノシシ肉が臭くて嫌だという人が居るが、不幸なことだ。ファーストコンタクトがよくない個体だったのだろう。または、血抜きがヘタな猟師さんがとったものか、、、ほどよい月齢で、上手い人が血抜きをしたイノシシ肉は本当に美味しい。
この日の個体は、ちょっと年がいきすぎてるのか、すこし堅かったけど、味わい深い風味でした。それになにより、この後に出てきた黒木さんのスペシャル料理が行けたのだ!
「えーとですね、イノシシの骨からスープをとって、皮付きのままでやわらかく煮込んだしし肉と椎茸をご飯に載せて、スープを注ぎます。
ええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええ
なにこの美しきお椀!
これが、実に素晴らしい料理だったのだ!じゃっかんイノシン酸過多な風味だけども(もっとスープに野菜を足したらいいですね)、意外にあっさりしたスープを白飯が吸い、ほどよい塩加減に。皮付きのしし肉はプルンプルンとゼラチン質が美味しい!やわらかにほぐれていく肉の美味しさ。そしてシイタケのぶるんとした食感。いやいやこれはすばらしい、、、
これが、スープの残骸。やっぱり骨がいい味出してるんだね!
役場の人たちともいっしょに食べました。宮田リエちゃんはこの諸塚の商品を、フーデリー店頭に並べている。バイヤー視点から、ここはもっとこうして欲しいという希望を伝えている。諸塚村の皆さん、こんなふうに接してくれるスーパーってなかなか無いんですよ。頑張って商品開発してくださいネ。
ということで、実に意欲的なイノシシ料理をいただきました。諸塚村、立ち寄る価値ありですゾ。もちろん、これが通常メニューになっているとは限りませんが、、、
このWebはいわゆるグルメではありません。味や価格だけではない「よい食事」とは何かを追求するためにひたすら食い倒れる記録です。私の嗜好に合う人しか楽しめないと思いますがあしからず。
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